はじまらない物語 ~僕とあの子と完全犯罪~

玄武聡一郎

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出題篇 □■□■君は

第十二話 (4) 『礼拝堂の暗号』

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「さて、それでは世界史からいこうか」

 トップバッターはララちゃんだった。カーディガンのポケットに両手をツッコミ、けだるげな流し目で僕らを見るララちゃんは、しかし中々にホワイトボードの前に立つ姿が様になっていた。
 ちなみに同じく世界史担当のミョウミョウも身長が小さいので、なんだか既視感もある。

「範囲は古代から中国王朝までか……ほぅ、中々広いな」

 そう、広い。とてつもなく広い。
 覚えることが多すぎて意味が分からないとも言える。

「なぁ、麗華さん。麗華さんやったら、どんな問題が出るか、想像できるんとちゃうん? それ教えてくれへん? 丸々暗記してテストに挑むからさー」
「ふむ……」

 雅樹の言葉を受け、けだるげな眼を向けた後、ララちゃんは言った。

「例えば、これは日本史の話だが……。桓武天皇による平安京の設立は七九四年だ」

 「問題としてはこんな感じで、穴あきで出るのが普通だな」と、こうホワイトボードに書いた。

 七九四年、(①)天皇は政治を立て直すため、都を(②)京に移した。
 ①、②に入る単語を記入せよ。

「で、このまま丸暗記したとして」

 しゃっと、一部を消し、書き直す。

 (①)念、桓武天皇は政治を立て直すため、都を(②)に移した。
  ①、②に入る単語を記入せよ。

「こうなった時、果たして答えられるのかどうか。もしくは」

 七九四年、桓武天皇が政治を立て直すため、都を平安京に移した理由を述べよ。

「こうなるかもしれない。要するに、問題を予測するというのは、どうしようもなく愚かな好意だという事だよ。分かったかな須藤君?」
「……すんませんでした」
「だが……丸暗記しようという意気込みはいい」

 にやり、という擬音がふさわしい笑顔でララちゃんは言う。

「そういうガッツある姿勢を、私はリスペクトする。ならば、その根性を称え、問題として出るであろう事項を面白おかしく語っていくとしよう。ちょっとした小話を挟みながらな」

 その後のララちゃんの授業は分かりやすく、ウィットに富んでいて、実に楽しかった。雅樹が「ララちゃん……素敵だ……」と呟いていた。
 お前は可愛い子ならだれでもいいのか、とツッコみたかったけど、まぁそりゃそうかと一人で納得した。

◇◇◇

 次の日は理科総合、ワッキーの出番だった。

「まぁ教えるって言っても、昨日の麗華さんみたいなのは期待しないでよ。俺ができるのは‥…こういうのを皆に配ること、かな」

 前から配られてきたのは周期表だった。ただし……なんかキャラクターがくっついている。

「今回の理科総合の主な範囲は化学。特に、元素記号さえ覚えていれば大体何とかなる、化学結合とか化学反応だ。だったら、いかにして元素の特性を覚えるのが重要だと思ってね」
「かわいい……」
「萌えるな……」
「わー、見てこれ! 男の子もいるよ!」
「あはは、脇谷君守備範囲広すぎー」

 水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム……それぞれにキャラクターがくっついていて、それぞれの特性が書かれている。これなら楽しいし、見ているだけで面白いから休み時間とか二も自然と頭にいれることができるだろう。

「ま、似た様なのは日本でも売ってるらしいんだけど、ここじゃ手に入らないしね。で、化学結合と反応は、カップリングみたいに考えてくれるれるといいと思うんだ。例えば水はH君とO君のカップリングなわけで――――」

 一度も詰まることなく、すらすらと説明を続けるワッキーの教え方は、昨日のララちゃんの補習と比べても全くそん色がなかった。
 かっこよくて頭も良くて、おまけに絵まで描けて発想力も豊富。絵はちょっと萌えキャラ寄りだけど、嫌悪感なく皆に受け入れられるような爽やかな造りは、色々な方面への配慮がうかがえる。
 ほんと、これで変態じゃなかったら、寧ろ僕が恐縮して喋りかけられないかもなぁ、なんて事を思ってしまう。
 隣の席で佐久間さんが「BL探偵というのもいいな……」と呟いたのを、僕は聞かなかったことにした。

◇◇◇
 
 うちのクラス三賢人の最後、夢莉さんは、英語の担当だった。

「じゃぁ今日はリスニングの復習をします! 私が喋るから、なんて言ってたか、日本語訳を書いてみてね。完璧じゃなくてくていいから、ざっくりと、こんな感じ、くらいの大雑把な訳を意識してみて」

 今日の夢莉さんはゆったりとしたウェーブをかけた髪にメガネ姿だった。本を片手にホワイトボードの前に立つ夢莉さんは、漫画から切り取ったみたいな英語教師像そのもので、僕は一瞬見とれてしまった。
 因みに雅樹は横でさっきから拝み倒している。女神が降臨したかの様な反応だ。気持ちは分かるが、僕はさすがに拝みはしない。

「じゃぁ行くね。こほん。Hey Jack! Who is that woman!」

 そんな雅樹は放っておいて、僕は夢莉さんの授業に集中する。何と言っても僕は英語が苦手なのだ。

「Oh Kelly, she is my sister.」「Shut up Jack! You were cheating up again at all!」「Trust me! All I love is you absolutely!」

 子供のころから海外を転々としてきたらしい夢莉さんの発音はネイティブのように流麗で、美しかった。何言ってるかはほとんど分かんなかったけど。

「さて、こんな感じかな。因みに今の和訳は、『ジャック! あの女は誰なの!』『あぁケリー、あれは僕の妹だよ』『うるっさいわね! どうせまた浮気してたんでしょ!』『信じてくれよ! 僕が愛してるのは君だけなんだ! 絶対に!』だよ」

 なんちゅー例題を出してるのかな、この子は。

「全部分かった人ー。ふむふむ。じゃぁ何となくわかった人ー。ふむふむ。じゃぁ微塵も分かんなかった人ー。なるほどー」

 勿論最後に手を挙げた僕は、他にも仲間がいたことにほっとする。

「全部分かった人は、cheating up! とか、abusolutely! とか常用単語以外も抑えられてるすごい人だね! さすが麗華さん」
「ふ、ありがとう。まぁ、流れるようにその単語を口にした張本人の方がすごいと思うが」
「あはは、私は在外期間が長いから……。で、その他の人の為に、いくつか補足説明するね。まず英語をとらえる時は、いきなり全部を聞こうとするんじゃなくて、言葉の最初の文字を追う、そして強調された単語に着目する。この二点に注意するといいと思うんだ。例えばさっきの文章で言うと、Who is that woman! のWhoの部分に――――」

 やはりというか想像通りと言うか。先の二人と比べてもそん色のない、分かりやすい解説を聞きながら、僕は明日の自習時間が憂鬱で仕方がなかった。
 得意科目とはいえ、僕は本当に人に物を教えることなんてできるんだろうか……。


◇◇◇


 次の日、理科総合の時間は実験だった。炎色反応の実験で、ステンレスを燃やしたり、銅を燃やしたり、様々な色を出して燃える金属を見るのは楽しかった。
 この日は二人一班になっての実験で、僕は例のごとく夢莉さんとペアになった。

「どう、夢莉さん。暗号解読の方は」

 僕は自習時間の事を頭から振り払いたくて、違う話題を振ってみた。

「んー、まだもう少しかかりそうかなぁ。鍵っていうのが何なのか、まだ分からないし……後は謎に縦線が入ってるんだよね。あれも謎で……」

 確か暗号の内容は

 Detect the key and solve the following code. 
(鍵を推理し、以下の暗号を解け)
 DCJSIARITUERLVROSES|TAERTFTAT

 確かにSとTの間に謎の縦線が入っている。右と左で分けるという事なのか、それとも……。

「ちょっと調べてみると、そもそも暗号には古典暗号っていうのがあるらしくてね。それを当たった方がいい気もしてきたんだ。暗号も調べてみると、奥が深くて楽しいよねー!」
「そ、そうなんだ」

 僕にはさっぱり理解できないけど、「分からない」を「分かった」にする快感があるというのは、少し分かるかもしれない。『図書館の妖精』の謎を解いた時、僕はわずかながらにその高揚感を味わう事が出来たわけだし。

「奏汰くんの方はどう?」
「ごめん。こっちもまだかかりそう。なんだろう。ピースが足りてない気がして……」
「そっかー。うん、まだ時間もあるし、ゆっくり考えてみて。奏汰くんの推理法ですぐに解決しないってことは、きっと情報が足りないんだろうし」

 どうだろうか。
 そもそも僕は、未だにこの推理法に懐疑的だ。
 情報のインプットにミスがあれば、僕は犯人の思考をトレースし損なうだろう。
 まぁ今回の事件が、僕と夢莉さん向きであることは間違いないとは思うけど。

「そう言えば今日だね、奏汰くんの授業。ふふ、楽しみー」
「うぅ……あんまり楽しみにしないで……」

 考えただけで胃がきりきりと痛む。
 おぉ、黄色い黄色い! とNaClを燃やして喜ぶ夢莉さんを見て僕は癒されることにした。

「大丈夫だよ、奏汰くん。いつも奏汰くんがどうやって問題を解いてるのか、どういう所にきをつけているのか、そう言う事を教えてくれたらいいだけだから!」
「そんなのみんなやってることじゃ……」
「どうかなー。その科目が苦手な人って、そもそも何をすればいいか分からないって人も多いよ? それの取っ掛かりを与えてもらえるだけでも、私は嬉しいけどなぁ」

 そういうものだろうか、と少し考え、確かに僕は昨日、夢莉さんの授業を経て少しだけリスニングができるようになったことを思い出した。
 5H1Wを意識して聞こうとするだけで、随分と会話の流れがつかめるようになったのだ。それと同じ、なのだろうか。

「がんばれ奏汰くんっ! 何かあったら私もフォローするし、自信もって!」
「うん、ありがとう夢莉さ――――あぶないっ!」
 
 こちらを向いて微笑んでくれた夢莉さんの髪がガスバーナーに近づいたのを見て、僕は慌てて手を伸ばした。

「え……? あ!」

 夢莉さんも気づいたらしく、その場から立ち上がる。僕はガスバーナーを遠ざけ、夢莉さんの髪に目を向けた。

「大丈夫夢莉さん⁈」
「う、うん大丈夫……ちょっと焦げちゃったけど」

 見ると、夢莉さんの絹のような黒髪の毛先が一部、ちりちりになっていた。独特の刺激臭も漂っている。これが髪の焼けた臭いか……。

「ごめん。僕がもっと早く気付いてれば……」
「あはは、ぼーっとしてた私が悪いんだよー。後ろ髪、ちょっと整えようと思ってたし、丁度いいかも。前髪じゃなくてほんとによかったよー」

 その後、慌ててやってきた化学担当の狩谷先生に状況確認と軽い注意を受け、その場は事なきを得た。
 火傷みたいな外傷がなかったのは幸いだったけど、夢莉さんの綺麗な黒髪が少しでも痛んでしまったの、個人的にはちょっとショックだった。


◇◇◇


 さて、とうとうこの時がやってきた。
 僕の担当、現国。今回の範囲は中島敦の「山月記」だ。

 とても優秀だった李徴はとても難しい試験に合格し、役人となるが、そのポジションを不服に思い、詩人になろうとする。
 しかし詩人になった彼は中々大成することができず、やがて発狂してしまう。そして虎になる。人食い虎になった李徴はある日、且つての友人に出会い、そして自分のこれまでの経緯、思いを打ち明け、最後には友人に最後の詩を託して、去って行く。

 悲しい話だ。とても、とても。

 李徴の苦しみ、もどかしさ、そして至らなさ。それらを感じ取って、僕は最後の方は少し泣きそうになった。

「じゃぁ今日は現国です。前の三人みたいにうまくはできないと思うけど……頑張ります」

 僕の特技は登場人物へ過剰に感情移入することだ。
 それをララちゃんは「共感力エンパス」と呼んでいたけど、多少感受性が豊か、くらいに僕は思っている。
 問題は、このひどく感覚的な問題の解き方を皆にどう伝えるか、ということだろう。夢莉さんの言葉を借りるなら、コツを教え、取っ掛かりを与えるわけだ。
 ポケットの中のスマートフォンの画面を一定のリズムで叩きながら、僕はとつとつと語る。

「まず……山月記の中のあまり馴染みのない表現。『狷介』、『潔しとしない』、『科挙』、『江南尉』。全部読めるようにしといた方がいいと思うし、勿論意味もしっかり把握しといたほうがいいと思う。最初に穴埋めか記号問題で十点分……もしかしたら十五点分くらいは出るだろうから」

 国語の問題の王道だろうけど、山月記はそれが顕著だ。
 難しい語句が多い。物語自体はとてもシンプルで分かりやすいのに、それがとっつきにくさに拍車をかけている。

「で、問題は文章題。僕はテクニック的なもの……例えば、下線部の問に答えるときはその前を探せ、とか、接続詞の前後に注意しろ、とか、そういう話はしないつもりです。そういうの僕はあんまり得意じゃないし……多分もっと教えるのが上手い人は居ると思うから」

 きっと将来的に役立つのはテクニックの方なんだろうけど、まぁそれは各々勉強してもらうとしよう。

「折角なんの物語が問題になるのか分かってるんだから、じっくり読み解けばいいと思う。山月記の核は李徴になりきる、です。まず、虎になる前の李徴と、虎になった後の李徴の心境変化を文章から考えていくわけだけど――――」

 意外と。
 話始めるとすらすらと言葉が出るものだった。
 自分が今まで感覚的にやってきたことを言語化するというのは、案外面白くて興奮する。
 それをみんなの理解度に合わせて階層分けをして、順番に提示していくのは、すごく繊細な作業で、ジェンガをやってるみたいなドキドキがあったけど、服の下にたっぷりと汗をかきながらも、僕は話し続けた。

 頭の片隅で、僕はララちゃんの事を考えていた。
 寄り添う天才。
 彼女はいつもこうやって、自分の頭の中での理解を分解して紐解いて、それをじっくりと眺めた後、僕らに合わせて教えてくれているのだろう。
 そう考えると、彼女の化け物じみた頭の良さが改めてよく分かったし、同時に少し恐ろしくも思った。彼女は一体、何が、どこまで見えているんだろう、と。

「――――というわけで、李徴の気持ちがよく分かると、『俺の毛皮が濡れたのは、夜露のためばかりではない』の意味もよく分かると思うし、李徴の詩の『どこか(非常に微妙な点において)欠けるところ』についても分かると思います。で、この二つはテストに出ると思うので押さえとくといいと思います。えー、と……こんな感じです」

 そう言って僕は足早に自分の席に戻ることにした。
 喋っている間はテンションが上がっていて何も感じなかったけど、終わってみれば恥ずかしい。なんか必要以上に熱く語っちゃった気もするし――――

「李徴―――――――――――――――――!」
「うぉぉ?」

 突如、謎の雄たけびと共に立ち上がったのは雅樹だった。

「お前ってやつは……お前ってやつはぁあああ! 虎になってから色々気付いても遅いやろうがぁああああ! それなのに、それなのに……それでも読んだ詩には欠けるところがあるなんて、悲しすぎるやないかぁあああ!」
「あぁ、後悔とあきらめに満ちた、悲しい……とても悲しい話だな……」

 こんちゃんまでそれに続いた。クラスに笑いが満ちながらも、どこか二人に賛同するような空気が流れていた。
 まぁ、なんというか……。
 少しでもこの物語の見方を変えてくれた人が居るのは、嬉しいかな。
 どうやらこの日の補習授業はそれなりに反響があったようで、その後何人かの生徒に労われたり、質問されたりした。
 そんな僕に笑顔でピースサインを送る夢莉さんと、口元を少しにやつかせながら椅子を傾けるララちゃんを見て、僕は少し嬉しくなった。
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