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第六章 忍び寄る不穏

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「三つも買われたのでございますか?」

 マルタと合流すると、彼女は目を丸くした。

「過剰なサービスを受けてしまったのよ。多すぎるから、一つあげるわ」

 クスリと笑うと、私はミニ花束を彼女に押し付けた。

「ありがとうございます!」

 イーリスはテレーゼ様へお持ちしよう、と私は思った。前回差し上げられなかったし、お加減も気になるところだ。

(それにしても。さっきの話、気になるわね……)

 茶菓子の需要まで減っているとは、どういうことなのか。知らないだけで、エクスクルブルクに何か変化が起きているようで、私は身震いした。

(レオ様が戻られるまでに、私で調べられることは、調べておかないと……)

 あれこれ考えている間に、私たちはコール夫人宅へ到着した。出て来た執事らしき男性に、マルタが見舞いに来た旨を告げる。私は、少し離れた所で見守っていたが、二人は何やら押し問答を始めた。気になり、私は近寄った。

「エクスクルブルク辺境伯の妻、シャルロッテでございます。初めまして」

 私は丁寧に挨拶したが、執事は何やら困った表情だ。私は、さらにたたみかけた。

「夫人とは、昨日のお茶会でご一緒したのですが、お膝の具合が悪いとお聞きしましたので。突然で恐縮ですが、お見舞いに上がりましたの」
「さようでございますか。それは、お気遣いありがとうございます」

 執事は、丁寧に礼を述べた。

「ですが夫人は、かなり具合が悪くて。申し訳ありませんが、お目にかかれる状態では無いのです」
「ええ、そうなのですか?」

 私は、怪訝に思った。昨日のお茶会では、楽しげに談笑していたというのに。すると執事も、首をひねった。

「昨晩までは、お元気になさっていたのですがねえ……。今朝から、妙なことを口走られるようになられて。亡くなった旦那様がそこにおられる、だとか」
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