173 / 214
174話 過去4
しおりを挟むまず、ガイアとレアの事だ。
ガイアとレアはどちらもスラムの生まれで、早くに親を亡くしオルクスに拾われたらしい。
当時は2人とも俺のように痩せ細り怯えていたらしいが、今はもう元気になっている。
かく言う俺も数ヶ月だった頃には2人と同じように元気になっていた。
これも全てみんなのおかげだ。
俺は毎日みんなに感謝しながら生きていた。
しかし、俺には一つだけ解せないことがあった。
それは、日曜の現人神様への祈りだ。
オルクスは日曜の現人神様は俺たちを幸せにしてくれているからしっかりと毎日祈りを捧げなくてはいけないと言っていた。
俺はオルクスの言う事だからと毎日欠かさずに祈りを捧げてはいるが、その行為の意味が分からなかった。
なぜなら、日曜の現人神様が俺たちを幸せにしてくれているのなら、何故スラムという場所が生まれ、俺達のような人達が出てしまうのか疑問だったからだ。
日曜の現人神様がそんなに高位な存在なら、スラムに居るような人達にも救いを与えてくれるはずだ。
しかし、それな事は起こらず、今もスラムはあり続けている。
だからこそ俺達のことは救ってくれなかった日曜の現人神様の事を信仰することには疑問があったのだ。
ガイアやレアも同じような事を思っていたようで、一応真面目に毎日祈りは捧げるが、オルクスが言うからしょうがなくと言った様子だった。
セイラはスラムの出では無いので、特にそう言った疑問は無かったらしいが、そこまでの信仰は無いらしい。
だが、それでも俺たちは日々真面目に暮らしていた。
みんなお金などがある訳では無いのでスキルなどが分かるわけでは無かったけど、各々得意な事をやって生きていた。
ガイアとレアは武器を使うのが上手かった。
ガイアは盾、レアは剣を使うのが上手く、度々2人で狩りをしてお金を稼いだり、日々の食糧を取ってきてくれたりした。
2人は他の人達よりも成長が早く、同業者からも神童などと言われるほどの成長を成し遂げていた。
そして俺は家事全般が得意だったので、主にみんなの洗濯や掃除、料理などを担当していた。
豊かな生活ができていたとは言えなかったが、それでもみんなと穏やかに暮らせていたことは俺にとってかけがえのないものだった。
そんなある日、事件は起こった。
戦争が起こったのだ。
日曜の現人神様と月曜の現人神様が何故かは分からないが、争い始めたらしい。
俺たちの所に直接攻めてきたりすることは無かったが、物価の高騰や、治安の悪化など、間接的に俺達にも影響が出ていた。
幸いな事に食糧などは殆ど自給自足出来ていたので、俺達が飢えに苦しむ事は無かったが、畑を荒らしに来る人や俺たちの持ち物を盗んでいく人も現れ、かなり困っていた。
そして、俺達は所謂戦争孤児となった人々も何人か受け入れたりもしていた。
オルクスも誰でも受け入れるという事が出来るほどの財力も無ければ、そこまでのスペースもこの教会には無かった。
なので大人や自分達だけでも生きていけると判断した人たちは受け入れを拒否していた。
オルクスはいい人ではあるが、聖人君子ではない。
自分と俺たちの事がまずは最優先なんだ。
それでも、教会内に投げ捨てられた幼子や、親を失い生きることが困難になった子供などは何人か受け入れていた。
その分俺たちの生活は苦しくなってしまったが、それに文句を言う人はこの教会には居なかった。
俺達だって拾ってもらった身だ。
今度は他の人たちを助けたいと思うのは自然な事だった。
やや経って戦争はおわった。
とは言ってもここまでお達しが来ることは無いので、風の噂で知っただけだ。
もっと日曜の現人神様のお膝元である街ならば直々にお達しが来たり、新聞などでその情報を知ることも出来るらしいが、あいにくここは辺境のスラムだ。
こんなところまで来てお達しを出す人はそうそう居なかった。
少し経つと戦争の余波も収まり、今まで通りの穏やかな日々が帰ってきた。
スラムにいる以上、上質な生活は出来ないが、それでも教会という場所の特性上、そこを襲う人も少ない。
襲ってもガイアやレアによって撃退されていたので、俺達は安心安全な暮らしをしていた。
戦時中に引き取った子達も健康な生活を送っていて、すくすく育っていった。
オルクスは俺達と同じようにその子達にも色んな事を教えてあげていた。
俺はここでもやはり少し嫉妬してしまったが、その感情は表に出さないようにしていた。
どれだけ嫉妬をしていたとしても相手は子供達ばかりが俺が10歳なのに対して、子供達は2歳から6歳。
そんな子供たちに嫉妬するのは恥ずかしいと考えたからだ。
それからも俺達は平和に生活をしていき、子供たちも大きくなった。
そんな時、事件は起こった。
早朝、誰よりも早く起き日曜の現人神様への祈りを毎日欠かさず行っていたオルクスがその日は居なかったのだ。
いつも2番手で祈りを捧げていた俺は嫌な予感を感じ、急いでオルクスの部屋へ向かった。
すると、俺はベットの横に胸を抑えて蹲っているオルクスを見つけた。
0
お気に入りに追加
628
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ
柚木 潤
ファンタジー
実家の薬華異堂薬局に戻った薬剤師の舞は、亡くなった祖父から譲り受けた鍵で開けた扉の中に、不思議な漢方薬の調合が書かれた、古びた本を見つけた。
そして、異世界から助けを求める手紙が届き、舞はその異世界に転移する。
舞は不思議な薬を作り、それは魔人や魔獣にも対抗できる薬であったのだ。
そんな中、魔人の王から舞を見るなり、懐かしい人を思い出させると。
500年前にも、この異世界に転移していた女性がいたと言うのだ。
それは舞と関係のある人物であった。
その後、一部の魔人の襲撃にあうが、舞や魔人の王ブラック達の力で危機を乗り越え、人間と魔人の世界に平和が訪れた。
しかし、500年前に転移していたハナという女性が大事にしていた森がアブナイと手紙が届き、舞は再度転移する。
そして、黒い影に侵食されていた森を舞の薬や魔人達の力で復活させる事が出来たのだ。
ところが、舞が自分の世界に帰ろうとした時、黒い翼を持つ人物に遭遇し、舞に自分の世界に来てほしいと懇願する。
そこには原因不明の病の女性がいて、舞の薬で異物を分離するのだ。
そして、舞を探しに来たブラック達魔人により、昔に転移した一人の魔人を見つけるのだが、その事を隠して黒翼人として生活していたのだ。
その理由や女性の病の原因をつきとめる事が出来たのだが悲しい結果となったのだ。
戻った舞はいつもの日常を取り戻していたが、秘密の扉の中の物が燃えて灰と化したのだ。
舞はまた異世界への転移を考えるが、魔法陣は動かなかったのだ。
何とか舞は転移出来たが、その世界ではドラゴンが復活しようとしていたのだ。
舞は命懸けでドラゴンの良心を目覚めさせる事が出来、世界は火の海になる事は無かったのだ。
そんな時黒翼国の王子が、暗い森にある遺跡を見つけたのだ。
*第1章 洞窟出現編 第2章 森再生編 第3章 翼国編
第4章 火山のドラゴン編 が終了しました。
第5章 闇の遺跡編に続きます。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる