転生したら伯爵令嬢でした（ただし婚約者殺しの嫌疑付き）。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます！

第四章 深まる嫌疑と求愛者

２

「案外、それが目的じゃなくて？」

　バルバラ様が、不意にそう言い出された。

「ローズに良い縁談が来るのが、悔しいのでしょう。自分は、男性に縁がまるで無いものね。アルベール様だって、きっと遊びに決まっているわ。あなたとの噂が広まったから、仕方なくプロポーズにいらしただけよ。現に、保留をご提案したら、あっさり受け入れたじゃない！」
「そうよ。何せ、『孤独な女』ですものね」

　吐き捨てるように、ローズが言う。モニクという名前には、『孤独な女性』という意味があるのだ。バルバラ様とローズからは、昔からよくからかわれたものである。

　三人の視線が、突き刺さる。私は、静かに頷いた。

「そうですわね。確かに私は、『孤独な女性』ですわ。家族にすら、信じていただけないのですもの」

　彼らの顔を順に見つめながら、私はきっぱりと告げた。

「私は、殺人など犯してはおりません。ですが信用していただけないのなら、あなた方にはもう何も期待しません。私一人で、嫌疑を晴らしてみせますわ。……お父様、短剣を私にください。庇っていただく必要は、ございませんから」

　三人は、やや気圧されたように黙り込んだ。

「というわけで、私は私で勝手にやりますから、ローズの縁談の件は、そちらで何とかなさってくださいね。……まあ、あなた方におできになるなら、ですけれど」
「――何ですって!?」

　バルバラ様が、カッと顔を紅潮させる。私は、そんな彼女の目を見すえた。

「腹違いの妹ですけれど、私はこれでもローズを可愛く思ってきました。もし彼女が他人の忠告を聞き入れて、外見だけでなく中身も磨いたら、噂など蹴散らかして良いご縁に恵まれることでしょう。これが、私から申し上げられる最後のことですわ。……ご存じ？　モニクという名前には『助言』という意味もありますのよ」

　バルバラ様が、さらに何か言い返しかけたその時だった。モーリスが、顔をのぞかせた。

「モニク様。アルベール様と、従妹様がお見えです」