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補足譚
月澪彩葉の暗号解読
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※このお話は、本編 第二部:覚醒【4】の続きです。本編に登場する暗号の解説を行っております。
本編未収録のお話で、出だしの会話文から、極めて多くのネタバレを含んでおります。未読の方はご注意ください※
「ああ、私だ……実は折り入って相談したいことがあるんだ」
「どうしたんですか月澪さん、こんな夜更けに」
「すまないが時間がない、まずは簡潔に、用件だけ言わせてくれ。秦野研にある、うちの先生のロッカーを開けてくれ」
「木之瀬先生のロッカーを、ですか……? それはさすがに……」
電話越しにも、明日葉君が戸惑っているのが伝わってきた。
だが、すべてを話している時間はない。一から説明を始めれば、それだけで夜が明けてしまうだろう。
「頼む。この前話していた、連続殺人事件にかかわることなんだ。君に迷惑はかけないと約束する。だから――」
「開きました」
一瞬、荒々しい破壊音が鳴ったかと思うと、きぃ……と金属同士がこすれ、扉が開く音がした。
「いいのか……?」
「月澪さんの声を聴けば、ただ事じゃないのは伝わってきますから。ロッカーの修理代だけは、割り勘でお願いしますね」
ロッカーには鍵がかかっていたのだろう。明日葉君は、それを無理やりこじ開けてくれたようだ。ありがたい。修理費はもちろん、全額私の負担だ。
「早速だが、教えてくれ。中には何がある?」
「んー、ファイルが多いですね。中には印刷した論文とか、書きかけのメモとかが挟まってますけど……」
「その中に、サイコパスと共感覚に関して記述してあるレポートはないか?」
「サイコパスと共感覚……? 分かりました、探してみます」
しかしロッカーの中のファイルをいくら確認してもらっても、該当するレポートは見つからなかった。背筋を冷たい汗が流れ落ちる。大丈夫だ、必ず……必ずあるはずだ。
「これで最後のファイルですね。やたらと分厚いですけど……うわ、なんだこれ」
「どうした?」
「全部数字で書いてある……ミスプリント、かな? でも、それにしては……」
明日葉君の言葉を聞いて、間違いなくその紙束が、私が探しているものであると確信した。
なるほど、万が一見つかった時、見られたときのために保険をかけていたのか。
「明日葉君、至急その紙束をスキャンして私に送ってくれ。それは――暗号だ」
だが、暗号にしたのは浅はかだ。わざわざ暗号にするなんて、何か隠していますよと自分から白状しているようなものだ。必ず解き明かしてみせる。私に……不可能はない。
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送られてきた数字の羅列を見て、私は早速解読に取り掛かった。
暗号というのは、ある特定の法則で文字列を見直すことで、別の意味ある文章が浮かび上がるようにできている。実に様々な法則が提唱されているが、もっとも簡単なものの一つに換字式暗号、という方法がある。
これは、一文字、または別の数文字単位で、ある文章中の文字を別の文字や記号に変換しすることで、暗号文を作成する方法だ。
古典的暗号の一つで、文学的には、エドガー・アラン・ポーの「黄金虫」や、コナンドイルの「踊る人形」、江戸川乱歩の「二銭銅貨」などにも、これらの暗号が登場している。解き方はいたってシンプルで、特定の文字列のパターンを見つけ、そこから元の文章を地道に逆算していく。
例えば「黄金虫」では、英字の中でもっとも出現頻度の高いものは「e」である、と言うところから推理をはじめ、暗号文の中で最も出現頻度の高い文字を「e」に置き換え、暗号を解いている。「踊る人形」では、十人以上の棒人間一人一人が一文字を表しており、手に持っている旗が単語の区切りとなっていることを見抜くことが、解読のカギだった。
だが――
「これは換字式暗号じゃないな」
私はざっと全体に目を通し、そう判断した。暗号は0から9までの数字で構成されていたが、あまりにも数字の組み合わせが多様すぎた。
もとになった文章が日本語であれ、英語であれ、何かしらの文字の出現頻度が高くなっているはずだ。にもかかわらず、全体を通してみたときに、文字列の出現パターンには一貫性がない。
そして、0から9までの数字を用いた暗号ということであれば、もっと、より可能性が高い暗号が存在する。
進数暗号。いわゆる文字コードを介した暗号の事だ。
文字コードとは、文字に割り当てた番号の事を指す。
例えば、アルファベットのAに65、Iに66と割り振ったとすれば、6566はAIとなる。
私たちが普段使っているのは0~9までの十種類の数を用いた十進数だが、他にも0と1だけを使う二進数、アルファベットのA~Fと0~9の数字を組み合わせた十六進数などがある。前者はリモコンやコンピューターで、後者はWEB上での情報のやり取りなどでよく用いられる。
特に文字コードとして最も有名なのは十六進数だ。例えば「あ」は「e38182」、「い」は「e38184」で、「あいうえお」は「e38182e38184e38186e38188e3818a」という風に変換することができる。
十六進数を用いた文字コードへの変換は、英文字だけでなく、平仮名から漢字まで使うことができるため、汎用性が高い。
「ふむ……」
再度、文字列に目を落とす。この暗号が進数暗号であることは間違いない。そして進数暗号なのだとすれば、十六進数が用いられている可能性は極めて高いだろう。問題は、この文字列の中に、英数字は一つも存在していないということだ。
たしかに、十六進数の文字コード変換はあまりにも有名だ。英語表記と数字が並んでいたら、その道の人が見ればすぐにばれる。だとすれば……
「なるほど、二重に変換してあるのか」
私は、よく見れば、段落ごとに数字の幅に偏りがあることに気が付いた。0から9までの数字が使われているところもあれば、0から7までしかない段落もある。全体の文字パターンがこれだけ多様であるにもかかわらず、この偏りは不自然だ。
段落によって進数を変えてある、と見て間違いないだろう。
目を通した範囲だと、八進数でてきている段落と、十進数でできている段落があるようだ。
先にも述べたように、進数暗号に最も適しているのは十六進数だ。
にもかかわらず、この文書内には十六進数に必要なアルファベットが存在していない。それどころか、十進数や八進数といった、情報量の少ない進数が使われている。
さて、ここでもう一つ重要な情報がある。
それは、十六進数は文字コード以外にも、他の進数へ変換できるということだ。
例えば十進数と八進数。
十六進数の10は、十進数の16に該当する。八進数に変換するなら、20だ。
同じく英文字も変換できる。
十六進数のaは、十進数の10に該当し、八進数の12に該当する。
このように変換していくと、「あいうえお」は「e38182e38184e38186e38188e3818a」となり、十進数なら「1181278187797080000820657735420051850」八進数なら「7070060270700604707006067070061070700612」と表すことができる。
「では、私の推測があっているか、検討するとしようか」
この文書の始まりは「7173362272124200」という文字列で始まっている。0から7までの数字で構成されている、おそらく八進数だろう。これをまずは、十六進数に変換する。
すると、「E7B792E8A880」となる。これをさらに、文字コードに変換する。
文字コードはおそらくASCIIだろう。十六進数から文字列への変換はネット上にいくらでもツールが落ちている。フリーのツールをダウンロードし、変換する。
【緒言】
思わず口角が上がるのを抑えられなかった。やはりあった。木之瀬が連続殺人事件に関与していることを示す、重要な物的証拠が。
続けて次の段落も変換する。
「70700623707012147070067670700647715042217070020570700657715006137150223371502237715016057070065370700644707006047070064670700656717202247172466670701222721206147070064370700646707006157070063770700202」
この段落も八進数。十六進数に変換ののち、文字列に変換。
【これまで我々は恋愛感情についての研究を行ってきた。】
次の段落。
「3464030574641115746411177464070274340327744565353434032734643100743403207454410434340507743403157434031774641117746407027434032734456126743403237464710034340501351473173454410434744103347465023434032374340301343405057434032434340302343403033505150575051721743403257434032234340302343403233434032774340100746457213434032574541304350503063475011234752333343403237505773034340334743403177514011534340505343403237434030134340505757571043464712434456305747401263434010006214054130717266117373621170700202」
この段落も八進数。変換。
【恋愛感情は人の持ち合わせた感情の中で最も非合理的であるという見解については、既に先行研究で述べた通りである(木之瀬 20XX等)。】
変換。
【人は恋をした時、脳内からフェニルエチルアミン(PEA)と呼ばれる神経伝達物質を大量に分泌する。この神経伝達物質の影響で、時に人は合理的な判断よりも、恋心に由来する非合理的な判断を優先する行動を取る。
PEAが分泌される以外にも、吊り橋効果、認知的不協和理論等によって脳が心理的に恋をしていると錯覚し、正常な判断を下せなくなる場合もある。
これは歴史を振り返ってみても明らかである。「傾城の美女」という言葉があるように、国を統治する人物が女性にかまけ、破滅への道を歩んだ例は枚挙にいとまがない。
つまり、恋心は人類が繁栄するための一つのツールでしかないにも関わらず(恋心が投影されることにより、子孫繁栄が促進される可能性はある)、人の文明の発展を阻害すると考えられる。】
変換、変換。
【仮に恋愛感情を抱くことがなく、常に合理的な判断をすることができることができる人間がいたとすれば、そういった人種が社会を、国を統治することが結果的に文明の発達には寄与するのではないだろうか。
そこで我々はある精神疾患を有する人間に着目した。いわゆる、サイコパスである。】
変換、変換変換変換変換変換変換変換変換変換……
【既に多くの研究で示されているように、サイコパスは、偏桃体と前頭前皮質、もしくは眼窩前頭皮質の活動が弱く、また結びつきが弱いとされている。
前頭前皮質はいわゆる『良心』を。眼窩前頭皮質は『共感』を。そして偏桃体は、それらを『恐怖』として受け取る。例えば誰かに対して殺意を抱いたとしても、通常の人間は、本当に殺したりはしない。それは前頭前皮質と眼窩前頭皮質、そして偏桃体が働き、相手の痛みを想像し、相手の刺された時の気持ちを理解してしまうためである。サイコパスはその理解、及び共感能力に乏しい。それ故に躊躇いもなく人を傷つけることができるし、相手に情けをかけることもない。
サイコパスの真髄ともいえるこの能力が後天的に獲得できるとすれば、それは今後の人類にとって大きな知見となり得るだろう。
しかし、現在の研究環境では人体実験を行うことは不可能である。よって、最も良い方法だと考えられるロボトミー手術は倫理的、経済的な観点から、現時点では実行不可能であると判断した。】
【そこで着目したのが、共感覚と呼ばれる体質である。これは、文字や声に色や味を感じるなど、ある刺激に対し、通常の感覚に加えて異なる種類の感覚を同時に生じさせる特殊な知覚現象である。
非常に興味深いことに、この共感覚の持ち主は、ある一つの視覚情報を得た際に、通常の人間よりもはるかに多くの脳内の領域を活発に使用する。つまり脳内が常にマルチタスクの状態にある。マルチタスクの状態にさらされている脳はストレスを受ける事になり、脳細胞の減少やニューロンの生成阻害につながると推測される。しかし、それらは微々たるものであり、日常生活に支障をきたすものではない。】
【ここで今回の研究材料である、北條正人の説明に移る。
北條正人(以下被験者)は極めて強い共感覚の持ち主である。通常であれば音や文字に色を感じる程度の共感覚が、被験者の場合は幻覚を見るほどに強い副次的な知覚現象を誘発する。
また、被験者は、言動、発言から推測するに、いわゆるマイルド・サイコパスである。つまり、先述した偏桃体や前頭前皮質の働きは既に弱い。
これらの事から我々は、被験者に共感覚を発現させることで偏桃体の働きを鈍らせ、後天的にサイコパスを創造する実験を行う。】
すべてのレポートを解読し終えたときには、既に空が白んできていた。
目をつぶれば眠りに落ちてしまいそうになる。強くかぶりを振り、覚悟を決め、北條君にメールを打った。
「話したいことがある。十四時に、この前漣レンと会った時の公園に来てくれ」
しかし……この時の私は、まだこの事件にもう一段階裏があるということに気づいていなかった。
私が真実にたどり着くのは、まだもう少し、あとの話だ。
本編第二部:覚醒 【幕間5 北條正人】 へ続きます。
本編未収録のお話で、出だしの会話文から、極めて多くのネタバレを含んでおります。未読の方はご注意ください※
「ああ、私だ……実は折り入って相談したいことがあるんだ」
「どうしたんですか月澪さん、こんな夜更けに」
「すまないが時間がない、まずは簡潔に、用件だけ言わせてくれ。秦野研にある、うちの先生のロッカーを開けてくれ」
「木之瀬先生のロッカーを、ですか……? それはさすがに……」
電話越しにも、明日葉君が戸惑っているのが伝わってきた。
だが、すべてを話している時間はない。一から説明を始めれば、それだけで夜が明けてしまうだろう。
「頼む。この前話していた、連続殺人事件にかかわることなんだ。君に迷惑はかけないと約束する。だから――」
「開きました」
一瞬、荒々しい破壊音が鳴ったかと思うと、きぃ……と金属同士がこすれ、扉が開く音がした。
「いいのか……?」
「月澪さんの声を聴けば、ただ事じゃないのは伝わってきますから。ロッカーの修理代だけは、割り勘でお願いしますね」
ロッカーには鍵がかかっていたのだろう。明日葉君は、それを無理やりこじ開けてくれたようだ。ありがたい。修理費はもちろん、全額私の負担だ。
「早速だが、教えてくれ。中には何がある?」
「んー、ファイルが多いですね。中には印刷した論文とか、書きかけのメモとかが挟まってますけど……」
「その中に、サイコパスと共感覚に関して記述してあるレポートはないか?」
「サイコパスと共感覚……? 分かりました、探してみます」
しかしロッカーの中のファイルをいくら確認してもらっても、該当するレポートは見つからなかった。背筋を冷たい汗が流れ落ちる。大丈夫だ、必ず……必ずあるはずだ。
「これで最後のファイルですね。やたらと分厚いですけど……うわ、なんだこれ」
「どうした?」
「全部数字で書いてある……ミスプリント、かな? でも、それにしては……」
明日葉君の言葉を聞いて、間違いなくその紙束が、私が探しているものであると確信した。
なるほど、万が一見つかった時、見られたときのために保険をかけていたのか。
「明日葉君、至急その紙束をスキャンして私に送ってくれ。それは――暗号だ」
だが、暗号にしたのは浅はかだ。わざわざ暗号にするなんて、何か隠していますよと自分から白状しているようなものだ。必ず解き明かしてみせる。私に……不可能はない。
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70700623707012147070067670700647715042217070020570700657715006137150223371502237715016057070065370700644707006047070064670700656717202247172466670701222721206147070064370700646707006157070063770700202
3464030574641115746411177464070274340327744565353434032734643100743403207454410434340507743403157434031774641117746407027434032734456126743403237464710034340501351473173454410434744103347465023434032374340301343405057434032434340302343403033505150575051721743403257434032234340302343403233434032774340100746457213434032574541304350503063475011234752333343403237505773034340334743403177514011534340505343403237434030134340505757571043464712434456305747401263434010006214054130717266117373621170700202
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送られてきた数字の羅列を見て、私は早速解読に取り掛かった。
暗号というのは、ある特定の法則で文字列を見直すことで、別の意味ある文章が浮かび上がるようにできている。実に様々な法則が提唱されているが、もっとも簡単なものの一つに換字式暗号、という方法がある。
これは、一文字、または別の数文字単位で、ある文章中の文字を別の文字や記号に変換しすることで、暗号文を作成する方法だ。
古典的暗号の一つで、文学的には、エドガー・アラン・ポーの「黄金虫」や、コナンドイルの「踊る人形」、江戸川乱歩の「二銭銅貨」などにも、これらの暗号が登場している。解き方はいたってシンプルで、特定の文字列のパターンを見つけ、そこから元の文章を地道に逆算していく。
例えば「黄金虫」では、英字の中でもっとも出現頻度の高いものは「e」である、と言うところから推理をはじめ、暗号文の中で最も出現頻度の高い文字を「e」に置き換え、暗号を解いている。「踊る人形」では、十人以上の棒人間一人一人が一文字を表しており、手に持っている旗が単語の区切りとなっていることを見抜くことが、解読のカギだった。
だが――
「これは換字式暗号じゃないな」
私はざっと全体に目を通し、そう判断した。暗号は0から9までの数字で構成されていたが、あまりにも数字の組み合わせが多様すぎた。
もとになった文章が日本語であれ、英語であれ、何かしらの文字の出現頻度が高くなっているはずだ。にもかかわらず、全体を通してみたときに、文字列の出現パターンには一貫性がない。
そして、0から9までの数字を用いた暗号ということであれば、もっと、より可能性が高い暗号が存在する。
進数暗号。いわゆる文字コードを介した暗号の事だ。
文字コードとは、文字に割り当てた番号の事を指す。
例えば、アルファベットのAに65、Iに66と割り振ったとすれば、6566はAIとなる。
私たちが普段使っているのは0~9までの十種類の数を用いた十進数だが、他にも0と1だけを使う二進数、アルファベットのA~Fと0~9の数字を組み合わせた十六進数などがある。前者はリモコンやコンピューターで、後者はWEB上での情報のやり取りなどでよく用いられる。
特に文字コードとして最も有名なのは十六進数だ。例えば「あ」は「e38182」、「い」は「e38184」で、「あいうえお」は「e38182e38184e38186e38188e3818a」という風に変換することができる。
十六進数を用いた文字コードへの変換は、英文字だけでなく、平仮名から漢字まで使うことができるため、汎用性が高い。
「ふむ……」
再度、文字列に目を落とす。この暗号が進数暗号であることは間違いない。そして進数暗号なのだとすれば、十六進数が用いられている可能性は極めて高いだろう。問題は、この文字列の中に、英数字は一つも存在していないということだ。
たしかに、十六進数の文字コード変換はあまりにも有名だ。英語表記と数字が並んでいたら、その道の人が見ればすぐにばれる。だとすれば……
「なるほど、二重に変換してあるのか」
私は、よく見れば、段落ごとに数字の幅に偏りがあることに気が付いた。0から9までの数字が使われているところもあれば、0から7までしかない段落もある。全体の文字パターンがこれだけ多様であるにもかかわらず、この偏りは不自然だ。
段落によって進数を変えてある、と見て間違いないだろう。
目を通した範囲だと、八進数でてきている段落と、十進数でできている段落があるようだ。
先にも述べたように、進数暗号に最も適しているのは十六進数だ。
にもかかわらず、この文書内には十六進数に必要なアルファベットが存在していない。それどころか、十進数や八進数といった、情報量の少ない進数が使われている。
さて、ここでもう一つ重要な情報がある。
それは、十六進数は文字コード以外にも、他の進数へ変換できるということだ。
例えば十進数と八進数。
十六進数の10は、十進数の16に該当する。八進数に変換するなら、20だ。
同じく英文字も変換できる。
十六進数のaは、十進数の10に該当し、八進数の12に該当する。
このように変換していくと、「あいうえお」は「e38182e38184e38186e38188e3818a」となり、十進数なら「1181278187797080000820657735420051850」八進数なら「7070060270700604707006067070061070700612」と表すことができる。
「では、私の推測があっているか、検討するとしようか」
この文書の始まりは「7173362272124200」という文字列で始まっている。0から7までの数字で構成されている、おそらく八進数だろう。これをまずは、十六進数に変換する。
すると、「E7B792E8A880」となる。これをさらに、文字コードに変換する。
文字コードはおそらくASCIIだろう。十六進数から文字列への変換はネット上にいくらでもツールが落ちている。フリーのツールをダウンロードし、変換する。
【緒言】
思わず口角が上がるのを抑えられなかった。やはりあった。木之瀬が連続殺人事件に関与していることを示す、重要な物的証拠が。
続けて次の段落も変換する。
「70700623707012147070067670700647715042217070020570700657715006137150223371502237715016057070065370700644707006047070064670700656717202247172466670701222721206147070064370700646707006157070063770700202」
この段落も八進数。十六進数に変換ののち、文字列に変換。
【これまで我々は恋愛感情についての研究を行ってきた。】
次の段落。
「3464030574641115746411177464070274340327744565353434032734643100743403207454410434340507743403157434031774641117746407027434032734456126743403237464710034340501351473173454410434744103347465023434032374340301343405057434032434340302343403033505150575051721743403257434032234340302343403233434032774340100746457213434032574541304350503063475011234752333343403237505773034340334743403177514011534340505343403237434030134340505757571043464712434456305747401263434010006214054130717266117373621170700202」
この段落も八進数。変換。
【恋愛感情は人の持ち合わせた感情の中で最も非合理的であるという見解については、既に先行研究で述べた通りである(木之瀬 20XX等)。】
変換。
【人は恋をした時、脳内からフェニルエチルアミン(PEA)と呼ばれる神経伝達物質を大量に分泌する。この神経伝達物質の影響で、時に人は合理的な判断よりも、恋心に由来する非合理的な判断を優先する行動を取る。
PEAが分泌される以外にも、吊り橋効果、認知的不協和理論等によって脳が心理的に恋をしていると錯覚し、正常な判断を下せなくなる場合もある。
これは歴史を振り返ってみても明らかである。「傾城の美女」という言葉があるように、国を統治する人物が女性にかまけ、破滅への道を歩んだ例は枚挙にいとまがない。
つまり、恋心は人類が繁栄するための一つのツールでしかないにも関わらず(恋心が投影されることにより、子孫繁栄が促進される可能性はある)、人の文明の発展を阻害すると考えられる。】
変換、変換。
【仮に恋愛感情を抱くことがなく、常に合理的な判断をすることができることができる人間がいたとすれば、そういった人種が社会を、国を統治することが結果的に文明の発達には寄与するのではないだろうか。
そこで我々はある精神疾患を有する人間に着目した。いわゆる、サイコパスである。】
変換、変換変換変換変換変換変換変換変換変換……
【既に多くの研究で示されているように、サイコパスは、偏桃体と前頭前皮質、もしくは眼窩前頭皮質の活動が弱く、また結びつきが弱いとされている。
前頭前皮質はいわゆる『良心』を。眼窩前頭皮質は『共感』を。そして偏桃体は、それらを『恐怖』として受け取る。例えば誰かに対して殺意を抱いたとしても、通常の人間は、本当に殺したりはしない。それは前頭前皮質と眼窩前頭皮質、そして偏桃体が働き、相手の痛みを想像し、相手の刺された時の気持ちを理解してしまうためである。サイコパスはその理解、及び共感能力に乏しい。それ故に躊躇いもなく人を傷つけることができるし、相手に情けをかけることもない。
サイコパスの真髄ともいえるこの能力が後天的に獲得できるとすれば、それは今後の人類にとって大きな知見となり得るだろう。
しかし、現在の研究環境では人体実験を行うことは不可能である。よって、最も良い方法だと考えられるロボトミー手術は倫理的、経済的な観点から、現時点では実行不可能であると判断した。】
【そこで着目したのが、共感覚と呼ばれる体質である。これは、文字や声に色や味を感じるなど、ある刺激に対し、通常の感覚に加えて異なる種類の感覚を同時に生じさせる特殊な知覚現象である。
非常に興味深いことに、この共感覚の持ち主は、ある一つの視覚情報を得た際に、通常の人間よりもはるかに多くの脳内の領域を活発に使用する。つまり脳内が常にマルチタスクの状態にある。マルチタスクの状態にさらされている脳はストレスを受ける事になり、脳細胞の減少やニューロンの生成阻害につながると推測される。しかし、それらは微々たるものであり、日常生活に支障をきたすものではない。】
【ここで今回の研究材料である、北條正人の説明に移る。
北條正人(以下被験者)は極めて強い共感覚の持ち主である。通常であれば音や文字に色を感じる程度の共感覚が、被験者の場合は幻覚を見るほどに強い副次的な知覚現象を誘発する。
また、被験者は、言動、発言から推測するに、いわゆるマイルド・サイコパスである。つまり、先述した偏桃体や前頭前皮質の働きは既に弱い。
これらの事から我々は、被験者に共感覚を発現させることで偏桃体の働きを鈍らせ、後天的にサイコパスを創造する実験を行う。】
すべてのレポートを解読し終えたときには、既に空が白んできていた。
目をつぶれば眠りに落ちてしまいそうになる。強くかぶりを振り、覚悟を決め、北條君にメールを打った。
「話したいことがある。十四時に、この前漣レンと会った時の公園に来てくれ」
しかし……この時の私は、まだこの事件にもう一段階裏があるということに気づいていなかった。
私が真実にたどり着くのは、まだもう少し、あとの話だ。
本編第二部:覚醒 【幕間5 北條正人】 へ続きます。
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s.yk 様
ご感想いただき、また2巻もご購入いただき、本当にありがとうございます!
面白かったの一言、とっても励みになります!
まさにおっしゃる通りで、今後、正人と彩葉がどのようにサイコパスの事件と関わっていくのか、どんな事件が起こってくるのか、が見どころになってくるかと思います! ぜひぜひ、楽しみにしていてください!
応援いただき、本当にありがとうございます! これからも頑張ります!