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94話 夢の石とは
しおりを挟む夢の石か。
何ともメルヘンチックなネーミングだな。
「この石は触れた人に特殊な魔力を送り込んで、特定のスキルのレベルを1レベルあげるものみたいだね。まぁ、君達はもう使ってるから知ってると思うけどね。」
「まぁそうだな。」
「これには特にデメリットみたいなものは殆ど無いし、全然使っていいものだと思うよ。唯一あるとしたらスキルが昇格しちゃったら使えなくなることくらいかな? まぁ、そこまでレベルが上げられるだけで大分強いけどね。」
確かに俺みたいに箱を開けるだけでものすごい勢いでスキルを手に入れられるような人でなければそこまでレベルが上がるだけだとしても強いのだろう。
「いやー、やっぱり魔力って奥深いよねぇ、こうやって魔力が固体として出現した例はこれが初めてなんだ。これが魔力を研究している人達が知ったらびっくりするだろうなぁ、まぁ、もう全世界で数十人しか残ってないんだけどね。」
そう言ってコナーは遠い目をする。
そうか、やはりもうそこまでの人は残っていないのか。
それでも人類の多くが死に絶えてもなおそういう研究をし続けてくれている人が居るというのは何と言うか元気づけられるな。
まだ人類は復興の余地を残しているという感じがする。
「それで、残った石は本当に貰っちゃっても大丈夫なのかい? 特に報酬とかを出せる訳じゃないけど…………。」
「あぁ、大丈夫だ。この街の人達には世話になってるからな。」
「そっか…………ありがとう。」
コナーはさっき大泣きして涙腺が脆くなっているのか、また泣きそうになるが、必死に抑えていた。
俺はコナーに全ての夢の石と、全てのアイテムを譲った。
特に俺達がそれを持っていてももうどうせ使えないものたちだ。
俺達のスキルはもう軒並み昇格しているため使えないし、薬だってどうやって使うのかも分からないし、分かったとしてもこのくらいの量があるんだったら殆ど使えないだろうし、譲った方が結果的に得だろう。
そこからのコナーの行動は早く、その顔はもう優秀な指導者の顔をしていた。
さっきまではあんなに泣き叫んでいたというのに、やはりコナーは優秀なのだろうな。
流石の切り替えとしかいいようがない。
「じゃあ、ここからちょっと僕は忙しくなるんだけど…………何か伝える事はあるかい? …………というかあるよね? 君達の顔を見てたら分かるよ。」
「…………あぁ、これからまた他のダンジョンに行こうと思うんだ。」
「…………やっぱりね。」
コナーは呆れ顔でこちらを見る。
やめてくれ、そんな目で見ないでくれ。俺はちゃんと休んでから行こうとしたんだ。
だが、それを断ったのは今そこで呑気に寝てる陽夏だった。
陽夏も疲れているだろうに、そんな事よりも好奇心が勝っているらしく、すぐに行くと言って聞かなかったのだ。
しかしまぁ、今は実際こうやって寝ている訳だし、疲れが無いわけでは無いだろう。
とりあえず今はこのまま寝かせておこうと思う。
「もう、晴輝君はともかく陽夏ちゃんは疲労も溜まるだろうに…………今回もう行きたいって言ったのも陽夏ちゃんなんでしょ?」
「あぁ、分かってるんだな。」
「そりゃそうだよ、晴輝君がそんな強行するとは思えないからね。本当に陽夏ちゃんは困った子だよ。」
そう言いつつもコナーの目は優しかった。
コナーは時々本当に29歳らしい………いや、それ以上の年齢に思わせるような大人っぽい表情をする。
本当に俺と同年代なのかと疑ってしまう程だ。
体はこんなに小さくて可愛らしいのに…………。
「…………晴輝君? 何か…………変な事は考えてないかい?」
「…………おぅ。」
いやこっわ。
「まぁ、ともかく晴輝君は年上なんだからちゃんと陽夏ちゃんを抑えてよ?」
「あぁ、勿論。」
「そうだ、ちょっと待ってね。」
コナーは俺があげた薬のうちから1つを取り出した。
「これこれ、睡眠薬なんだけど、寝てる時に疲れを癒して、体力まで付けちゃうつよつよな薬だから陽夏ちゃんが起きたら飲ませてあげて。パッと見じゃ分からないけど凄く疲労が溜まってるみたいだからさ。」
「わかった。」
やっぱり薬の中にはいい効果の物もあったのか。
持って帰ってきてよかったな。
「それと、1つ晴輝君に頼みたい事があるんだ。」
頼みたいこと? なんだろう。
「えっと、理斗君…………えっと、あの死んじゃった人達をゾンビに変えてた男の事覚えてる?」
「あぁ、ゾンビ男の事か。」
ゾンビ男の事は覚えてる。
この前のモンスターの襲撃があった後は逃げられてしまった奴だ。
まだ生きていた人も殺してゾンビに変えたりと極悪非道なことをやっていたクソ野郎だ。
あの後はすぐにダンジョンに言ってしまったので見つけ出すことは出来なかったが、見つかったのだろうか。
「あの子が今君に謝りたいみたいなんだ。」
「え? どういう事だ? というか見つかったのか?」
「あぁ、まぁ、詳しい事は歩きながら話そう。」
コナーはそのまま歩き出してしまったので、俺はわけも分からずついて行った。
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