105 / 273
第六章 忍び寄る不穏
5
しおりを挟む
「三つも買われたのでございますか?」
マルタと合流すると、彼女は目を丸くした。
「過剰なサービスを受けてしまったのよ。多すぎるから、一つあげるわ」
クスリと笑うと、私はミニ花束を彼女に押し付けた。
「ありがとうございます!」
イーリスはテレーゼ様へお持ちしよう、と私は思った。前回差し上げられなかったし、お加減も気になるところだ。
(それにしても。さっきの話、気になるわね……)
茶菓子の需要まで減っているとは、どういうことなのか。知らないだけで、エクスクルブルクに何か変化が起きているようで、私は身震いした。
(レオ様が戻られるまでに、私で調べられることは、調べておかないと……)
あれこれ考えている間に、私たちはコール夫人宅へ到着した。出て来た執事らしき男性に、マルタが見舞いに来た旨を告げる。私は、少し離れた所で見守っていたが、二人は何やら押し問答を始めた。気になり、私は近寄った。
「エクスクルブルク辺境伯の妻、シャルロッテでございます。初めまして」
私は丁寧に挨拶したが、執事は何やら困った表情だ。私は、さらにたたみかけた。
「夫人とは、昨日のお茶会でご一緒したのですが、お膝の具合が悪いとお聞きしましたので。突然で恐縮ですが、お見舞いに上がりましたの」
「さようでございますか。それは、お気遣いありがとうございます」
執事は、丁寧に礼を述べた。
「ですが夫人は、かなり具合が悪くて。申し訳ありませんが、お目にかかれる状態では無いのです」
「ええ、そうなのですか?」
私は、怪訝に思った。昨日のお茶会では、楽しげに談笑していたというのに。すると執事も、首をひねった。
「昨晩までは、お元気になさっていたのですがねえ……。今朝から、妙なことを口走られるようになられて。亡くなった旦那様がそこにおられる、だとか」
マルタと合流すると、彼女は目を丸くした。
「過剰なサービスを受けてしまったのよ。多すぎるから、一つあげるわ」
クスリと笑うと、私はミニ花束を彼女に押し付けた。
「ありがとうございます!」
イーリスはテレーゼ様へお持ちしよう、と私は思った。前回差し上げられなかったし、お加減も気になるところだ。
(それにしても。さっきの話、気になるわね……)
茶菓子の需要まで減っているとは、どういうことなのか。知らないだけで、エクスクルブルクに何か変化が起きているようで、私は身震いした。
(レオ様が戻られるまでに、私で調べられることは、調べておかないと……)
あれこれ考えている間に、私たちはコール夫人宅へ到着した。出て来た執事らしき男性に、マルタが見舞いに来た旨を告げる。私は、少し離れた所で見守っていたが、二人は何やら押し問答を始めた。気になり、私は近寄った。
「エクスクルブルク辺境伯の妻、シャルロッテでございます。初めまして」
私は丁寧に挨拶したが、執事は何やら困った表情だ。私は、さらにたたみかけた。
「夫人とは、昨日のお茶会でご一緒したのですが、お膝の具合が悪いとお聞きしましたので。突然で恐縮ですが、お見舞いに上がりましたの」
「さようでございますか。それは、お気遣いありがとうございます」
執事は、丁寧に礼を述べた。
「ですが夫人は、かなり具合が悪くて。申し訳ありませんが、お目にかかれる状態では無いのです」
「ええ、そうなのですか?」
私は、怪訝に思った。昨日のお茶会では、楽しげに談笑していたというのに。すると執事も、首をひねった。
「昨晩までは、お元気になさっていたのですがねえ……。今朝から、妙なことを口走られるようになられて。亡くなった旦那様がそこにおられる、だとか」
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)
朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。
「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」
生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。
十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。
そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。
魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。
※『小説家になろう』でも掲載しています。
聖女なので公爵子息と結婚しました。でも彼には好きな人がいるそうです。
MIRICO
恋愛
癒しの力を持つ聖女、エヴリーヌ。彼女は聖女の嫁ぎ制度により、公爵子息であるカリス・ヴォルテールに嫁ぐことになった。しかしカリスは、ブラシェーロ公爵子息に嫁ぐ聖女、アティを愛していたのだ。
カリスはエヴリーヌに二年後の離婚を願う。王の命令で結婚することになったが、愛する人がいるためエヴリーヌを幸せにできないからだ。
勝手に決められた結婚なのに、二年で離婚!?
アティを愛していても、他の公爵子息の妻となったアティと結婚するわけにもいかない。離婚した後は独身のまま、後継者も親戚の子に渡すことを辞さない。そんなカリスの切実な純情の前に、エヴリーヌは二年後の離婚を承諾した。
なんてやつ。そうは思ったけれど、カリスは心優しく、二年後の離婚が決まってもエヴリーヌを蔑ろにしない、誠実な男だった。
やめて、優しくしないで。私が好きになっちゃうから!!
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
(完結)モブ令嬢の婚約破棄
あかる
恋愛
ヒロイン様によると、私はモブらしいです。…モブって何でしょう?
攻略対象は全てヒロイン様のものらしいです?そんな酷い設定、どんなロマンス小説にもありませんわ。
お兄様のように思っていた婚約者様はもう要りません。私は別の方と幸せを掴みます!
緩い設定なので、貴族の常識とか拘らず、さらっと読んで頂きたいです。
完結してます。適当に投稿していきます。
マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 〜強面、筋骨隆々、とても強い。 でもとっても優しい男が異世界でのんびり暮らすお話〜
かむら
ファンタジー
身長190センチ、筋骨隆々、彫りの深い強面という見た目をした男、舘野秀治(たてのしゅうじ)は、ある日、目を覚ますと、見知らぬ土地に降り立っていた。
そこは魔物や魔法が存在している異世界で、元の世界に帰る方法も分からず、行く当ても無い秀治は、偶然出会った者達に勧められ、ある冒険者ギルドで働くことになった。
これはそんな秀治と仲間達による、のんびりほのぼのとした異世界生活のお話。
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
イラストブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる