上 下
20 / 214

20話 バレた

しおりを挟む
 
 俺はコナーさんが落ち着いた後、取り敢えずコナーさんが出て来た部屋で話す事になった。

 その部屋は特に豪華な装飾などがある訳ではなく、なんと言うか、普通の部屋だった。

 俺たちはソファーに向かい合って座る。


「さ、さっきは済まなかった。つい興奮してしまってね。」


 コナーさんが頬を赤らめる。

 さっきの事もあるせいか、俺も意識してしまって、俺の頬も熱くなっていくのを感じる。


「大丈夫ですよ。」

「そうか。ありがとう。それで本題なんだが…………。」


 俺は今から力の原因を問われるだろう。

 俺はコナーさんが落ち着くまでの間その事についてずっと考えていたのだが、良い案が浮かばなかった。

 こんな力、偶然手に入れたと言っても嘘くさいし、戦ってスキルを手に入れたのだったら健康体などのスキルが手に入る事は無いはずだ。

 スキルが手に入る時はその時にやっていた事がスキルになる事が多い。

 これは陽夏から聞いた話と俺の実体験から導き出した考察だ。

 戦っている最中に健康体になろうなんておかしなはなしだからな。

 それに多分この期間中に戦い続けている人は少なからず居るだろう。

 だが、コナーさんはこんな人材は見たことがないと言っていたため、俺ほどスキルを沢山持っている人は居ないのだろう。

 なので、ずっとダンジョンに潜り続けてましたという言い訳は出来ないわけだ。

 これは困った。


「本題はもう君も勘づいていると思うけど、君の力についてだ。僕が知っている人で1番スキルを沢山持っている人でも8種類が最大だった。なのに君はスキルを13種類も持っていた。しかもほぼ全部が高レベルだったり上位スキルだったりしている。君は何故そんなにスキルを持っているんだい?」

「やっぱりその事についてですよね…………。」


 俺の予感は見事的中してしまった。

 俺は納得のいく返答が考えついていないため、答えることが出来なかった。

 気まずい沈黙だ。

 2人しか居ない部屋と言うだけでも気まずいのに、このピリッとした空気感だ。気まずいに決まっている。


「あっ、いや、別に君が教えたくないと言うなら別にいいんだ。君が不利益を被ったり、嫌な思いをするのを僕は望んで居ない。」


 コナーさんは悲しそうに目を伏せる。

 うぅ、そんな顔をされたら罪悪感が凄いんだよ。

 俺は考えてしまう。この罪悪感から逃れられるのなら。

 ずっと人に隠し続けなければいけないという苦痛から逃れられるのなら。

 それなら、コナーさんだけなら話してもいいんじゃないかと思ってしまったのだ。

 1度そう考えてしまうとその考えが俺の頭を支配した。

 所詮俺は偽善者だ。

 コナーさんを喜ばせたいからだとか、それが人の為になるからという理由では動けない。

 だが、自分の罪悪感を無くすという自分の為なら動けてしまう自分が嫌になる。


 だが、それでいい。 

 利用されるくらいなら利用しろ。

 俺は結局コナーさんに一部を話す事にした。

 だが、その前に保険を掛けておこう。


「分かりました。お話しましょう。でも、その前に一つだけ約束して下さい。この話をして、僕の不利益になるような事はしないでください。それだけを守ってくれるのなら僕は話します。」

「分かった。もとより君に不利益になるような事はしないつもりだった。それに、君が何らかの物を使って強くなっているのだとしたらそれを僕達が取り上げる権利など無い。安心してくれ。」


 コナーさんはそう言ってくれた。

 これで俺は話すことが出来る。


「じゃあ、話しますね。」


 俺はコナーさんに大雑把な経緯を説明した。勿論ネムちゃんにこっぴどく振られたことなどは省いた。

 コナーさんは俺が話す度に目を輝かせたり、思案したりなどとコロコロと表情を変えていて面白かったのは秘密だ。

 話を聞き終わったあと、コナーさんは表情を切り替え、神妙な面持ちで喋りだした。


「君のその力の源はその謎の箱って事なんだよね?」

「そうですね。」

「で、その箱は今どこにあるの?」

「家ですね。」

「え。セキュリティガバガバすぎない?流石にそれはちょっと引くよ…………。」


 確かに…………。あんな場所だし値段の無さそうな箱だから盗まれるなんて考えていなかった。


「まぁ、それはとりあえず良いとしてさ、ひとつ頼みたいんだけど、その箱僕にも開けさせてくれないかな?」


 来た。絶対に来ると思っていた。そんな便利アイテムがあるなら使いたいよな。

 正直俺はかなり迷っている。この箱の力が他の人にも渡ったとしても、俺以上に早く開けられるやつは居ないだろう。

 だから、取り上げるコナーさん位には使わせてもいい気がするのだ、しかし、俺の優位性は必ず確保しておきたい。


「箱を開けたいなら条件があります。」

「いいよ。なんでも呑むよ。」

「その条件は、僕が許可しない限りコナーさん以外の人には使わせないということと僕が見ているところでだけ使うということです。」

「え、そんな程度で良いのかい? てっきり物凄いお金を請求されたりもっと厳しい条件かと思ってたよ。」


 コナーさんは驚いた様子でそう言った。

 俺的にはそこまで優しくしたつもりは無いのだが、優しい条件と取られてしまったようだ。

 多分俺はコナーさんが箱を防衛者全体の戦力向上のために使いたいと思っていると思っていたので、コナーさんにしか使わせないという条件が厳しいと感じだのだが、コナーさん的にはそういったことは考えていない様だ。


「じゃあ、条件を呑むという事ですね。分かりました。」

「交渉成立だね! で! で!! いつ使わせてくれるんだい? もう楽しみすぎて堪らないんだよ!」

「いつでもいいですよ。今から家に帰るのでそれからならいつでも。」


 別に俺はやることも無いしな。


「本当かい!? よし! 行こう! 今すぐに!!」


 コナーさんは子供のようにはしゃいだ。これだけ見ると本当に子供なんだが、本当は何歳なんだろう。


「あ、そうだ、晴輝君さっきから敬語使ってるけど、同い年だし使わなくてもいいよ!」

「え。」


 コナーさんが、俺と同い年? という事はあの顔で20代後半?

 俺が頭にはてなマークを浮かべているとコナーさんはこの一瞬すらも惜しいかのような機敏な動きでドアへと走り出した。


「それじゃあ、レッツゴー!」

「ちょ、ちょっと待って!」


 硬直した脳を無理やり働かせ、俺はコナーさんを追いかけて行った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~

暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。  しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。 もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ

柚木 潤
ファンタジー
 実家の薬華異堂薬局に戻った薬剤師の舞は、亡くなった祖父から譲り受けた鍵で開けた扉の中に、不思議な漢方薬の調合が書かれた、古びた本を見つけた。  そして、異世界から助けを求める手紙が届き、舞はその異世界に転移する。  舞は不思議な薬を作り、それは魔人や魔獣にも対抗できる薬であったのだ。  そんな中、魔人の王から舞を見るなり、懐かしい人を思い出させると。  500年前にも、この異世界に転移していた女性がいたと言うのだ。  それは舞と関係のある人物であった。  その後、一部の魔人の襲撃にあうが、舞や魔人の王ブラック達の力で危機を乗り越え、人間と魔人の世界に平和が訪れた。  しかし、500年前に転移していたハナという女性が大事にしていた森がアブナイと手紙が届き、舞は再度転移する。  そして、黒い影に侵食されていた森を舞の薬や魔人達の力で復活させる事が出来たのだ。  ところが、舞が自分の世界に帰ろうとした時、黒い翼を持つ人物に遭遇し、舞に自分の世界に来てほしいと懇願する。  そこには原因不明の病の女性がいて、舞の薬で異物を分離するのだ。  そして、舞を探しに来たブラック達魔人により、昔に転移した一人の魔人を見つけるのだが、その事を隠して黒翼人として生活していたのだ。  その理由や女性の病の原因をつきとめる事が出来たのだが悲しい結果となったのだ。  戻った舞はいつもの日常を取り戻していたが、秘密の扉の中の物が燃えて灰と化したのだ。  舞はまた異世界への転移を考えるが、魔法陣は動かなかったのだ。  何とか舞は転移出来たが、その世界ではドラゴンが復活しようとしていたのだ。  舞は命懸けでドラゴンの良心を目覚めさせる事が出来、世界は火の海になる事は無かったのだ。  そんな時黒翼国の王子が、暗い森にある遺跡を見つけたのだ。   *第1章 洞窟出現編 第2章 森再生編 第3章 翼国編  第4章 火山のドラゴン編 が終了しました。  第5章 闇の遺跡編に続きます。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...