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117話 世界情勢

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 部屋で佐々木と話していると扉が開き、陽夏とコナーが入ってきた。



「晴輝君! ごめんごめん、放ったらかしにしてしまって、みんなと話してたら晴輝君がいなくなっていたかとに気づかなかったんだ。」

「あぁ、大丈夫だぞ、佐々木にここまで連れてきてもらったから。」

「そうだったんだね、ありがとう佐々木君。」

「いいってことよ、お前らの助けになるんだったらお安いものさ。」


 佐々木は俺達がダンジョンを無効化したことに多大な恩を感じているようだ。

 なんせ佐々木はウルフに大切な人を殺されてしまっていたらしい。

 本当は自分でその仇を討ちたかったが、佐々木の能力はどちらかと言うと戦闘と言うよりは諜報などに向いており、自分から何かをする事は出来なかったので、その仇を討ってくれた俺達に感謝しているらしい。

 こう聞くとやはりゴブリンやウルフによる被害が甚大だということが分かる。

 佐々木に俺がゆうちゃんを生き返られるために頑張っている事を伝えると、佐々木は快く応援してくれた。

 しかも何か情報があれば教えると約束してくれた。


「じゃ、俺はこの辺で仕事に戻るぜ、お前らも頑張れよ!」

「うん、ありがとう。」


 そう言うと佐々木は部屋から出ていった。

 あいつは良い奴だな。

 何か少し話しただけで好きになってしまう恋愛脳みたいな人みたいな感じもしなくはないが、まぁ、引きこもりだったわけだししょうがない。

 佐々木が去った後は3人でこれからの事を話し合った。


「それで、今度はここから少し行ったところのオークのダンジョンにいかないかい? あそこならゴブリンのダンジョンとそこまで変わらないから最適だと思うんだけど。」

「私はいいと思うわ。あそこは行ったことあるけど、今の私達なら楽勝だと思うわ。」

「うん、俺はダンジョンの事についてはさっぱりだからお前達に任せる。まぁ、何かゆうちゃんを生き返らせる為のものが手に入る場所があるならそこにして欲しいがな。」


 陽夏やコナーは色んな人と関わりがあり、色んな情報を持っている。

 世界中の生存者と繋がっている様子もみられるし、2人はかなり今の状況に精通しているだろう。

 対して俺はこのダンジョンが現れた世界でもなお家に引きこもって居るので、情報のじの字も知らない。

 なのでそういう事に関しては2人に任せるしかない。

 そう言えば今世界はどんな風になっているんだろう。


「なぁ、今の世界情勢とかどうなってるんだ?」

「世界情勢?」

「えっと、今はこの国がどうなっているとかそういうやつだ。」

「あぁ、そういう事ね。今晴輝君はどこまで知っているんだい?」

「あー、基本的なものは全て知らないって思ってもらっていい。」

「…………分かった。じゃあ、落ち着いて聞いて貰えるかい?」

「……………あぁ。」


 コナーは俺が何も知らないと分かると真剣な顔をした。

 そんなに今の世界情勢は悪いのだろうか。


「今通信出来ている国はアメリカ、ロシア、ドイツ、イタリア、中国の5カ国だけだ。まぁ、通信できていないだけで確定という訳では無いけど、今ある程度の人間が生き残れている国は日本も含め6カ国位だね。人類の少なくとも9割はもう死んでいるらしい。」

「…………そうなの、か。」


 もうそんなに被害が出ているのか。

 まぁ、考えてみればおかしくもない事だ。

 あのゴブリンですらとんでもない被害が出ている。

 ならば更に強いモンスターが出てくるダンジョンが出来た場所はここよりも確実に被害が大きいと言えるだろう。


「…………思ったよりも落ち着いてるね、てっきりもっと混乱するものかと思っていたよ。」

「まぁな、これでもそういうファンタジーな物語は腐るほど読んできたからな。」


 だからといってそれが現実に起こるなんて思って見てなかったけどな。


「それ以外にも国じゃないけど至る所でカルト集団みたいなのが生まれているんだ。こんな世界になった以上宗教に頼らないと狂ってしまうからね。そんな団体が増えたせいで滅んだところも沢山あるらしい。」


 カルト集団か、確かにこんな世界なら居るに決まっているよな。


「それでも人類はまだ諦めずにダンジョンを攻略していってるらしいんだ。そしてこの前遂に他のところでもちらほらとダンジョンが無力化さているらしいんだ。機械の部屋の話はまだ出ていないけど、これからまた新たな情報が来ると思う。」


 やはり人類はまだモンスターに対抗しているんだな。

 というかダンジョンを無効化出来たなんて凄いな。

 俺達は俺という存在が常に起きていられるというスキルを持っていた為ゴリ押しで攻略出来たが、他のところもそんなようなスキルでも持っていたのだろうか。


「世界情勢はこんな感じかな。僕はとりあえず今うちで手に入った情報を共有するから、申し訳ないけど次のダンジョン攻略は少し待ってくれないかい?」

「あぁ、大丈夫だ。」


 世界情勢は分かったが、なんというか絶望が明確になったと言った感じだったな。

 まぁ、その中に微かな希望は見いだせた。

 俺も頑張ろう。
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