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20話 バレた
しおりを挟む俺はコナーさんが落ち着いた後、取り敢えずコナーさんが出て来た部屋で話す事になった。
その部屋は特に豪華な装飾などがある訳ではなく、なんと言うか、普通の部屋だった。
俺たちはソファーに向かい合って座る。
「さ、さっきは済まなかった。つい興奮してしまってね。」
コナーさんが頬を赤らめる。
さっきの事もあるせいか、俺も意識してしまって、俺の頬も熱くなっていくのを感じる。
「大丈夫ですよ。」
「そうか。ありがとう。それで本題なんだが…………。」
俺は今から力の原因を問われるだろう。
俺はコナーさんが落ち着くまでの間その事についてずっと考えていたのだが、良い案が浮かばなかった。
こんな力、偶然手に入れたと言っても嘘くさいし、戦ってスキルを手に入れたのだったら健康体などのスキルが手に入る事は無いはずだ。
スキルが手に入る時はその時にやっていた事がスキルになる事が多い。
これは陽夏から聞いた話と俺の実体験から導き出した考察だ。
戦っている最中に健康体になろうなんておかしなはなしだからな。
それに多分この期間中に戦い続けている人は少なからず居るだろう。
だが、コナーさんはこんな人材は見たことがないと言っていたため、俺ほどスキルを沢山持っている人は居ないのだろう。
なので、ずっとダンジョンに潜り続けてましたという言い訳は出来ないわけだ。
これは困った。
「本題はもう君も勘づいていると思うけど、君の力についてだ。僕が知っている人で1番スキルを沢山持っている人でも8種類が最大だった。なのに君はスキルを13種類も持っていた。しかもほぼ全部が高レベルだったり上位スキルだったりしている。君は何故そんなにスキルを持っているんだい?」
「やっぱりその事についてですよね…………。」
俺の予感は見事的中してしまった。
俺は納得のいく返答が考えついていないため、答えることが出来なかった。
気まずい沈黙だ。
2人しか居ない部屋と言うだけでも気まずいのに、このピリッとした空気感だ。気まずいに決まっている。
「あっ、いや、別に君が教えたくないと言うなら別にいいんだ。君が不利益を被ったり、嫌な思いをするのを僕は望んで居ない。」
コナーさんは悲しそうに目を伏せる。
うぅ、そんな顔をされたら罪悪感が凄いんだよ。
俺は考えてしまう。この罪悪感から逃れられるのなら。
ずっと人に隠し続けなければいけないという苦痛から逃れられるのなら。
それなら、コナーさんだけなら話してもいいんじゃないかと思ってしまったのだ。
1度そう考えてしまうとその考えが俺の頭を支配した。
所詮俺は偽善者だ。
コナーさんを喜ばせたいからだとか、それが人の為になるからという理由では動けない。
だが、自分の罪悪感を無くすという自分の為なら動けてしまう自分が嫌になる。
だが、それでいい。
利用されるくらいなら利用しろ。
俺は結局コナーさんに一部を話す事にした。
だが、その前に保険を掛けておこう。
「分かりました。お話しましょう。でも、その前に一つだけ約束して下さい。この話をして、僕の不利益になるような事はしないでください。それだけを守ってくれるのなら僕は話します。」
「分かった。もとより君に不利益になるような事はしないつもりだった。それに、君が何らかの物を使って強くなっているのだとしたらそれを僕達が取り上げる権利など無い。安心してくれ。」
コナーさんはそう言ってくれた。
これで俺は話すことが出来る。
「じゃあ、話しますね。」
俺はコナーさんに大雑把な経緯を説明した。勿論ネムちゃんにこっぴどく振られたことなどは省いた。
コナーさんは俺が話す度に目を輝かせたり、思案したりなどとコロコロと表情を変えていて面白かったのは秘密だ。
話を聞き終わったあと、コナーさんは表情を切り替え、神妙な面持ちで喋りだした。
「君のその力の源はその謎の箱って事なんだよね?」
「そうですね。」
「で、その箱は今どこにあるの?」
「家ですね。」
「え。セキュリティガバガバすぎない?流石にそれはちょっと引くよ…………。」
確かに…………。あんな場所だし値段の無さそうな箱だから盗まれるなんて考えていなかった。
「まぁ、それはとりあえず良いとしてさ、ひとつ頼みたいんだけど、その箱僕にも開けさせてくれないかな?」
来た。絶対に来ると思っていた。そんな便利アイテムがあるなら使いたいよな。
正直俺はかなり迷っている。この箱の力が他の人にも渡ったとしても、俺以上に早く開けられるやつは居ないだろう。
だから、取り上げるコナーさん位には使わせてもいい気がするのだ、しかし、俺の優位性は必ず確保しておきたい。
「箱を開けたいなら条件があります。」
「いいよ。なんでも呑むよ。」
「その条件は、僕が許可しない限りコナーさん以外の人には使わせないということと僕が見ているところでだけ使うということです。」
「え、そんな程度で良いのかい? てっきり物凄いお金を請求されたりもっと厳しい条件かと思ってたよ。」
コナーさんは驚いた様子でそう言った。
俺的にはそこまで優しくしたつもりは無いのだが、優しい条件と取られてしまったようだ。
多分俺はコナーさんが箱を防衛者全体の戦力向上のために使いたいと思っていると思っていたので、コナーさんにしか使わせないという条件が厳しいと感じだのだが、コナーさん的にはそういったことは考えていない様だ。
「じゃあ、条件を呑むという事ですね。分かりました。」
「交渉成立だね! で! で!! いつ使わせてくれるんだい? もう楽しみすぎて堪らないんだよ!」
「いつでもいいですよ。今から家に帰るのでそれからならいつでも。」
別に俺はやることも無いしな。
「本当かい!? よし! 行こう! 今すぐに!!」
コナーさんは子供のようにはしゃいだ。これだけ見ると本当に子供なんだが、本当は何歳なんだろう。
「あ、そうだ、晴輝君さっきから敬語使ってるけど、同い年だし使わなくてもいいよ!」
「え。」
コナーさんが、俺と同い年? という事はあの顔で20代後半?
俺が頭にはてなマークを浮かべているとコナーさんはこの一瞬すらも惜しいかのような機敏な動きでドアへと走り出した。
「それじゃあ、レッツゴー!」
「ちょ、ちょっと待って!」
硬直した脳を無理やり働かせ、俺はコナーさんを追いかけて行った。
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