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第十二章 波乱の鷹狩り

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 ローズが、ひいっと悲鳴を上げる。他の人々は、すでに承知していたらしく、厳しい表情のままだった。

「さらに」

 マルク殿下は、険しい眼差しになった。

「森番もまた、嘘をついていたと白状した。アンバー殺しの夜、現場で男性を見たのは本当だ。だが、その特徴は思い出せなかった。『その男が黒髪だった』と途中で言い出したのは、ドニ殿下に金をもらって、そう言わされたのだと」

 一同の視線が、ドニ殿下に集中する。国王陛下は、静かに仰った。

「ドニ。説明してみよ」

 ドニ殿下は、しばらく沈黙されていたが、やがて突如、陛下とマルク殿下の前に跪かれた。

「父上、マルク兄上。お心を煩わせて、大変申し訳ございませんでした。私は確かに、二人に金をやって、嘘の証言をさせました」

 何と、と側近らがどよめく。私とアルベール様は、思わず顔を見合わせた。

(まさか、認めるとは……)

「なぜ、そのような……」

 マルク殿下が、眉をひそめられる。するとドニ殿下は、思いがけない言葉を口にされた。

「恋敵を、蹴落とすためです」

 殿下は、私とアルベール様の方を振り向かれた。

「私はかねてから、モニク嬢に恋をしておりました。ですが彼女は、アルベール殿に夢中。森番が男を目撃したと聞いて、私は魔が差したのでございます。もしもアルベール殿に殺人の嫌疑がかかれば、彼女の心は彼から離れるのではないか、と。それゆえ私は、彼らに命じて、アルベール殿に疑いがかかるような証言をさせました……」

 ドニ殿下は、陛下とマルク殿下に向かって、平伏した。

「兄上が真剣に事件を捜査されているというのに、私情で攪乱させるような真似をして、お詫びの申し上げようもございません。かくなる上は、どのような処罰でも受ける所存です!」

 私は、ギリッと唇を噛みしめた。

(何という、でたらめを……)

 偽証の強要については、誤魔化しきれないと踏んだのだろう。だから、素直に認めた上で、謝罪する姿勢を見せた。そして、殺人についてはあくまでも逃げ切るつもりだろう。

(この場で、全てを糾弾してやりたいけれど。でも、証拠が無いわ……)

 そこへ口を挟まれたのは、何とモンタギュー侯爵だった。

「ドニ殿下。今のお言葉は、真実にございますか? あなたはモニク嬢に恋をされていたと仰ったが、被害者アンバーと関係があったのではないですか?」

 侯爵は、アンバーのハンケチをかざされた。 
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