転生したら伯爵令嬢でした（ただし婚約者殺しの嫌疑付き）。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます！

第五章 不信と恋慕の狭間で

５

「……何か？」

　即答しない私を、アルベール様は不審に思われたようだった。

「……あの。やっぱり、そうしないとダメかしら？」
「今さら、何を言ってるんです？　それとも、そうすることに問題でもあるのですか？」

　アルベール様が、私の顔をのぞき込む。

「正直に、仰ってくださいよ？」

　打ち明けよう、と私は決意した。殿下に告白されたのだ、と。本当の恋人同士なら、一悶着あることだろう。でも、アルベール様は、私に何の感情も無いのだ。言っても、支障は無いだろう……。

「アルベール様。実はあなたが帰られた後、ドニ殿下は私にこう仰ったのです。以前から私を想っていた、と。今後この屋敷を訪れたい、とも仰いました」
「俺が帰った後、ですか」

　確認するように、アルベール様が復唱する。その表情は、冷静だった。予想通りとはいえ、落ち込まずにはいられない。偽装の恋人とはいえ、少しくらいは妬いてくれるかも、と密かに期待したのだが。

「これまでドニ殿下から、想いを告げられたことは？」
「明確に仰ったのは、今回が初めてですけれど。でも、以前から何かと気にかけてくださいましたわ……」
「なぜ、今のタイミングで仰るのでしょうね」

　アルベール様が、私の言葉をさえぎる。信用されていないようで、私はむっとした。

「以前から想っていたけれど、バール男爵との結婚が決まったので諦めた、と言っておられましたわ。アルベール様とは婚約したわけではないのだから、とも。そうなる前に、と思われたのでは？」
「……まあ、理屈は通っていますがね」

　アルベール様は、奥歯に物が挟まったような言い方をなさった。

「失礼ですが、彼の言葉を鵜呑みにしない方がよいのでは？　屋敷に出入りしたい、とも仰ったのでしょう？　あなたとの交際を口実に、事件について調べようと画策されている可能性もありますよ」
「ドニ殿下が、そんな姑息な方だと？」

　私は、思わず語気を強めた。カッとなった理由は、それだけではない。お前などが男に好かれるものか、と言われた気がしたのだ。

（そりゃ、私はモテないことで有名だけれど。あんまりだわ……）