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167話 凪3
しおりを挟む凪を切ると、全て身体中が口のようになり防がれてしまうが、何発も当てているうちに少しばかりだが傷を付けられるようになってきた。
そこから出てくる液体もやはり消化液か何かのようで、触れたものを溶かしている。
こいつは血まで何かを食べる為に使っているのだろうか?
初めにあった時はこんなのでは無かったのに、どうしてこんな風になってしまったのだろうか?
こんな風になって居なくてもゆうちゃんにあんな目をあわせた時点でクソなのは確定だが、それにしても変わりすぎだ。
…………もしかしたらこいつはもう凪では無い何かに乗っ取られているのかもしれないな。
俺も俺じゃない何かに何回も乗っ取られてしまったいたし、それと同じような状況なのかもしれない。
俺は思いっきり力を込めて凪を斬っていく。
まぁ、乗っ取られたからと言って罪は消えない。
凪は必ず殺す。
これは決定事項だ。
とはいえ今俺は決定打にかけている。
食われても治すことはできるが、その度に俺の力はよわまっていっている。
その力は夢奪によって取り返すことはできるが、それじゃあジリ貧だ。
凪のエネルギー切れを待つという手もあるが、こんな化け物とそこまでの時間を過ごす気にはなれない。
俺は凪への憎悪のお陰で意識を保てては居るが、これもいつまで続くか分からない。
俺には時間が無いんだ、早く倒さなくてはいけない。
俺が焦っている一方で、凪はどんどんと笑みを深めていく。
その気持ちの悪い笑みに俺の顔は更に引きつっていく。
本当に今のこいつは俺の事を食料としか見ていないようだ。
その食べる力を使ってゆうちゃんの命も食べてしまったのだろう。
そう思うだけで力は無限に吹き上がる。
俺が自身の力を喰われるのを防ぐために、体を触れないように頑張っていると、凪はどんどんと不機嫌になっているようだった。
チャンスだ。
どうやればあいつを殺せるのかは分からないが、あいつの嫌がる事をやり続けるのが良いだろう。
「なんで、なんでなんでなんで!」
凪は知性のないような叫び声をあげる。
良し、これで殺せるかどうかは分からないが、少なくとも苦痛は感じている。
このまま行こう。
俺は触手や周りにいる口から逃げ回りつつ、絶対に攻撃を喰らわないようにしながら慎重に黒鉄だけを当てるようにして攻撃をする。
しかし、攻撃を続ける度に小さな口の数が増えていく。
「くっ!?」
俺は遂に攻撃を受けてしまった。
それを機に俺の周りに小さな口がどんどんと群がってくる。
俺は堪らず夢奪を使ってそこに居る口を全て消した。
「ほんっとうに君は美味しいっすね! もっと、もっともっともっともっと!」
凪はゲラゲラと笑いながら物凄い勢いで俺へと迫っくる。
くっそ、少し押さえ付けたせいで逆に強くなっていやがる。
俺は何度も何度も夢奪を使って食われた分を取り返そうとするが、瞬時にまた食われ返す。
それを何度も繰り返す。
凪はただ食べる事だけに重きを置いているため、凪はそれだけで満足そうだったが、俺はどんどんとイラついてきた。
俺の攻撃はどんどんと荒くなっていき、凪の攻撃を何回も受けてしまう。
あー、もうクソだ、何よりこんな野郎に少し押されているという事実が許せない。
あらゆる手を尽くすが、凪には効いていない。
アンデットか何かなのかと思い治癒をしてみても何も起こらないし、俺の事を美しく見せて魅了しようかとしても凪には更に美味しそうになったようにしか見えていないようだし、他の魔力を使った攻撃も全て防がれる。
今の所効いているのは夢奪だけだ。
しかし、その夢奪を使ったとしとも凪はその分を俺から取っていってしまうし意味が無い。
俺の危機に乗じて俺の中のナニカはここぞとばかりに俺の事を乗っ取ろうとしてくるし、最悪だ。
だが、ここで逃げたりでもしてしまえば凪を殺す機会は無くなってしまう。
それにこいつがこうやって存在しているだけで被害に遭う人は増えていってしまう。
ただでさえダンジョンで人類は滅亡寸前なのにこいつが今何かしでかせば本当に人類は再興出来ないだろう。
俺が逃げるという選択肢は無い。
少なくともまだ今は負けてはいない。
今のうちに何か策を練らなくては。
俺は思考を巡らせるが、その時にも凪は構わず俺を攻撃してくる。
「あぁ、もう、うざい!」
斬っても斬っても凪は怯まない。
だが、食われなければ段々とイラついていくのは分かっているので、とりあえずは食われないような立ち回りをしていく。
しかし、それを繰り返していくうちに正確には目なのかは分からない凪の目が俺の事を睨んだような気がした。
駄目だ、何かが来る。
俺が身構えると、凪はニヤリと笑って1つの能力を使った。
【具現《大口》】
凪がそう呟くと、そこにはとてつもなく大きく、獲物を食べる為の牙が無数に付いた口が出現した。
俺は戦慄した。
これは俺とゆうちゃんを食ったあの口だったからだ。
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