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プロローグ

電車の中で

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中尾里奈はとある金曜日の朝、勤務先の病院に向かうべく、電車に乗っていた。朝の当番であったため、朝7時前の電車に乗っていた。病院から最寄りの駅まであと一駅手前の駅からたった300メートルほどのところで、電車が急停止した。そして、社内の携帯電話がけたたましく鳴り響いた。それから間もなく、縦揺れの地震が電車を襲った。あたりのハイヒールの女性がよろめき、中には転倒する者もいた。里奈はスニーカー通勤であったため、吊革にしっかりとつかまりさえすればバランスを崩すことは無かった。間もなく車掌から地震の安全確認のため、しばらく運転が見合わせられることが告げられた。この時彼女の服装は、職場で白衣を重ね着さえすれば働けるような、白いブラウスと黒いレギンスパンツであった。調剤薬局だと、薬剤師の服装はボトムに関して、スカートやワイドパンツなどファッショナブルであるが、病院薬剤師の仕事は薬局よりも激務であるから簡素になるほかない。
服装は楽であったものの彼女には一つの憂いがあった。電車に乗る直前から尿意を覚えていたことであった。駅でトイレに行こうとしたものの、いつもより一つ早い電車に乗れたためどうせならより病院に早くついて清潔なお手洗いで済ませようと考えていたからだ。
電車は一時間たっても動かない。彼女は社会人になって4年目、高校を卒業して現役で薬学部に入りストレートで卒業し病院に入職した。周囲からも信頼されている。彼女が病院に電話をすると車通勤の同僚が彼女のカバーをするという事で解決されていた。
仕事のことは解決したが高まる尿意、レギンスパンツが下半身を圧迫する感じがより強く感じられた。もちろん彼女は仕事の最中に我慢をすることもあったが、今回はかなりの頑張りを強いられていた。彼女の横にいる女性社員は足をクロスさせ、その場で足踏みをする。コツコツというヒールの響きが里奈にも感じられていた。よく見ると息を荒くしてカバンでスカートの前の部分を隠しながら手で押さえている。彼女もかなり我慢をしているようだ。ピンクのひざ丈ほどのスカートをはいた里菜とは対照的なキラキラとした女性だ。
電車に缶詰になり2時間もすると電車はようやく動き出し、病院の最寄りの駅にたどり着いた。里奈は尿意というよりも鈍痛に近いものを感じていた。電車のドアが開くと、一斉に人が出ていく。里奈ももちろんその駅で降りた。彼女はピンクのスカートをはいた女性の様子が気になっていた。ピンク色のスカートをはいた女性はするっと素早く電車から降りた。対向式のホームで病院側に近いホームには多目的トイレしかない。駅のホームは電車に乗る人でごった返しており、対側ホームへ行くことも容易ではない。ただ里奈が多目的トイレを見ると、並んでいるのはピンク色のスカートをはいている彼女だけだった。尿意が限界のためか、体をかがめて耐え忍んでいたが、そこに待っていたのは悲劇だった。
ピンクのスカートの後ろを湿らせながら彼女は力尽きた。ピンク色が明るい分、スカートの濡れを際立たせた。それから間もなく彼女は駅員に連れていかれていった。
里奈はそんな様子を横目に何もできない自分に自責感を覚えた。ただ彼女自体も他人の心配をしているほど余裕はなかった。病院へ急いで向かった。しかし、その後も下腹部の違和感が続き、終日尿意に悩まされることになった。
 翌日、彼女は銀座にいた。彼女も28歳で結婚適齢期である。結婚相手を見つけるために結婚相談所に入会したばかりであった。白いタック付きのブラウスに、ピンクのひざ丈のフレアスカート。スカートも昨日失敗した女性よりもラメ付きの分、華やかな印象だ。彼女は依然として腹部の違和感は気にしていたが、そこまで深く気には止めていなかった。。。。
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