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中央都市編
4(バートル視点あり)
しおりを挟む中央都市部、都市長室にて。
「お前ら――バーバラ、メイ、ステラ、リリナには騎士養成学校の警備を頼んだぞ。そんなにも難しくない任務だから……まあ、大丈夫だろ」
「はい!」と四人が敬礼した直後、ぐらぐら、と建物が揺れた。
「何だ?」
頑丈な中央都市部が揺れるなんざ、相当な地震だな。
とバートルは思ったが、遠くの方で爆発音が聞こえてきた。
地震じゃねえ……?
バートルが訝し気に首を捻っていれば。
『中央長! 大通りに鎧を纏った巨人型スカルが大暴れしています! 現在一つの隊で対処しておりますが、人々の避難誘導で手一杯のため、手に負える状況ではありません! 人数の増員をよろしくお願いします!』
無線がかかってきた。
「わかった。応援を向かわせる」
『お願いします!』
ブツ、と慌ただしく切られた。
無線の向こう側の状況が今ので大体想像がついた。
「巨大なスカルが大暴れしてんのか……」
バートルは小さくため息をつき、目の前にいる騎士を見つめた。
「騎士養成学校の警備は他の騎士で対応する。お前らは大至急大通りへ向かえ」
「でもねえ……」と口ごたえしようとするバーバラに、バートルは鋭い視線を向けて黙らせた。
「それなりに力量のある奴じゃねえとだめだろ。お前らなら心配いらねえ。だろ?」
重たい沈黙が降りるが、それを了承と捉えたバートルは「そっちへ人員を移動させたら俺も行く。わかったらさっさと行け!」とげきを飛ばす。
「……わかりました。では直ちに向かいます」
何かを言いたげなバーバラは、三人を連れて大通りへ向かった。
急に静かになった執務室で、バートルは新人騎士の入団情報が記載された用紙へ視線を落とした。
「はあ……」
リリナ、なあ……。
成績優秀で卒業したのに、あんなことがあっちゃなあ……。
まあ他の騎士が付いてりゃ何の問題もないだろ。
それに、教育のために強烈なバーバラを西からわざわざ呼んだんだ。
きっと壁を越えられるはずだろ。
いや、正確にいえばトラウマと言った方がいいか――。
バートルは深くため息をついた。
✯✯✯
轟音で空気を震わせながら、容赦なく建物を殴り倒すスカル。
街は地面がひび割れ、崩れた建物の瓦礫が山を作っていた。
サラは図書館から飛び降りて地面に降り立ち、足を斬りおとすべく駆けた。
「アル、行くぞ」
光を纏った剣を握り、太く頑丈な足を狙う。
勢いよく切り上げるが、ガン、と虚しく音が響くだけ。
さすがに鎧は硬かった。
この鎧をどうにかしないと、どうにもならないか……。
サラはきつく眉根を寄せた。
するとサラに気が付いたスカルはゆっくりと方向転換し、棍棒を振りかざす。サラはアクロバティックに棍棒を避け距離を取った。
風を纏いながら叩きつけられた棍棒で地面は爆裂。
サラは飛び散ってくる瓦礫の破片を避けつつ、スカルの全身を観察する。
スカルは鎧を全身に纏っているため、鎧の部位に攻撃をしてもおそらく意味がない。
鎧の中がどうなっているのか全くわからないが、中へ攻撃しなければこのスカルを倒すことは出来ないだろう。
そもそもあの鎧を纏っているだけなのか、それとも中身と一体化してるのか。
後者だとしたら、鎧をはがすことはできないし、中身が鎧と同じく硬かったらダメージを与えることが難しい。
まあ、どちらかはわからないが、狙い目は……関節のつなぎ目か。
動きに合わせて関節部分に若干隙間ができるため、タイミングを合わせてそこを狙えばダメージを与えられるかもしれない。
うまくいけば足や腕を斬り落とすことができるかもしれない。
動きを止められれば後は何とかなるだろう。
サラが考えている間にもスカルは棍棒を容赦なく叩き下ろす。その衝撃で生み出された爆風で、近くに山を作っていた瓦礫が吹っ飛ぶ。破壊されていない建物の窓ガラスがその爆風と瓦礫によって粉砕されてゆく。
さすがにこの巨大なスカルを放置しておくわけにはいかないな。一人じゃ太刀打ちできないけど、一回関節狙ってみるか……!
サラは振り下ろされた棍棒の上を疾駆、まずは肩関節を狙った。
「はあっ!」
隙間に剣をねじ込めば、確かに手ごたえがあった。
……ということは鎧を纏っているだけということか。
けれど刺しても反応しないということは、これぐらいの攻撃程度ではダメージは与えられないということか?
「おりゃああああああああ!!」
「ん?」
変な掛け声が聞こえて来たので、そちらへ顔を向ければ。
高い建物から思いっきり跳躍してきたウィルソンが、頭上から大剣を叩きつけるように振り下ろしてきた。
しかも鎧で守られた頭を狙って。
………………それは意味ないだろ。
サラの考え通りにウィルソンは、ガン、と猛スピードで衝突するだけだった。
スカルは何がぶつかってきたんだ、というように、ウィルソンをひょいっとつまみ上げると、ブン、と放り投げてしまった。
「うわあああああああ!」
「……………………」
すると今更、サラの存在に気が付いたかのように振り落とそうと暴れ出す。
けれどその行動を注視していれば、上から下へただ単純に腕を振り回しているだけ。
こいつ……。
ただ図体がデカくてかたいだけで、もしかして知能はそんなにも高くないのか?
弾き飛ばされたサラは体勢を整えながら考える。
とん、と舞い降りたサラに、飛ばされたウィルソンが横にやってきた。膝に手を当てて息を整えていた。
「ぜー、はー……めっちゃ飛ばされた……。というか、ねえ、サラちゃん! 大きすぎてびくともしないよ!」
「知ってる……。あの鎧が邪魔だな……。関節を狙って、そこから切り落として動きを封じていくしか、今のところ方法が思いつかない。鎧を剥がせばなんとかなるかもしれないが、剥がすのは……まあ無理だろうな」
「そ、そうだね……というか、ザグさんは?」
「まだ到着していないみたいだが……何をしているんだ?」
「さあ……? まあ、とりあえず二人でなんとかしよう! じゃあ、俺が敵を引き付けるから、サラちゃん関節を狙って!」
「わかった」
ウィルソンはスカルの前方へ飛び出すように駆けて行った。
「こっちだ! こっち!」
足元をちょこまかと走り回るウィルソンが鬱陶しいのだろう、スカルが踏みつぶそうと足を動かす。その度に地面が揺れるが、負けじとウィルソンは体勢を保ちながら目の前を動き回る。
今のうちだな……!
サラは家々の壁を蹴って屋根に登る。スカルに飛び移った勢いで肩関節に向かって思いっきり剣を突き刺した。そこから振り子のように体重移動をし、剛腕を斬り落とそうと試みる。
「はああああ!」
ずぶずぶ、と勢いよく断裂していくが、背中側しか斬れず。
サラは痛みに悶えたスカルによって振り落とされてしまう。
「くっ……!」
数回に分けて攻撃を与えないと腕は斬り落とせないか……。
深手を負わせることは出来たと思っていたが、負わせた傷が徐々に修復されていく。文字通り、あまり意味がない。
「おいおい……」
回復が間に合わせないように、強烈な一撃を入れるか、高速で攻撃する必要があるな……。だが、狙う部位が狭すぎる。
どうする……?
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