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161話 出航

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 一旦整理しよう。

 まず、今俺が訪れている所にはゆうちゃんは居なかった。

 全ての建物を探したりはしていなかったので確定では無いが、あいつらにとって重要なはずのゆうちゃんを殺したりするはずがないので、ここにはいなかったのだろう。

 となると、ゆうちゃんはほかの別場所に居るということになる。

 コナーが言うには日本のでの本拠地は今俺がいるここだと言う事なのだろう。

 そうでなかったら他の場所も示す筈だ。

 まぁ、本拠地では無い所にゆうちゃんは居る可能性もあるが、俺みたいなやつがゆうちゃんを奪いに来る可能性も考えると相手はある程度の護衛が必要なはずだ。

 となると、ある程度の大きなところで守るのが良いだろう。

 なので俺はもうゆうちゃんは日本には居ないと予想した。

 何らかの理由で外国に渡ったと俺は考えている。

 じゃあそれはどこなのかと聞かれると俺は分からないとしか答えようが無くなる。

 コナーは世界中に居るとしか言っていないので、何処にそういった拠点があるのか分かるはずがない。

 コナーが言うには今人と通信出来ているのはアメリカ、ロシア、ドイツ、イタリア、中国の5カ国らしい。

 ここから近いのは中国とロシアだろう。

 2カ国ともかなりの軍事国家なのでその力を使って生き残っているのだろう。

 だからこそなんだか話が通じずに攻撃でもされてしまうかと考えてしまう。

 ロシアとかはダンジョンが現れてからは分からないが、戦争などをしていたし、中国からも様々な悪い噂を聞いていた。

 だからこそ、行くのなら別のところに行った方が良いかもしれない。

 しかし、まずどうやって行こうか。

 泳いでいくという手もある。

 が、津軽海峡を泳ぐだけでも過酷で時間がかかるものなのに更に長い距離を泳ぐというのは現実的ではないだろう。

 となると、船などを使うしかないだろう。

 少し気は引けるが、近くの港などから船をパクって行くべきだろう。

 しかし、それだけでは不十分だ。

 船だけを持ってたとて、目的地まで着くことは出来ない。

 まずそのレベルの距離を渡るには俺では技術不足だ。

 GPSなどを使えればいいのだが、もはや今普通に動いている機械など無いだろう。

 そのため、それを使う訳にもいかない。

 そこで俺は金髪男の事を思い出す。

 そういえばあの金髪男は能力を使って空高くまで飛び上がっていた。

 俺もそうして高く飛び上がり、宇宙空間まで行く勢いで高い所まで行けばどちらに進めばいいか分かるだろう。

 そんな事をしたら普通の人なら死んでしまうだろうが、俺なら体を治しながらそれをすることだってできる。

 俺だけできる裏技という訳だ。

 そこがどこなのかは世界地図などを見てどこなのかを確認すればいい。

 それなら行けるはずだ。

 そうと決まれば早く行動だ。

 この都市から少し行けば海に出るはずだ。

 そこから海岸沿いに進んでいけば船等も見つかるだろう。

 俺は海岸まで歩いていった。

 そういえば海は行くのが初めてだったかもしれない。

 行く機会なら何度もあったはずだ。

 だが、俺は行っていなかった。

 …………あれ? 何かがおかしい。

 俺はただ海に行くのが初めてだと思っただけなのに、その理由が俺の中では近くに海がなかったという事になっているのだ。

 そんなはずは無い。

 日本は島国のため大体のところでは少し行ったら海がある。

 俺の故郷だってそうだったはずだ。

 そう、俺の故郷は…………。

 …………やはり何かがおかしい。

 だが、何がおかしいのか分からない。

 俺は違和感を覚えつつも、一旦忘れる事にした。

 そして俺は海岸沿いを歩いていき、遂に少し大きめの船を見つける。

 漁船だろうか?

 近くに人影は見えない。

 死んでしまったのかはたまた何処かえへ逃げたのか。

 兎に角人が居ないのなら心残りなくパクれる。

 俺はその船に乗り込んだ。

 船の操縦方法は何故か何となく分かった。

 …………なにかのスキルの効果だろうか?

 船の操縦が出来るようになるスキル等手に入れた覚えは無いのだが…………。

 あ、あぁ、運搬様か!?

 運搬様はレベルが上がる事に連れてどんどんと能力は伸ばして行ったが、特に飛躍的な能力の伸びは見せていなかった。

 その時の名前が運輸と運送だった。

 その文字の意味は物を移動させるというものだ。

 それをするために乗り物の操縦が出来るようになるというのならば辻褄が合う。

 いやぁ、初めは微妙かと思ったがこのスキルは本当に有用なものになってくれた。

 俺は昔の先見の明の無さを恥じた。

 ともかく、俺は船を動かす事ができたので、そのまま目的地へと向かっていった。

 そう、中国へとだ。


「ん? まてまて、俺は中国には行かないぞ!?」


 俺はそう叫び中国の方向がある西側から北側へと舵を切ろうとするが、体は動かない。

 明らかに何かに操られている。

 俺の体は俺の憎悪が減るにつれてまた俺の中のナニカに支配されてしまった。

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