はじまらない物語 ~僕とあの子と完全犯罪~

玄武聡一郎

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出題篇 □■□■君は

第三話 (3) 『春、来たりて』

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 その後、夜のホームルームになるまでは、新しい生活に慣れるために必死だった。

 まず、昼食。

 鐘の音が鳴ると、全校生徒と教員がこぞって教室棟の横にある食堂に集まった。
 座る席はそれぞれ決まっているらしく、自分の席を探すのが一苦労だった(場所はあの後合流した校長先生が教えてくれた。食堂の入り口に席順表が貼ってあるらしい)。 
 二十人一組くらいのテーブルがずらりと並び、それぞれのテーブルにいる当番の生徒が、料理をサービングして配ってくれる。

 左右に座る生徒は必ず上級生か下級生と決まっているらしく、僕の横にはラグビーでもやってんのかって位がたいのいい高三の先輩と、華奢で無口な中三の女の子だった。
 これも同級生だけでなく、他学年と仲良くなるための制度なのだろう。理にかなっている。

「ここの料理は決しておいしいとは言えないけど、量はあるから飢える事はないよ!」

 がっはっはと大きく笑った見た目のまんま豪快な先輩の言う通り、配られてきたパスタは伸びきっていて、お世辞にも美味しいとは言えなかった。
 が、軽く二束分くらいの量はあったので、お腹はいっぱいになった。
 イギリス料理に期待はするな、という父さんの言葉を思い出した。
 

 次に風呂。
 風呂と言っても当然浴槽なんてものはなく、共用のシャワーだった。
 日中の授業が終わる十六時から、夕飯が始まる十八時までの間が放課後と定義されているのだが、シャワーはこの間に入らなければならないらしい。 
 放課後になり、あらかた荷解きを終えた僕は、この時初めてルームメイトと言葉を交わした。

「俺は須藤雅樹すどうまさき、よろしくな!」
「よろしく、須藤君」
「雅樹でええよ! 君付けなんて体かゆくなりそうやし!」

 ごりごりの関西弁を喋る雅樹はテンション高めで若干気圧されたけれど、寮のルールのあれやこれやを一つ一つ丁寧に教えてくれた。

「でな、シャワーはここ。バスタオルは自前のを持って行ってな。備え付けとかそんな洒落しゃれたもんないからな」
「トイレにつながってるんだね」
「ほんまそれよ。まぁでもその内慣れるわ。シャワー浴びてる最中にトイレしたくなって素っ裸で用足してる奴とかもおるしな」

 あはは、と笑うと、「冗談ちゃうで」と真顔で言われた。
 どうにも男子寮と言うのはかなりの無法地帯のようだ。

 シャワーは前にいた中学の部室にあった、シャワールームに似ていた。
 簡単な仕切りがしてあるだけで、文字通り裸の付き合いというのを毎日できるわけだ。

「うちの部屋におるのは後二人。こんちゃんとわっきーやわ。こんちゃんは変態やけどええやつやし、わっきーも変態やけどええやつやから、すぐ仲良くなると思うわ」
「二人とも変態なんだ……」
「かなたっち、もっと『がっ!』とツッコんでくれてええんやで? がっ、とな!」
「ぜ、善処します……」

 ほんと、THE関西人って感じだなぁ……。若干出の悪いシャワーノズルから吐き出されるお湯を浴びながら、僕は笑った。
 転校初日ということで緊張していた僕だったけれど、雅樹のお陰で大分それがほぐれたのは間違いなかった。
 一を言ったら二、三十返してくれるから、結構話すのが楽だったというのもある。
 シャワーからの帰り道も、バスローブを着用しなかったら怒られるという規則について、実に様々な過去の話を踏まえながら教えてくれた。

「でな、その先輩は素っ裸で廊下を駆け抜けていってんけどな、バスローブを肩にかけてるから着用してるのと一緒です、言うてん。でもぶっちーがな、あ、ぶっちーっていうのは数学の先生のあだ名やねんけど……おりょ。こんちゃんやん、おっつー。かなたっち来とるで」

 素っ裸ネタが多くない? 
 基本的に下半身は露出していくスタイルなの? 
 と、ツッコもうとしていた矢先、部屋に戻るともう一人のルームメイトが居た。

「かなたっち、これがこんちゃん。こんちゃん、この子がかなたっち。ええ子やで」
「雅樹、それ全然紹介になってないから……。日向君だよね、初めまして。俺は近藤良太こんどうりょうた。こんちゃんって呼ばれてる」
「あ、日向奏汰です。今日からよろしくです」
「こちらこそ。俺は中学からこの学校通ってるから、分からないことはなんでも聞いてくれ」

 おぉぉ、なんかこう、包容力の塊みたいな人だ!
 百八十くらいあるかな。体が大きいのもあるかもしれないけど、何より声がいい。深く体の芯に心地よく響く、ベース音みたいな声だ。雅樹は変態って言ってたけど、ネタだったのかな。

「すごくいい声だね。びっくりしちゃった」
「あはは、よくベースみたいな声だねって言われるよ」
「うん、なんか分かる気がする」
「そういえば、ベース音は女性の子宮に響くからもてるっていう話を聞いたことがあるんだけど、どう思う?」
「あはは、うーん、ちょっと分からないかな」

 あぁ、普通に変態だわ。
 どう思う? って何さ、どう思う? って。その話題振られて、どんな反応したらいいんだ僕は。
 
「えぇ、そうなん? じゃぁ俺バンドでベースやろかな。んでもって教室で練習したらモテモテやん?」
「おいおい抜け駆けはよくないぞ雅樹。俺もベースにするつもりなんだから」
「二人ともベースにすればいいやん」
「ほぅ、なるほど。天才だなぁ」
「いやはや、それほどでもあるなぁ」
「いやいや、ベーシストだけじゃバンド成り立たないから」

 思わずツッコむと、二人がぴたりと会話をやめ、僕を見た。

「な、なに……?」
「かなたっち、そのつっこみ……」
「このつっこみ……?」
「二十点」
「やかましいわ」

 僕、自分の事そんなにキャラが薄いと思ってなかったんだけど、だんだんと自信なくなってきたなぁ……。


◇◇◇


 そんなこんなであっという間に夕食の時間になり、何の魚かよく分からない魚のグリルを食べ、ホームルームの時間となった。
 夕飯の時間は十八時から皆が食べ終わるまで。
 平均して一時間と少しで終わるから、ホームルームは十九時半から二十時の間に行われるという事だった。

 その後、二十時からはまた授業がある場合もあるし、自習の場合もあると。
 結構詰め詰めで勉強するんだね、と言うと、自習時間なんて皆本読んだり、寝たり、音楽棟に楽器弾きに行ったりしてるからそうでもないで、と雅樹。まぁ高一ならそんなもんなのかなと思った。

「ところで、ロッカーって一人一つなの?」

 夕飯が終わってからホームルームが始まるまでには十五分程度のインターバルがあった。
 みんなその間に寮に帰って歯を磨いたり、用を足したり、そのまま教室に来たりするようだ。
 隙間時間を有効活用していると言える。

 雅樹と一緒に直接教室に来た僕は、教科書類をロッカーや机に入れながら聞いた。
 壁際に並んだ金属製のロッカーは、上下に二段重なっていて、そのうちの一つを自分用に使っていいとの話だった。

「せやで。なんか問題あった?」
「うーん、まぁいいか……」

 せいぜい教科書が十冊ちょっと入る程度の大きさ。残念ながらこいつらを入れる余地はなさそうだな、と思いながらボストンバックのチャックを閉めて、席に戻る。

 時間が経つにつれ、教室にも生徒が続々と集まって来ていた。
 既にグループは出来上がっているようで、七々扇さんの周りにも数人の女子生徒が居た。
 女子だけじゃなくて、男子もまた然りで、それぞれ仲の良い友達と話をしている。

 時折ちらちらと視線を感じるのは、転校生なのだから勘違いではないだろう。
 はてさてどんなやつが来たのだろうと、好奇心交じりの視線を浴びながらも、僕は一先ずホームルームが始まるのを待った。

 数分後、担任の先生が入ってきた。
 小さい先生だった。
 それはもうとんでもなく。
 百四十センチくらい?

「ミョウミョウおかえりー!」
「人をパンダみたいに呼ぶのはやめなさい。あと、先生には敬語を使いなさい如月きさらぎさん」
「あはは、はーい」

 如月、と呼ばれた女生徒は笑いながら自分の席に戻っていった。
 ミョウミョウ、というのはあだ名なのだろう。
 可愛らしいあだ名と、可愛らしいサイズとは裏腹に、性格はさばさばしてそうだった。

「ではホームルームを始めます。昨日も言ったように、今日から新しく転校生が来ました。日向奏汰君です。日向君、前で軽く自己紹介をしてくれますか?」
「え? あ、はい」

 思わず疑問符で返してしまったけど、そりゃそうだよなと納得して僕は前に出た。
 大量の視線が僕を貫く。席を数えてみると、五×五あった。僕を入れて丁度二十五人なのか。

「日向奏汰です。親の仕事の関係で中途半端な時期ですが、転校してきました。あー……よろしくお願いします」

 どうにも自己紹介と言うのは苦手だ。
 他人に披露するほどの特技もないし、経歴もない。うん、やっぱり僕キャラ薄いのかも。

「みじかっ」

 そんな中、声を上げたのは雅樹だった。
 軽く笑いが起こって、教室内の雰囲気が柔らかくなった。

「短すぎるで、かなたっち。もっと出してこ。かなたっちの良さ、出してこ」
「よ、良さ? 良さ……良さ……あー、比較的無害です?」
「誰だってそうやわ! 比較的ってなんや逆に!」

 くすくすという笑いがそこいら中から零れ落ちている。
 ふと、真ん中らへんに座った七々扇さんと目が合った。
 声に出さず、口パクで「が・ん・ば・れ」と言ってくれているのが分かった。

「何か、趣味とか特技とかはないの?」

 この深く下半身に響く声はこんちゃんだ。
 ルームメイトが必死に援護射撃をしてくれているのが嬉しいやら情けないやらで、僕は必死で頭を回転させた。

「えー、と……趣味は……これと言って……あ、でも。国語とか得意です」
「そう言えば、日向君はこの学院の編入試験、国語が満点でしたよね。南先生が驚いてましたよ」

 ミョウミョウとみんなに呼ばれた先生が、そう言った。
 そう言えばそうだったかもしれない、と思い出し、僕は控えめに「あ、そうです」首肯した。

「なにそれすごい!」

 真っ先に声をあげたのは、さっき先生にたしなめられていた如月さんだった。
 小顔で茶色がかったショートヘアー。くりくりとした目。スポーツができそうな印象を受ける。
 
 彼女のよく通る声につられて、教室内のざわめきが増した。
「すげぇ」「まじか」「編入試験って高校入試と一緒の問題? 俺全然解けなかったわ」「南先生の問題難しすぎんだよな……」「かなたっち! 仲間やって信じてたのに!」などなど。
 うん、最後のはスルーしとこう。

「はい、日向君ありがとう。国語が苦手は人には是非教えてあげてくださいね」

 だんだんと収集がつかなくなってきたところで、先生がそう締めくくった。
 流石、ナイスタイミングだ。
 

◇◇◇


「なんでなんや、かなたっち! このクラスにもう鬼才も秀才も天才もいらんねん! 飽和状態やねん! お腹いっぱいやねん!」
「近い近い近い。国語だけだよ、他はからっきしだし……」
「じゃぁそれもできない俺はどーしたらいいん⁈」
「えぇぇ……知らないよ……」
「それはもう勉強するしかないよー、雅樹君。日向君に教えてもらったら?」
 
 ホームルーム後、早速絡んできた雅樹をさばいていると、ひょっこりと七々扇さんが顔を出した。

「やっほー日向君っ。自己紹介、面白かったよー」
「いや、ウケを狙った訳ではないんだけどね……」

 あぁでも、雅樹とこんちゃんのお陰でなんとなかったわけだし、後でお礼言わないとなぁ、と思っていると、七々扇さんが「くんくん」と鼻をひくつかした。

「ふむふむふむ」
「な、なに? におう?」
「ふふ、うんうん、におうにおう。読書家の匂いがぷんぷんするねぇ。くんくんくん、ほほう。SFにミステリー、ファンタジーに……あらま、恋愛ものまで、結構雑食だね。でもミステリーが多めかな?」
「……っ⁈」

 どうしてそれを? と聞く前に、七々扇さんは得意疑に人差し指を立てて、右目をつむった。

「簡単な推理だよ、日向君。国語が得意な人で、本が嫌いな人は中々いない」

 シャーロックホームズの”Elementary, my dear Watson”、にかけているのだろうか。七々扇さんもミステリーが好きなのかなと思いながら、僕は続きを促した。

「それだけ?」
「のんのん。国語ができて、且つ本が好きな人は、読書を趣味と呼ばない傾向がある。括弧、私調べ、括弧閉じ。かと言って、本を読むことに時間を取られているのだから、他の事に時間は割きにくい。つまり本の虫ほど、趣味は特にありません、と言うんじゃないかな」
「うーん? 必ずしもそうだとは……」
「加えて、日向君は教室に来てロッカーの大きさを気にしていた。今日来たばかりの日向君にとっては、教科書をしまうだけであれば、机の中と、ロッカーがあればスペースは十分なはず。つまり、他に入れたいモノがあったと考えられる。たとえば、読みかけの文庫本とかね」

 なるほど、確かにロッカーには入らないと諦めて、ボストンバックに戻した文庫本がまだ山のようにある。でも、それだけで僕の本を読む傾向が分かる訳が……。

「そして最後に」

 七々扇さんは人差し指を曲げ、僕の机の横を指さした。

「ボストンバックの隙間から本のタイトルが丸見えである」
「え」

 目を落とすと、確かにボストンバックのチャックが閉まりきっていなかった。
 三分の一ほど空いた隙間から、大量の文庫本のタイトルが見え隠れしている。

「えへへ、どう? ちょっとそれっぽかった?」
「ちょっと無理やり感はあったかな。ホームズの真似にしては」
「ありゃりゃ、さすがにホームズさんには敵わなかったかー」

 最初から答えが分かっていたのであれば、自信満々に推理もどきを発表したのも頷ける。
 しかし、と僕は考える。
 タイトルだけでジャンルまで当てたという事は……?

「ふっふっふ。ご明察。何を隠そう、私も読書大好きなんだ! 読書好き集めて、文芸部作ろうと思ってるくらい! 良かったら日向君も一緒にやってみない?」

 なるほど、部活の勧誘か。
 前の高校では何の部活にも入っていなかったし、僕は別段得意な運動があるわけでもない。

「いいよ、楽しそうだし」
「やった! 二人目の部員げっと!私含めてだけど!」
「ん?」
「じゃぁ私、音楽棟で楽器ひいてくるねー!」
「あの、二人ってどういう――――」
「あ、ロッカーは今どこもぱんぱんだから、その本は一旦寮に持って帰った方がいいかも。じゃぁね、日向君!」

 そう言うと花が舞うような笑顔を残し、七々扇さんは去っていった。
 残された僕は、ぽつりとつぶやく。

「もしかして、何かうまい事乗せられた?」
「ええんちゃう? 七々扇さんエロいし」
「あぁ、エロいからいいだろ」
「そうだね……エロいしいいか……っておい」

 いつの間にか横に立ってたこんちゃんを含めた変態二人に苦笑いをむける。
 というか、七々扇さんがなんかエロいと思ってるのは僕だけじゃなかったんだな……。
 
 それはともかく、部活に関しては、また後日改めて七々扇さんに聞くとしよう。
 今日の残りの自習時間は、読みかけの文庫本でも読もうかな。

 五分後から自習が始まるとの事だったので、その前に用を足しに行こうとした、その時だった。

 
「七々扇夢莉には気をつけろ」


 僕だけに聞こえるくらいの音量で、その子はすっと脇を通り抜けていった。

 少し袖が長いカーディガンに、ゆるいネクタイ。ワイシャツの裾は一部スカートの中に入りきっておらず、腰のあたりから出てしまっている。
 けれど、そのだらしなさがファッションであるかの如く、彼女は制服を着こなしていた。

「ま、雅樹」
「ん? どないしたん? おしっこ?」
「あ、うん。それは行くんだけど……いや、そうじゃなくって! あの子、誰?」
 
 今まさに教室の後方にあるドアから出て行こうとした女の子を控えめに指さすと、雅樹は、「あぁ」とこともなげに答えた。

麗華うららかさんやな。麗華うららか稀月きららさん。自他ともに認める『凡才に寄り添う天才』や」
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