本屋さんにソムリエがいる、ということ

水月書店にはソムリエがいる。
もちろんここは、変わった名前のフランス料理店ではないし、ワインを提供しているわけでもない。ソムリエの資格を持っている人が勤めているわけでもない。これは物の例えだ。ニックネームと言い換えてもいい。
あらゆる本に関する相談事を受け付ける本のソムリエ、「本庄翼」。
彼女にかかれば「この前発売した、表紙が緑色の本が欲しいんだけど、タイトル分かる?」系のおなじみの質問はもちろんのこと「最近のラノベでおすすめの本はある?」「一番売れている本が欲しい」的な注文や「息子に本を読ませたいんだけど、どんな本がいいと思う?」「こういうジャンルが読みたいんだけど、最初に読むならどれがおすすめ?」といった困った質問も容易く解決される。
これは、本屋さんでソムリエをする本庄翼と、彼女のもとに相談に来る、多種多様な相談客、そして――元相談客で、彼女を追いかけて水月書店で働きだした、何のとりえもない「僕」の物語だ。
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