上 下
154 / 214

155話 過去へ4

しおりを挟む


 僕はそのノートを隅々まで読もうとする。

 そのノートには今から未来に起こることが事細かに書かれていた。

 僕はそれを見て直感的にこれを使えば晴輝君の助けになるかもしれないという事を察した。

 しかし、それを読もうとすることを未来の僕が止めた。


「ちょ、ちょっと! 何するのさ!」

「まぁまぁ、まだ話は終わっていないよ?」


 未来の僕はそう言う。

 そうだった、未来の僕がここにいれる時間は限られているんだった。

 ノートを読むことは未来の僕が帰ってからでも出来ることだ。

 僕は未来の僕の話を聞くの方が優先度が高いと判断し、未来の僕の話を聞くことにした。

 未来の僕は僕が聞こうとしている所を見て話し始めた。


「1つ、約束して欲しいことがあるんだ。それは、という事なんだ。」

「このノートを?」

「そう、出来れば複写したりして色んな僕に回して欲しいんだ。出来ればそれに手を加えて貰えると助かる。もし君が世界を、晴輝君を救えたとしてもまだ救えていない僕は沢山いるはずだ。その僕を助ける為にもそれだけは絶対にやって欲しいんだ。」


 そうか、この僕はじゃないんだ。

 あくまで並行世界の僕なんだ。

 だからこそ色んな僕がこのノートを繋ぐことによって、結果的に色んな僕が晴輝君を救う事が出来るという訳なのか。

 僕はそういう事ならと快く了承した。

 その様子を見た未来の僕は安堵したような表情を浮かべ、幸運を祈るよという一言を残し、そのまま消えた。

 恐らく未来に帰ったのだろう。

 それを見て僕はすぐさまノートを読み込む。

 そのノートには今の僕がもう経験した事から、まだ経験していないことまで事細かに書かれていた。

 少し違和感のある文章になっている所はあるが、そこはきっと色んな僕が添削をしたり付け足したりしている部分なのだろう。

 そして、たまにあったのが色んな僕の意見が別れるところだった。

 そこでは本当にその未来事で起こっている事が違ったのだろう。

 そこには何個かの選択肢が設けられており、その下に夥しい数の正の字が書かれており、その正の字によって進むページが違ったりしていた。

 未来は不確定すぎて色んな僕が色んな経験をしたのだろう。

 僕はそのノートを読み込む。

 そしてそのノートの内容で今の僕に使えそうな内容を他のノートに写したり、メモを取ったりしていく。

 このノートの信憑性が本当にあるのかははっきりいって分からないが、もうこれ以外に頼れるものは無い。

 そのノートを読み進むにつれて、晴輝君を助けられるかどうかは本当に運だという事が分かって行った。

 このノートによれば晴輝君が助かったケースはほとんど無い。

 晴輝君どころか世界が終わってしまっている所だって何個もあった。

 それは他でもないによって引き起こされる事らしい。

 そんな事信じられないが、読んでいくうちに僕の記憶とも合致して、その話が本当のように感じてしまう。

 まぁ、それを僕が止めればいい話だ。

 晴輝君を救う事が出来たら世界も救われるらしい。

 僕はそのノートを鞄に入れ、それだけを持って陽夏ちゃんが帰ってくるのを待った。

 陽夏ちゃんが鬼のダンジョンへと向かったのは分かっている。

 そしてそこから戻ってきているのも分かっている。

 僕は目を瞑り、陽夏ちゃんが帰ってきた未来を見た。

 陽夏ちゃんはあと数分後に帰ってくる。

 僕はその未来と今を重ねた。

 そして、陽夏ちゃんをを過去へと送る。

 すると、陽夏ちゃんが僕の目の前へと現れた。

 これは僕が過去へいく能力の応用で、その時間を過ごすというのをショートカット出来るんだ。

 それを使うことによって陽夏ちゃんは数分間ここまで来るという事をショートカットしてここまで来ることが出来た。

 陽夏ちゃんは当然困惑しているようだった。


「あれ!? コナー!? どうしてここに…………って、私なんでもうホテル街に居るの!?」

「僕の能力だよ、まぁ、転移能力みたいなものだね。それを使って陽夏ちゃんをここまで連れてきたんだ。」

「そんな事ができるのね…………。」


 陽夏ちゃんは唖然として僕の事を見ていた。


「あっ、そんな事よりも話さなきゃいけないことがあるのよ!」

「わかってるよ、未来を見たからね。もう内容は分かってる。」


 僕の未来視の能力は僕の記憶能力と合わさることによってある程度無制限に使えるようになっていた。

 なので、僕はその能力を時間短縮の為に使った。



「それで、陽夏ちゃんの情報と僕が集めた情報を考慮したら…………晴輝君はまだ助けられるよ。」

「本当!?」

「うん。」


 正直陽夏ちゃんが持ってきた情報は僕がノートを読んだ物にはほとんど書いていなかった情報だった。

 つまり、僕の世界には他の世界では分かっていなかった要素が分かっているという事になる。

 僕はまだ晴輝君を救えるかもしれない。


「帰ってきて突然で悪いけど、もう出発しよう。晴輝君の元へ。」


 僕達は晴輝君を救うため、晴輝君の元へと急いだ。

 





 

 
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

だって私は、真の悪役なのだから。

wawa
ファンタジー
目が覚めると赤ん坊。 転生先は何処か不明な乙女ゲームの世界。 でもはっきりわかっていることは、自分は間違いなく悪役だってことだけ。 金と権力にものを言わせ、思いのままに生きてみようを突き進む主人公は悪役令嬢リリー。 ※1 世界観は乙女ゲーム、ジャンルは恋愛ですが、そこに至るまでの道のりは長く遠く、主人公は恋愛脳ではありません。 ※2 主人公目線と第三者目線が発生します。 『小説家になろう』でも掲載しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

こどくなシード 異世界転移者の帰還道

藤原 司
ファンタジー
 目つきが悪く、口も悪いため高校では周りから誤解を受けやすい優月 輪(ゆうづき りん)。  いつもの学校からの帰り、リンは突如出現した穴に吸い込まれてしまう。 訳もわからないまま、吸い込まれた先の異世界で自分と同じ顔の聖剣の英雄と間違えられてしまい──?  目的は聖剣に魔王討伐。  苦難や葛藤、そして様々な経験をしながら、リンは元の世界への帰還を目指す。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...