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中央都市編
16(ウィルソン視点)
しおりを挟む「マジかよ、南の聖域がやられてたからまさかと思ったが…‥ビンゴか……!」
そう言うなり、サラに斬りかかった。
サラも体勢を整えて迎撃態勢を取る。
青筋の立った筋肉から引き絞られた攻撃が容赦なくサラを襲う。
バートルから切り上げられる剣と、袈裟懸けに振り下ろされるサラの剣が交わった直後。
空気が爆裂した。
熱を帯びた風が吹き抜け、ミシミシ、と建物を揺らす。
木型のスカルがサラの助っ人をしようとバートルへ枝を伸ばした。
手首を枝に掴まれたバートルが、今木型スカルの存在に気が付いて、口をへの字に曲げた。
「ここにはスカルが何体いんだよ! 邪魔くせえ!」
バートルが枝を掴み返す。
「炭になれよ? 灼熱地獄!!」
ゴウ、と導火線に火がついたかのように枝から本体へ向かって火が走る。
逃げ惑っても意味はない。
あっという間に本体へ業火が移ったかと思えば、ドン、と爆発した。
「どわっ」
飛び散った炎が広範囲で辺りを燃やす。
火の海とはまさにこのこと。
ウィルソンが咄嗟に水でバリアを張らなければ、自分も巻き添えを食らっていただろう。
ウィルソンがサラは火の餌食になっていないだろうかと視線を向けたが、サラはどこ吹く風で立っている。
火の影響は全くないようだ。
スカルが燃えても興味なさげ。
スカルにされてもサラはどこまでもサラのようだ。
サラはバートルに向かって駆けだした。
バートルは炭になった枝を振り払って迎え撃つ。
バートルの胴へ吸い込まれるようにサラから剣尖が放たれるも、バートルは弾き返して容赦なく切り伏せようと剣を振り抜く。
「中央長! そのスカルはサラちゃんです!」
「は!? サラって……!?……って、うお!」
ウィルソンのせいで気が逸れたバートルは剣をいなされて、腕を掻っ切られた。
「てえ……! 急に話しかけんなよ!」
「あ、すいません……」
サラから距離を取り、体勢を整える。
「てかそれ、マジか? 通りでなーんか見た事あるなあ、と思ってたんだよ。あのサラが今、どうなってんの? 見た目はスカルっぽいけど……」
「スカルにされているんだと思います……」
「は? マジで言ってんのか?」
「マジです……」
おいおいマジかよ、とバートルが眉間に皴を刻んだ。
「わけわかんねえけど、俺はこいつをとにかく倒す! てめえは負傷してんだろ。ここから避難しろ。俺は誰かを庇いながら戦うってことができねえ! 巻き添え食らいたくなかったらさっさと行け! 後で俺の到着する前までの状況をみっちり聞くからな!」
「……でも」
ウィルソンはバートルの指示に納得がいかなかった。
ここで避難すれば、確実にサラはバートルに殺される。
いや、避難しなくてもどのみちサラはバートルに殺される。
ウィルソンが出来る事など何もない。
でも……。
彼女は、もしかしたら完全にスカルにはなっていないのかもしれない。
先ほどの違和感。
説明しようにも、ウィルソンはどう説明すればいいのか口を閉じる。
動こうとしないウィルソンにサラの矛先が向く。
突如肉薄してきたサラの剣がウィルソンを狙った。
「あ……」
ウィルソンが防ぐよりも前に、バートルが盾となりサラを食い止める。
「何やってんだ! 早くしろ!」
鍔迫り合いになったところをバートルが押し返し、一閃、二閃と急所を狙って攻撃を打ち込む。
けれどサラはその攻撃をものともせずに叩き落してゆく。
両者攻めては防ぎ、攻めては防ぎの繰り返し。
バートルは舌打ちをした。
「もう、巻き添え食らっても知らねえからな!!」
大きく踏み込んだバートルが剣を閃かせた。
「灼熱地獄!!」
バートルの体から猛火が吹き荒れ、サラはその炎に呑み込まれた。
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