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第1部1章 はじめてづくし
019 はじめての野営
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日が落ちる前に野営の準備をすることにした。
俺たちはテントも持っていないので、焚き火をして夕食を作るぐらいだった。
大きめの石を持ってきて、その上に鍋を置く。下に枯れ枝を細かく叩き割ったものを入れる。そして、火打ち石で火口に火をつけて……大変面倒である。スキルで簡単に着火できますよと申し出たが、何があるかわからないから、能力は基本的に温存しておこうということになった。
で、ズルをし続けていた俺は火打ち石をまともに使えない。そのことが他の3人に知られると、火付け役の横で毎回特訓するようにと言われてしまった……。
適当な石を選ぶ、燃えやすい乾燥した枝を探す、さらに燃えやすくなるように叩き割る。火打ち石で火をつける以外のことも簡単そうに見えて、結構な手間だ。暗くなる前に火をつけられたのは幸運以外の何物でもなかった。
ちなみにこのような焚き火の仕方は訓練所で学んだものだ。訓練所って言ったら、戦闘訓練だろ、ロープの結び方やら火の起こし方やらボーイスカウトかよと思ったものだが、これ教えてもらってなかったら、生きていけないわ。
石で出来上がった焚き火スペースを前にチュウジが解説をいれてくれる。
「これを三石カマドと言って、主にアフリカでよく見られるものである。まぁ、受売りの知識で。我もここに来るまでは現物を見たことがなかったのだがな」
「チュウジくんって物知りなんだね。元の世界に戻ったら、お父さんみたく考古学者目指したりするの?」
「いや西洋史をやりたいと思ってた。騎士道や西洋剣術等に興味を持っていたからな。しかし、ここで暗黒騎士を目指すのも良いのかもしれない……」
騎士修道会とかは世界史で習ったけど、「暗黒騎士」というのはそこには出てこなかったぞ、この中二病め。心のなかでツッコミを入れておく。実際に入れるとまた「誘い受け」認定される恐れがあるので心の中にとどめておく。
鍋を石の上に置き、飯を炊く。
蒸らしている間にもう1つの鍋の中にスープをつくる。
燻製の魚を手でほぐして、それを水を貼った鍋に放り込む。
「多分、出汁とか出るだろうし、硬い身も柔らかくなって食べやすくなるでしょう」
男の手料理なんてこれぐらいで良いんですよとサゴさんが付け加える。
凝りたくても、そもそも材料が米、塩、燻製魚しかないので、これ以上のものはできない。
「あ、美味しい」
「結構出汁効いてますね」
「一汁一菜の一菜部分がないのが若い我が身体には寂しくもあるな」
3人が口々に感想を言いながら、汁とご飯を交互に食べている。
確かに出汁が効いていてうまい。出汁が効いた魚の汁と飯があるなら、行儀が悪いけど……。
「ごめん、行儀が悪いとか言わないで」
汁をがばっと飯にかけてみる。
猫まんま、美味いわ、これ。
「みんなやってみ、これ美味いからっ」
ずずずっと啜り込んだ後に皆に勧めると、皆すんなりと汁をご飯にかける。
案外、皆同じこと考えていたのかもな。
「昔読んだ小説であさりの汁をぶっかけるってシーンがあったのを思い出しますねぇ。あれは美味しそうでした。面倒くさそうなので自分では作らなかったんですけどね」
「ラーメンライスとかもう汁でご飯食べてくれって言ってるようなものですよね。俺、あれでご飯おかわりできますよ」
「ラーメンの汁で飯を食うだと?いや、それはないだろう。シカタ、おまえは年を取ってから醜く肥え太るタイプだ」
「ラーメン屋さんって一度も入ったことなかったなぁ。大学に入ったら素敵な彼氏と出会って、連れて行ってもらうはずだったのに」
「いや、ラーメン屋でいいとか、なんか……ちょろくない?」
「ちょろいって何よ。ラーメンだけで相手を素敵って思うわけ無いでしょ!」
「糸状だけにラーメンに釣られて……うぷぷぷ……」
年長者に申し訳ないが、しょうもないツッコミで滑ったサゴさんの発言は3人でなかったことにした。
「男の子は好きなお店に出入りできて良いよね」
「男は男で甘味の専門店等は入りづらいところがあるのだよ」
チュウジが答える。俺は……この話には答えられない。
「そうでもないよ、スイーツ食べ放題の店ですごい勢いでお皿重ねてるいかにも運動部ですって男子とか見ることあるもん!」
「ごめんなさい!1人ノルマ15個とか言って場違いなこと言って食べまくってごめんなさい。ごめんなさい!場違いな学ランでおしゃれプレイスに出没して。だって、ケーキは別腹じゃないですかー」
「シカタ、やっぱりお前は生活習慣病予備軍だ。気をつけるが良い」
「やっぱり、男の子のほうが出入りできるとこ多くていいなぁ」
良かった。罵倒されなかった。ミカさんありがとう。
「あ、もしかしたら、最初から炊き込みご飯とかにしたら、良くない?そうしたらおにぎりにもできるかもしれないし」
「ミカ殿は聡明だ。洒落たスイーツ店に営業妨害をかける変態テロリストとは大違いだな」
「……」
夕食を食べ終わった後は二人一組で見張り番をすることにして早々と就寝することにした。
「お前は頭が悪い。パーだからパーを出すと考えたのだ」
「うるせーチュウニ、頭の悪さなら同じくらいだろう。お前に対する怒りを押さえるために拳を握りしめていたら、グーが自然と出てたんだ」
同じ組になった俺たちをなぜかキラキラした目で見つめてくれるミカさんを前にして二人で悪態をつきあう。
目、キラキラさせなくて良いんで早く寝てください、お嬢様。
一度見張りについてからは、何もなかった。夜、突然何かが出てきて襲いかかってきたら、ちびっちゃうかもと思っていたので本当に良かった。交代も何事もなく終わり、朝を迎えた。
俺たちはテントも持っていないので、焚き火をして夕食を作るぐらいだった。
大きめの石を持ってきて、その上に鍋を置く。下に枯れ枝を細かく叩き割ったものを入れる。そして、火打ち石で火口に火をつけて……大変面倒である。スキルで簡単に着火できますよと申し出たが、何があるかわからないから、能力は基本的に温存しておこうということになった。
で、ズルをし続けていた俺は火打ち石をまともに使えない。そのことが他の3人に知られると、火付け役の横で毎回特訓するようにと言われてしまった……。
適当な石を選ぶ、燃えやすい乾燥した枝を探す、さらに燃えやすくなるように叩き割る。火打ち石で火をつける以外のことも簡単そうに見えて、結構な手間だ。暗くなる前に火をつけられたのは幸運以外の何物でもなかった。
ちなみにこのような焚き火の仕方は訓練所で学んだものだ。訓練所って言ったら、戦闘訓練だろ、ロープの結び方やら火の起こし方やらボーイスカウトかよと思ったものだが、これ教えてもらってなかったら、生きていけないわ。
石で出来上がった焚き火スペースを前にチュウジが解説をいれてくれる。
「これを三石カマドと言って、主にアフリカでよく見られるものである。まぁ、受売りの知識で。我もここに来るまでは現物を見たことがなかったのだがな」
「チュウジくんって物知りなんだね。元の世界に戻ったら、お父さんみたく考古学者目指したりするの?」
「いや西洋史をやりたいと思ってた。騎士道や西洋剣術等に興味を持っていたからな。しかし、ここで暗黒騎士を目指すのも良いのかもしれない……」
騎士修道会とかは世界史で習ったけど、「暗黒騎士」というのはそこには出てこなかったぞ、この中二病め。心のなかでツッコミを入れておく。実際に入れるとまた「誘い受け」認定される恐れがあるので心の中にとどめておく。
鍋を石の上に置き、飯を炊く。
蒸らしている間にもう1つの鍋の中にスープをつくる。
燻製の魚を手でほぐして、それを水を貼った鍋に放り込む。
「多分、出汁とか出るだろうし、硬い身も柔らかくなって食べやすくなるでしょう」
男の手料理なんてこれぐらいで良いんですよとサゴさんが付け加える。
凝りたくても、そもそも材料が米、塩、燻製魚しかないので、これ以上のものはできない。
「あ、美味しい」
「結構出汁効いてますね」
「一汁一菜の一菜部分がないのが若い我が身体には寂しくもあるな」
3人が口々に感想を言いながら、汁とご飯を交互に食べている。
確かに出汁が効いていてうまい。出汁が効いた魚の汁と飯があるなら、行儀が悪いけど……。
「ごめん、行儀が悪いとか言わないで」
汁をがばっと飯にかけてみる。
猫まんま、美味いわ、これ。
「みんなやってみ、これ美味いからっ」
ずずずっと啜り込んだ後に皆に勧めると、皆すんなりと汁をご飯にかける。
案外、皆同じこと考えていたのかもな。
「昔読んだ小説であさりの汁をぶっかけるってシーンがあったのを思い出しますねぇ。あれは美味しそうでした。面倒くさそうなので自分では作らなかったんですけどね」
「ラーメンライスとかもう汁でご飯食べてくれって言ってるようなものですよね。俺、あれでご飯おかわりできますよ」
「ラーメンの汁で飯を食うだと?いや、それはないだろう。シカタ、おまえは年を取ってから醜く肥え太るタイプだ」
「ラーメン屋さんって一度も入ったことなかったなぁ。大学に入ったら素敵な彼氏と出会って、連れて行ってもらうはずだったのに」
「いや、ラーメン屋でいいとか、なんか……ちょろくない?」
「ちょろいって何よ。ラーメンだけで相手を素敵って思うわけ無いでしょ!」
「糸状だけにラーメンに釣られて……うぷぷぷ……」
年長者に申し訳ないが、しょうもないツッコミで滑ったサゴさんの発言は3人でなかったことにした。
「男の子は好きなお店に出入りできて良いよね」
「男は男で甘味の専門店等は入りづらいところがあるのだよ」
チュウジが答える。俺は……この話には答えられない。
「そうでもないよ、スイーツ食べ放題の店ですごい勢いでお皿重ねてるいかにも運動部ですって男子とか見ることあるもん!」
「ごめんなさい!1人ノルマ15個とか言って場違いなこと言って食べまくってごめんなさい。ごめんなさい!場違いな学ランでおしゃれプレイスに出没して。だって、ケーキは別腹じゃないですかー」
「シカタ、やっぱりお前は生活習慣病予備軍だ。気をつけるが良い」
「やっぱり、男の子のほうが出入りできるとこ多くていいなぁ」
良かった。罵倒されなかった。ミカさんありがとう。
「あ、もしかしたら、最初から炊き込みご飯とかにしたら、良くない?そうしたらおにぎりにもできるかもしれないし」
「ミカ殿は聡明だ。洒落たスイーツ店に営業妨害をかける変態テロリストとは大違いだな」
「……」
夕食を食べ終わった後は二人一組で見張り番をすることにして早々と就寝することにした。
「お前は頭が悪い。パーだからパーを出すと考えたのだ」
「うるせーチュウニ、頭の悪さなら同じくらいだろう。お前に対する怒りを押さえるために拳を握りしめていたら、グーが自然と出てたんだ」
同じ組になった俺たちをなぜかキラキラした目で見つめてくれるミカさんを前にして二人で悪態をつきあう。
目、キラキラさせなくて良いんで早く寝てください、お嬢様。
一度見張りについてからは、何もなかった。夜、突然何かが出てきて襲いかかってきたら、ちびっちゃうかもと思っていたので本当に良かった。交代も何事もなく終わり、朝を迎えた。
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