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第十三章 思いがけない王命

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 翌朝、侍女たちに支度を調えてもらうと、私はコレットだけを残した。アルベール様から指輪を贈られた、と打ち明けると、彼女は文字通り飛び跳ねて喜んだ。

「ようやく、でございますか! ああ、もう、あのぶきっちょが……。私、やきもきしておりましたのよ。愚図愚図していたら、他の男性がモニク様をかっさらわれるのじゃないかって」
「かっさらわれるつもりは無いし、第一かっさらおうなんて男性はいないわよ」

 謙遜ではなく、本気でそう言ったのだが、コレットは大真面目な顔でかぶりを振った。

「あら、そんなこと。モニク様は、とても魅力的ですもの。昨日の鷹狩りの際も、密かに見つめてらっしゃる殿方は、何人もいらっしゃいましたわよ」
「……まさか」

 全く、そんな覚えは無いが。だがコレットは、そうだと言い張った。

「ドニ殿下のパートナーということで、皆様遠慮してらっしゃっただけですわ」
「そうかしら……?」

 その時、玄関の方で、何やら騒々しい気配がした。コレットは、首をかしげた。

「何かしら? 見て参りますわね」

 コレットは、素早く部屋を出て行った。しばらくして戻って来た彼女は、血相を変えていた。

「大変ですわ。ジョゼフ五世陛下の側近の方々が、お見えのようです」
「ええ!? 何事かしら!?」

 瞬時に頭をかすめたのは、お父様が何かやらかしたのか、ということだった。だが、その懸念を口にすると、コレットは否定した。

「違うと思いますわ。応接間の様子をこっそり窺いにいったら、笑い声が聞こえましたもの」
「はあ……」

 ご用件はさっぱり見当が付かないが、それならば心配することも無かろう。私は、外出の支度を始めた。アルベール様は、結婚式の準備を、と仰っていたが、私はやはりタバインのことが気にかかっていたのだ。デュポン侯爵にお目にかかれないのなら、他を当たるしか無いだろう。

(知り合いの薬師を、訪ねてみましょう……)

 ところが、部屋を出たところで、モーリスがやって来た。

「お嬢様。旦那様がお呼びです。すぐに、書斎へ来るようにと」
「……? わかったわ」

 出かけるのは後にして、私はお父様のお部屋へ伺った。ノックして入室すると、お父様は満面の笑みを浮かべておられた。

「ごきげんよう、お父様。お客様は、帰られましたの? 何のご用件だったのです?」
「ああ、モニク。実は、その話だ」

 お父様は、私を見つめてこう仰った。

「喜びなさい。ジョゼフ五世陛下は、お前をマルク殿下のお妃にと望まれている。つまりは、王太子妃だ。謹んでお受けしますと、お答えしたぞ」
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