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61話 帰宅
しおりを挟む俺と陽夏は出会ったゴブリンを次々と倒しながら俺の家へと進んで行った。
俺と陽夏レベルになるとそこら辺のゴブリンに遅れを取るほど弱くは無い。
ほとんどのゴブリンをほぼ一撃で倒していった。
ずっとこの街に居るはずなのにここら辺の道を歩いてもほとんど見覚えの無い道ばかりだ。
まぁ、分かりやすい道だから迷う事は無いんだけどな。
そうやっているうちに俺達は目的の俺の家に着いた。
陽夏と俺は家に入ろうとした。
しかし、そこで俺は重要な事に気付く。
それは、俺に家に変な物があると言うことだ。
今の時代本やビデオなどはほとんど電子化されていて、スマホやパソコンを使うだけで見る事が出来るが、それでもやはり俺も男だ。少なからずそういった物はある。
別にそれが何だという話ではあるのだが、今からそれを陽夏に見られるとこれからまぁまぁ長い時間を部屋で過ごすのが非常に気まずくなってしまう。
これはまずい。
「ちょ、ちょっと待っていてくれ!」
俺は陽夏を外に残して家の中に急いで入った。
そして、棚の中やベットの傍などに無造作に置いてあったそういったもの達を集めた。
さて、ここからだ。
この部屋はそこまで広くは無いし、隠す場所など無いに等しい。
仕方ない、隣のお姉さんの部屋にこいつらは避難させておこう。
というか、もうこいつらを見る機会も無いだろうし後で燃やしてしまってもいいな。
今はそれをしている余裕も無いし、とりあえずは隣の部屋に置いておこう。
俺は隣の部屋の玄関に元相棒達を投げ捨てた。
これでよし、じゃあ、陽夏を呼ぶか。
俺は陽夏を呼ぶために外に出た。
「おーい、陽夏、もう大丈夫だ!」
「あ、用事は終わったの? あ、まさか何かやましいものでも隠してたの?」
「い、いやぁ? 別にそんな事は無いぞ?」
くっ、鋭いな。やましいものじゃ無くてやらしいものを隠していたんだが、いい所を着いてくる。
「ま、まぁ、そんな事は良いだろう。とりあえず中に入ろう。」
かなり雑に話を変えたが、陽夏はにんまりとしただけで特にそれ以上は詮索をしてこなかった。
俺と陽夏は一緒に部屋に入った。
「っ!?」
陽夏は家に入った瞬間、刀に手をかけた。
あぁ、そうか、そういえば俺の家には魔力が満ちてるとか何とかでダンジョンの中みたいな感じになっていたんだったな。
やっぱり陽夏も分かってしまうのか。
俺は何一つ感じ取れないんだがな。
「晴輝、これはどうゆう事!?」
「まぁまぁ、落ち着いてくれ。これが俺の強さの秘訣だからさ。とりあえず入ってみてくれ。」
俺は先に部屋に入っていく。
陽夏はそれを見て、恐る恐る部屋に入ってきた。
俺は部屋に置いてあった箱を取って陽夏に見せた。
「なにこれ?」
「これが俺の強さの秘訣だ。」
陽夏は箱を不思議そうに見た。
「これが晴輝の秘訣? そんな大層なものには見えないんだけど…………。」
陽夏は怪訝そうな様子を見せた。
そんな陽夏に俺は箱でどのように強くなったのかを俺がかっこ悪い…………特にネムちゃんとの事辺りは省いて説明した。
試しに箱を開けて見せた時の陽夏の驚いた顔を見れただけでもここに連れてきて正解だと思った。
「へぇー、そんな事があったのね。ねぇ、試しに私もその箱開けてみてもいい?」
「あぁ、いいぞ。」
そこまで長期間貸すことは出来ないが、少し使わせるくらいは良いだろう。
俺は陽夏に箱を手渡した。
俺のスキルで鍵の番号は分かるので陽夏にそれを伝える。
箱を渡された陽夏は嬉々として箱を開け始めた。
「あれっ? 動かないんだけど…………。」
陽夏はダイヤルをなんとかして開けようとするが、ピクりものしていない。
「んー、これは晴輝しか使えないのかもね。」
そういえばコナーも使えていなかったな。
まさか本当に箱は俺にしか使えないのか?
それだったら俺が箱の事を頑張ってバレないようにしていたのは無駄な事だったのか…………。
いや、人間は欲深い生き物だ。
どうせ俺しか使えないと言ってもそれを信じずに俺が独占したいがための嘘だと思って盗もうとするだろう。
まぁ、これからも不特定多数の人達には話さないようにしよう。
「じゃあ、俺はまたスキルを獲得するために箱を開けるんだが、陽夏はどうするんだ?」
「んー、まぁ、その箱とかを地下に運んだり、部屋を掃除したりしようかな。」
おぉ、ありがたい。
正直俺の部屋は荒れ放題だし、掃除してもらえるのは助かる。
「じゃあ、お礼と言ってはなんだが、今ある食材とかは好きに食べてくれ。まぁ、主に缶詰とかだけどな。えっと、布団は…………どこかから取ってこようか?」
「あ、いや、晴輝の布団を借りるわ。」
「え、けど汚いだろ?」
「んー、別に気にしないから晴輝の布団を借りるわ。」
「そうか…………。」
まぁ、陽夏が良いならそれでいいか。
俺はとりあえずコンロの上に座った。
「え、何をしてるの?」
「ん? いや、箱を開けるための準備だが?」
「ま、まさか…………。」
俺はそのままコンロの火を付けた。
「ぐっ!?」
やはりこれはいつまで経っても慣れないな。
この程度の炎なら快治を使い続ける事でへっちゃらなのだが、痛い事に変わりは無い。
「だ、大丈夫!?」
「あ、あぁ大丈夫だ。陽夏は俺には構わないで掃除をしてくれ。」
「け、けど!?」
「ゆうちゃんを助ける為には必要な事なんだ! その為ならこの程度平気だ!」
「…………ゆうちゃんね…………わかったわ。」
陽夏は表情を暗くした。
心配してくれているのだろう。
陽夏にはできるだけ心配はかけたくないが、これは仕方の無いことだ。
俺はそのまま箱を開け始めた。
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