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155話 過去へ4
しおりを挟む僕はそのノートを隅々まで読もうとする。
そのノートには今から未来に起こることが事細かに書かれていた。
僕はそれを見て直感的にこれを使えば晴輝君の助けになるかもしれないという事を察した。
しかし、それを読もうとすることを未来の僕が止めた。
「ちょ、ちょっと! 何するのさ!」
「まぁまぁ、まだ話は終わっていないよ?」
未来の僕はそう言う。
そうだった、未来の僕がここにいれる時間は限られているんだった。
ノートを読むことは未来の僕が帰ってからでも出来ることだ。
僕は未来の僕の話を聞くの方が優先度が高いと判断し、未来の僕の話を聞くことにした。
未来の僕は僕が聞こうとしている所を見て話し始めた。
「1つ、約束して欲しいことがあるんだ。それは、何があったとしてもこのノートを次の僕に繋げて欲しいという事なんだ。」
「このノートを?」
「そう、出来れば複写したりして色んな僕に回して欲しいんだ。出来ればそれに手を加えて貰えると助かる。もし君が世界を、晴輝君を救えたとしてもまだ救えていない僕は沢山いるはずだ。その僕を助ける為にもそれだけは絶対にやって欲しいんだ。」
そうか、この僕は僕の未来の僕じゃないんだ。
あくまで並行世界の僕なんだ。
だからこそ色んな僕がこのノートを繋ぐことによって、結果的に色んな僕が晴輝君を救う事が出来るという訳なのか。
僕はそういう事ならと快く了承した。
その様子を見た未来の僕は安堵したような表情を浮かべ、幸運を祈るよという一言を残し、そのまま消えた。
恐らく未来に帰ったのだろう。
それを見て僕はすぐさまノートを読み込む。
そのノートには今の僕がもう経験した事から、まだ経験していないことまで事細かに書かれていた。
少し違和感のある文章になっている所はあるが、そこはきっと色んな僕が添削をしたり付け足したりしている部分なのだろう。
そして、たまにあったのが色んな僕の意見が別れるところだった。
そこでは本当にその未来事で起こっている事が違ったのだろう。
そこには何個かの選択肢が設けられており、その下に夥しい数の正の字が書かれており、その正の字によって進むページが違ったりしていた。
未来は不確定すぎて色んな僕が色んな経験をしたのだろう。
僕はそのノートを読み込む。
そしてそのノートの内容で今の僕に使えそうな内容を他のノートに写したり、メモを取ったりしていく。
このノートの信憑性が本当にあるのかははっきりいって分からないが、もうこれ以外に頼れるものは無い。
そのノートを読み進むにつれて、晴輝君を助けられるかどうかは本当に運だという事が分かって行った。
このノートによれば晴輝君が助かったケースはほとんど無い。
晴輝君どころか世界が終わってしまっている所だって何個もあった。
それは他でもない晴輝君によって引き起こされる事らしい。
そんな事信じられないが、読んでいくうちに僕の記憶とも合致して、その話が本当のように感じてしまう。
まぁ、それを僕が止めればいい話だ。
晴輝君を救う事が出来たら世界も救われるらしい。
僕はそのノートを鞄に入れ、それだけを持って陽夏ちゃんが帰ってくるのを待った。
陽夏ちゃんが鬼のダンジョンへと向かったのは分かっている。
そしてそこから戻ってきているのも分かっている。
僕は目を瞑り、陽夏ちゃんが帰ってきた未来を見た。
陽夏ちゃんはあと数分後に帰ってくる。
僕はその未来と今を重ねた。
そして、陽夏ちゃんをを過去へと送る。
すると、陽夏ちゃんが僕の目の前へと現れた。
これは僕が過去へいく能力の応用で、その時間を過ごすというのをショートカット出来るんだ。
それを使うことによって陽夏ちゃんは数分間ここまで来るという事をショートカットしてここまで来ることが出来た。
陽夏ちゃんは当然困惑しているようだった。
「あれ!? コナー!? どうしてここに…………って、私なんでもうホテル街に居るの!?」
「僕の能力だよ、まぁ、転移能力みたいなものだね。それを使って陽夏ちゃんをここまで連れてきたんだ。」
「そんな事ができるのね…………。」
陽夏ちゃんは唖然として僕の事を見ていた。
「あっ、そんな事よりも話さなきゃいけないことがあるのよ!」
「わかってるよ、未来を見たからね。もう内容は分かってる。」
僕の未来視の能力は僕の記憶能力と合わさることによってある程度無制限に使えるようになっていた。
なので、僕はその能力を時間短縮の為に使った。
「それで、陽夏ちゃんの情報と僕が集めた情報を考慮したら…………晴輝君はまだ助けられるよ。」
「本当!?」
「うん。」
正直陽夏ちゃんが持ってきた情報は僕がノートを読んだ物にはほとんど書いていなかった情報だった。
つまり、僕の世界には他の世界では分かっていなかった要素が分かっているという事になる。
僕はまだ晴輝君を救えるかもしれない。
「帰ってきて突然で悪いけど、もう出発しよう。晴輝君の元へ。」
僕達は晴輝君を救うため、晴輝君の元へと急いだ。
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