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年齢なんて気にしない
①1️⃣【お見合い】
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夫の三回忌も終わった栄子は親戚の叔母と、電話で娘の縁談の相談をしていた。
栄子「ねえ、雪も35になるのよ。誰かいい人いないかしら?」
叔母「35かあ。うーん、そうねえ。いるにはいるけど。」
栄子「ほんと?どんな人?」
叔母「警察官なのよ。」
栄子「いいじゃない。その人紹介してよ。」
叔母「うーん。でもねー。」
栄子「35歳が駄目なの?ねえ。」
叔母「違うわよ。この子も35歳よ。」
栄子「なら、ちょうどいいじゃあない。上手くいくわよきっと。」
叔母「でもねー、拓坊の好みは年上なのよ。」
栄子「あ、雪ね。すっぴんになると、ちょっとふけるから大丈夫よ。」
叔母「じゃあ、作戦を練りましょうか。」
栄子「ほんと?ありがとう。」
叔母「ところで、あんたはいくつになったの?」
栄子「57歳。なんで聞くの?」
叔母「拓坊の好みって、50代なのよ。」
栄子「え?」
叔母「だから、お見合いは、雪ちゃんじゃなくて、あんたにしてほしいの。お見合い。」
栄子「・・・。」
叔母「もしもし?ちょっとー?」
ガチャ
電話を切った栄子。
「ふざけてるわ。叔母さん。雪との縁談を断りたいなら、遠回しに言わなくてもいいじゃない。もう。馬鹿にして。」
数日後
駅の改札口を出て自宅に向かう雪。
「うー寒い。」
コートの襟を立てて、家路を急ぐ。
コツ コツ コツ
ん?足音が聞こえる。
後ろを振り向く雪。
大柄な男が後をついて来る。
まさかね。
この先で道が、二つに別れる。
雪は右へ曲がるが、右方向にはあまり家はなく、雪も大体の住民の顔は知っている。
あんなに大きな身長の男の人は、知らない。
もし右に曲がっても、ついて来たら、全力で逃げよう。
雪が右へ曲がろうとしたとき、走り出す足音が聞こえた。
「え?」
男が物凄い形相で、こちらに向って走ってきた。
「ヒ~。」
小さな悲鳴を上げて、雪も走り出す。
ヒールが邪魔で、走りにくい。
タッ タッ タッタッタッ
駄目だ。
追いつかれる。
スカートも、太ももまでたくし上げ、雪も必死の形相で走った。
男に追いつかれた雪。
捕まる。
そう思ったとき、男は雪を追い越し、少しだけスピードを落として
「あなたも早く逃げて下さい。」
と言って先へ走って行った。
「え?」
後ろを振り向くと、野良犬が吠えもせず牙をむき出しで、こちらに向かって迫って来ていた。
「いやあ!」
犬が、雪のスカートに噛みついた。
持っていたバッグで叩いたが、スカートを離さない野良犬。
半泣きになりながら、バッグで叩いたが中々あたらない。
怖くて声がでず、助けも呼べない。
「うわああああああああ」
さっきの男が、大声を出しながら棒切を持って戻って来た。
スカートを離さない犬を、思いきり叩いた。
犬はキャンキャンと悲鳴を上げて、逃げて行った。
犬にずり下げられたスカートをたくし上げながら
「助けてくれてありがとう。」
「怪我はありませんか?」
「ええ。なんとか無事です。」
「良かったあ。すみませんでしたね。」
「はい?」
「さっきの犬。」
「はあ。」
「俺が、蹴飛ばした石が、道路の隅っこで寝ていたあいつに、当たったみたいで。」
「あなたのせいなの?」
「ええ。そうみたいですね。」
「このスカート、弁償してもらえますか?」
「もちろんです。加賀 雪さん。」
「な、なんで私の名前を?」
「知ってますよ。そりゃあ。お見合い相手の」
ああ、またお母さん、勝手にお見合いを進めて・・
「娘さんですから。」
え?お見合い相手の
ム・ス・メさん?
どう言うこと?
「俺あなたのお母さんと、お見合いします、中谷拓哉ともうします。」
警察手帳を見せて
「警察官です。よろしく。」
叔母さんと電話をしている栄子。
「栄子?もうすぐ拓坊がそっちに着くと思うから、よろしくね。面倒見て上げて。」
「はい?」
「だからこの間のお見合いの話よ。」
「お見合い?」
「もう拓坊ったら、写真見せたら気に入っちゃって。どうやら一目惚れらしいわよ。」
雪に一目惚れ。
凄いわ雪。
さすがは我が娘。
「ありがとう、叔母さん。恩にきるわ。」
「後はあなたの決心しだいよ。頑張ってね。」
電話を切る叔母さん。
「私しだい?って?」
暫くして娘の雪が帰って来た。
「お母さんただいま。」
仏頂面の雪が
「お見合い相手、連れてきたから。勝手にやって頂戴。」
2階への階段を登りながら
「お母さんの彼、玄関にいるわよ。」
栄子が玄関に行くと、背の大きな男が照れた仕草で栄子を見つめた。
「今晩は。中谷拓哉です。よろしくお願いします。」
栄子に向って、敬礼をした。
栄子「ねえ、雪も35になるのよ。誰かいい人いないかしら?」
叔母「35かあ。うーん、そうねえ。いるにはいるけど。」
栄子「ほんと?どんな人?」
叔母「警察官なのよ。」
栄子「いいじゃない。その人紹介してよ。」
叔母「うーん。でもねー。」
栄子「35歳が駄目なの?ねえ。」
叔母「違うわよ。この子も35歳よ。」
栄子「なら、ちょうどいいじゃあない。上手くいくわよきっと。」
叔母「でもねー、拓坊の好みは年上なのよ。」
栄子「あ、雪ね。すっぴんになると、ちょっとふけるから大丈夫よ。」
叔母「じゃあ、作戦を練りましょうか。」
栄子「ほんと?ありがとう。」
叔母「ところで、あんたはいくつになったの?」
栄子「57歳。なんで聞くの?」
叔母「拓坊の好みって、50代なのよ。」
栄子「え?」
叔母「だから、お見合いは、雪ちゃんじゃなくて、あんたにしてほしいの。お見合い。」
栄子「・・・。」
叔母「もしもし?ちょっとー?」
ガチャ
電話を切った栄子。
「ふざけてるわ。叔母さん。雪との縁談を断りたいなら、遠回しに言わなくてもいいじゃない。もう。馬鹿にして。」
数日後
駅の改札口を出て自宅に向かう雪。
「うー寒い。」
コートの襟を立てて、家路を急ぐ。
コツ コツ コツ
ん?足音が聞こえる。
後ろを振り向く雪。
大柄な男が後をついて来る。
まさかね。
この先で道が、二つに別れる。
雪は右へ曲がるが、右方向にはあまり家はなく、雪も大体の住民の顔は知っている。
あんなに大きな身長の男の人は、知らない。
もし右に曲がっても、ついて来たら、全力で逃げよう。
雪が右へ曲がろうとしたとき、走り出す足音が聞こえた。
「え?」
男が物凄い形相で、こちらに向って走ってきた。
「ヒ~。」
小さな悲鳴を上げて、雪も走り出す。
ヒールが邪魔で、走りにくい。
タッ タッ タッタッタッ
駄目だ。
追いつかれる。
スカートも、太ももまでたくし上げ、雪も必死の形相で走った。
男に追いつかれた雪。
捕まる。
そう思ったとき、男は雪を追い越し、少しだけスピードを落として
「あなたも早く逃げて下さい。」
と言って先へ走って行った。
「え?」
後ろを振り向くと、野良犬が吠えもせず牙をむき出しで、こちらに向かって迫って来ていた。
「いやあ!」
犬が、雪のスカートに噛みついた。
持っていたバッグで叩いたが、スカートを離さない野良犬。
半泣きになりながら、バッグで叩いたが中々あたらない。
怖くて声がでず、助けも呼べない。
「うわああああああああ」
さっきの男が、大声を出しながら棒切を持って戻って来た。
スカートを離さない犬を、思いきり叩いた。
犬はキャンキャンと悲鳴を上げて、逃げて行った。
犬にずり下げられたスカートをたくし上げながら
「助けてくれてありがとう。」
「怪我はありませんか?」
「ええ。なんとか無事です。」
「良かったあ。すみませんでしたね。」
「はい?」
「さっきの犬。」
「はあ。」
「俺が、蹴飛ばした石が、道路の隅っこで寝ていたあいつに、当たったみたいで。」
「あなたのせいなの?」
「ええ。そうみたいですね。」
「このスカート、弁償してもらえますか?」
「もちろんです。加賀 雪さん。」
「な、なんで私の名前を?」
「知ってますよ。そりゃあ。お見合い相手の」
ああ、またお母さん、勝手にお見合いを進めて・・
「娘さんですから。」
え?お見合い相手の
ム・ス・メさん?
どう言うこと?
「俺あなたのお母さんと、お見合いします、中谷拓哉ともうします。」
警察手帳を見せて
「警察官です。よろしく。」
叔母さんと電話をしている栄子。
「栄子?もうすぐ拓坊がそっちに着くと思うから、よろしくね。面倒見て上げて。」
「はい?」
「だからこの間のお見合いの話よ。」
「お見合い?」
「もう拓坊ったら、写真見せたら気に入っちゃって。どうやら一目惚れらしいわよ。」
雪に一目惚れ。
凄いわ雪。
さすがは我が娘。
「ありがとう、叔母さん。恩にきるわ。」
「後はあなたの決心しだいよ。頑張ってね。」
電話を切る叔母さん。
「私しだい?って?」
暫くして娘の雪が帰って来た。
「お母さんただいま。」
仏頂面の雪が
「お見合い相手、連れてきたから。勝手にやって頂戴。」
2階への階段を登りながら
「お母さんの彼、玄関にいるわよ。」
栄子が玄関に行くと、背の大きな男が照れた仕草で栄子を見つめた。
「今晩は。中谷拓哉です。よろしくお願いします。」
栄子に向って、敬礼をした。
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