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第十一章 新たな真実と反撃の決意

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「よく、わかりません」

 エミールは、首をかしげた。

「マーゴさんも、不思議がっていました。子供を産めなかったのは、私のせいなのにって。きっと、追い詰められて混乱していたのでしょう、と」

 前世とは異なり、この現世では、不妊は百パーセント女の責任とみなされている。ピエールの残した文章は、確かに謎だった。

「ピエールもまた、麻薬の経験があったんだな。それで妻は、記録を隠し続けたのだろうか」

 アルベール様は、そちらに関心を向けられたようだった。それもあったと思います、とエミールが頷く。

「マーゴさんは、ひどくおびえていました。父様が、ピエールの罪については表に出さないから、と約束なさって、ようやく安心していただけたのですけど」

 それはそうだろう、と私は思った。

「えーと。すみません。何か、あまり役に立たなかったですかね?」

 エミールが、すまなさそうにする。私は、慌てて否定した。

「そんなこと無いわ! アルベール様、この調香記録をお預かりしてよろしいかしら? いろいろ、調べてみたいのですわ」
「もちろんです。熱心ですね」

 にこりと微笑んだ後、アルベール様はエミールの方を向かれた。

「エミール、お前のティリナ訪問は、決して無駄足では無かったぞ。この記録は、必ず役に立つ……。実はな、真犯人の目星は付いたんだ。ここだけの話だが……、ドニ殿下だ」
「殿下が!?」

 さすがに驚いたらしく、エミールは目をまん丸に見開いた。

「一体、なぜ……」
「そこだけは、謎だ。バール男爵の遺体から手帳が抜き取られていたことから、殿下は男爵に何らかの秘密を握られていたと、俺は踏んでいる。それは、九年前の王妃殿下殺しかもしれないし、他の殺人や犯罪かもしれない。さっきの顧客リストには、殿下のお名前は無かったが……」
「じゃあ、告発しましょう!」

 エミールは、興奮気味に叫んだが、アルベール様はかぶりを振られた。

「そうしたいが、証拠が無い」

 確かに、今頃になって目撃証言をしたところで、信用してもらえるはずが無い。コレットの香水の話だけでは、証拠として弱すぎるだろう。

 私は、決意した。アルベール様の目を見つめて、告げる。

「アルベール様、提案があります。私たち、お別れしましょう」
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