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連鎖する悲劇 ~制服のスカートを濡らしてしまっても~
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本作品は「南の島の悲劇 ~25歳の失態~」の続編になります。本作品だけでも話は成り立っていますが、当該作品を読んでいただいた方が、より分かりやすいと思います。
生暖かい強風がとある離島にあるホテルの掃き出し窓をガタガタと揺らす。南国らしい太陽の光は厚い雲に阻まれているが、空気だけは湿り気があり、生暖かい。
失恋し、リフレッシュ休暇を利用して離島を回る旅をしている嘉奈子は、前日の疲れで、窓を掻き鳴らす音にも起きることなかった。
最大音量に設定したスマホのアラームとナイトパネルのアラームを合わせてようやく目を覚ました。
目覚めて彼女は窓の外を見た。強風がヤシの木を激しくしならせる。
そんな風が吹き荒れているのを見て、彼女はスマートフォンで飛行機の運行案内を見た。
嘉奈子のいる島から、ハブ空港までの便は全便条件付き運行だった。強風のため運航が困難かもしれないとのことだった。
彼女はこの日離島から地域の拠点となるハブ空港へプロペラ機で移動する予定だった。
前日に乗った50人ほどのプロペラ機と同一機種。この天候ではかなり揺れるだろうと彼女は考えた。前日は機内で尿失禁するまで我慢した彼女は依然として下腹部に鈍痛が残っているのを感じた。
彼女は手洗いして風呂場に干したスカートを思いだした。風呂場には、汚してしまったスカートを手洗いして干してある。
手洗いして丁寧に洗ったクリーム色のボックスプリーツスカートだが、そば屋の土埃で汚れたベンチに座った際、汚したおしりの部分が少しだけ黒ずんでいた。
スカート自体は彼女が昨日ドライヤーで乾かした甲斐もあって湿り気はなくなっていた。彼女は一度そのスカートを穿いた。
ただお尻の部分の汚れが気になり、ウエスト部分を握り、スカートの前後を入れ替え、洗面台の鏡で汚れを確認した。クリーム色にやや黒ずんだ汚れは彼女にとってかなり目立つように感じた。
朝食をとるホテルのビュッフェに行く上では汚れたスカートは彼女にとってみっともないように感じた。
彼女はスーツケースから膝丈より少しだけ短い、茜色のAラインスカートを取り出した。ウールとポリエステルの生地でできた高級感のあるスカートだ。
これからの飛行機で向かう次の宿は高級ホテルを予約しており、そこで穿くために持ってきたものだ。海が見えるカフェで映える写真を撮るのも彼女の目的だった。
彼女は髪を整え、化粧を終えるとホテルのビュッフェに向かった。一部、和食もあるものの、ソーセージ、ハンバーグ、主食はパンがメインで洋食を中心とした食材が並ぶ。
彼女は、食事こそは、サラダ、パン等を摂取した。彼女は目を覚ましたいため、コーヒーを飲みたいところであった、搭乗前であり、水分摂取はオレンジジュースをコップ半分程度に留めた。
地域のとあるハブ空港では、嘉奈子のいる離島に向かう便が飛び立った。その便は離島に着陸した後、折り返しで再びハブ空港に向かう。嘉奈子はその折り返しの便に乗る予定だ。
離島周囲は雨や雷、強風のため条件付き運行となっていた。
そんな悪条件な便に乗務する客室乗務員は、玉川真奈。くっきりとした二重と大きな眼、すっと細い鼻で端正な顔立ちをしていた。普段から食生活も節制し、大学卒業から四年ほど経つが、学生時代に近い体形を維持していた。
彼女は東京出身であるが、客室乗務員になりたい一心で、大学とは別に就職のための学校にも通い、全国にある航空会社を受験しまわった苦労人だ。
多くの会社で最終面接にはたどり着く事は多いものの、内定を得ることが出来ず、東京出身ではあるが、最後の最後で内定が決まった地方の航空会社に就職した。
その会社が運航する飛行機はすべてプロペラ機でかつて彼女が夢見た、大型機での勤務ではないが、あこがれた空の仕事に日々充実感をもって仕事していた。
この日は悪天候に備えて、何時もより空港には早めに出勤し、眠気を覚ますためにコーヒーを飲んで備えていた。
彼女の勤務態度の良さに却って一部の上司からは嫉妬されることもあったが、概ね後輩、先輩に関わらず、評価されていた。
彼女の就職した航空会社の制服はひざ丈のネイビー色のタイトスカートとクリーム色をベースにハイビスカスやブーゲンビリア、アラマンダなどの花々が描かれている南国らしいシャツだ。
大手航空会社とは違い、華やかなシャツは彼女の気に入っているポイントでもあった。乗務に際して彼女は長い髪を夜会巻きにまとめていた。
この日、真奈の乗務した飛行機も風で強く揺さぶられる。ハブ空港から嘉奈子のいる離島までは一時間ほどのフライトではあるが、気流が悪いためドリンクサービスも中止されるほどであった。台風の多いこの地域では珍しいことではなかった。
機体が着陸に向けて降下を開始すると、厚い雲に突入し、機体はより強く上下に揺れた。機体が下に揺さぶられると、下腹部がシートベルトで圧迫される。真奈は尿意を感じた。
機体は着陸の最終段階となり、機体の車輪が轟音と共に降りる。
機体が左右に揺さぶられると、乗客によっては声を出すこともあったが、彼女はどんな場合もまっすぐ前を見つめ、微笑みを絶やさなかった。
空港のフェンスの上を期待が通過していくのが窓から見える。空港周囲のサトウキビも滑走路に対して垂直方向に風で揺さぶられていた。激しい横風だ。接地までもう間もなくだが、機体は左右により強く揺さぶられた。
エンジン音が大きくなり、機体は再上昇した。しばらくすると操縦室から強風で着陸をやり直したこと、着陸できない場合は出発地に引き返す旨のアナウンスが入った。
機体は上昇し、再び空港周囲を旋回する。激しい揺れの中、再び滑走路に向けて旋回と降下を繰り返した。
飛行機は滑走路にいつもよりも強い衝撃で着陸した。雨が降るためにブレーキも通常よりも強くかけられるが、そういう状況は離島便では珍しいことではなかった。
機体が空港にたどり着き、乗客を入り口で送った後も、真奈は出発に向けた準備をしなければならない。
すでに機体は到着時刻より30分ほど遅れており、出発まで折り返しの時間を短くして挽回しなければならない。しかし、仕事の質を落とすことは許されない。彼女は忘れ物や不審物があるかを一つ一つの荷物棚や座席ポケットを見て回らないといけない。
真奈はお土産と思われるサブレーが入ったビニール袋が忘れ物として荷物棚にあるのを見つけた。それを地上勤務のスタッフに渡す。離島の空港では大空港と異なり座席のポケットの確認なども彼女一人で行わなければならない。
小型機とはいえ50席ほどの座席がある。到着遅れもあり彼女の休みはほとんどない状態だった。
折り返しの便に乗る予定の嘉奈子もホテルからタクシーで空港に向かっていた。ホテルを出るときには小雨だったが、空港に近づくにつれて、タクシーの窓に大粒の雨がぶつかる。
滑走路近くの道路を嘉奈子が乗ったタクシーが通った時、彼女はプロペラ機よりも少し大きなジェット機でさえも着陸時に大きく揺さぶられているのを見た。翼端からは飛行機雲のような、ベイパーが現れていた。
嘉奈子が空港にたどり着き、出発便一覧が載った電光掲示板を見つめると、全便が条件付き運航との記載がされていた。
彼女がインターネットで見た通り、強風で引き返すか代替空港への着陸する可能性が告知されていた。
チェックイン機で、嘉奈子は、昨日機内で失禁したトラウマから、トイレに最も近い最前列の座席を指定した。
前日のフライトでは、最後尾に座ったせいで降機も最後になり、わずかな差で悲劇が起きた。嘉奈子は飛行機に乗るにあたり、綿密に考えた。
最前部の座席であれば機内に入る順番も最後の方であり、搭乗待合室でもトイレに行く余裕より長くあった。搭乗室に入ると、ほかの便の出発前、悪天候のため、お手洗いは地上で済ませるようにとの旨、何度もアナウンスがあった。
昨日の出来事がトラウマになっていること、悪天候であること、そして腹部の違和感のため嘉奈子は待合室に入ってから搭乗までの一時間、トイレに数回向かった。
待合室から搭乗案内がアナウンスされると、ターミナルを出て雨や強風が吹き荒れる中、傘を差しながら、嘉奈子は歩きながら飛行機に向かう。
横にある本州へ向かうジェット機はターミナルとボーディングブリッジでつながっており、彼女はうらやましく思った。機体へと移動する間、彼女は傘を差したが茜色のスカートを大粒の雨が濡らした。
嘉奈子は機内で着席したが、腹部の違和感が気になり、機体前方のトイレを見つめた。
乗客が乗り終わりかけた時、客室乗務員である真奈は掃除用具を持ってトイレに入ろうとした。
その時、嘉奈子は掃除される前に行かないと申し訳ないと考え、「お手洗いを使いたいです。」と申し出た。
真奈は我慢をしていたが、そういう表情は見せず、微笑んだまま嘉奈子に譲った。嘉奈子がトイレから出ると、間もなくして機体のドアが閉まった。出発準備のため真奈がトイレに行くことはできなくなった。
真奈が出発に向けたアナウンスや非常用施設の使用について案内を行っていく。休み時間がないこともしばしば経験することであり、島の間は短時間のフライトが多いため、こういう出来事はしばしばあることだった。
機体が滑走路へ走行を開始すると、ひとつひとつの荷物棚がしっかりと閉められているか、乗客一人一人がシートベルトを締めているかを彼女は通路を歩きながら確認して回った。
離島からハブ空港へのフライトも気流が悪化しているためドリンクサービスは中止となった。嘉奈子は尿意こそないものの、今度は脱水になるのではないかと不安になった。
真奈は、下腹部の圧迫感、不快感、気流が悪い中でも表情を変えず、脚をそろえてジャンプシートに座り、微笑を浮かべた。
着陸に向けて降下し、飛行機が雲を抜けると、光の差し込む陸地があった。海面のエメラルドグリーンが雲に遮られた中途半端な光でまだらに輝く。
離島とは違い、島中は住宅地や商業施設が立ち並んでいる。そんな間も機体は風で上下に揺さぶられる。嘉奈子は水分摂取を控え頭痛があるのに加え、乗り物酔いになりつつあった。
そんな嘉奈子の前で、プロとして微笑みを浮かべていた真奈だったが額には汗が吹き出していた。手を揃えて制服のスカートに乗せた手が、無意識に股の近くに寄っていく。脚こそ斜めに揃え、整えているものの、彼女の手根は股の上を押していた。
窓の外には、滑走路に向けた誘導灯が一直線に光っていた。機体は滑走路に正対するように急旋回をした。エンジン音がピッチを上げたり下げたりを繰り返している。
空港近くでは雨は降ってないものの強風が吹き荒れて、街の街路樹は激しく揺さぶられていた。真奈はこれまで何度も着陸を経験していたが、その中でもトップクラスに揺れているように感じた。
着陸に備えて格納されていた車輪が機外に降ろされる。その時の機体に伝わる振動が彼女の下腹部に響いた。
窓の外に見える木々は強風でしなっている。雨は降っていないものの悪条件には変わりない。機体は滑走路に一度接地したが、バウンドした。
機体は最初こそ滑走路に対してまっすぐ走っていたが、次第に滑走路上でスリップをし始めた。
機首は突然右側を向け、タイヤのきしむ音が機内に鳴り響く。乗客は恐怖のため叫び声を上げる。嘉奈子は思わず頭を抱えて上体を屈めた。
真奈も体を左右に激しく揺さぶられ、「あぁ」っと小さいが呻き超えのような声を出した。ベルトが彼女の下半身を激しく締め付け、腹圧が上昇した。そして臀部を中心に一気に温かくなるのを彼女は感じた。
嘉奈子はうめき声に反応して屈めた体のまま視線を前方にやった。真奈の椅子から液体が床に向かって垂れていた。真奈は股の部分を瞬時にギュッと握ったがその甲斐もなかった。
むしろ真奈の努力はネイビー色をしたスカートの前部も湿らせてしまった結果に終わった。嘉奈子は見なかったふりをして顔を膝の間に埋めた。
飛行機内の照明は落ち、薄暗くなると同時に飛行機は滑走路横の芝の上を数十メートルスリップし停止した。停止すると、小学校の灯油ストーブの近くに漂うような灯油に近いにおいが、機内に漂った。
真奈は失禁で汚してしまったスカートを隠すことなく立ち上がり避難誘導を始めた。スカートの前の部分は手のひらほどを濡らしただけで済んだが、後ろの部分はドッジボール大に滲んでおり、床についた避難誘導灯だけで照らされた暗闇の中でも、スカートが濡れてしまったのが誰の目にもわかるほどだった。
そんな中でも彼女は、夜会巻きだけは乱れず、髪型は凛としたままだった。左右前方のドアを手速く開け、乗客を誘導する。
真奈はうずくまっていた嘉奈子に声をかけ、ドアの方へ誘導した。すでに消防車が出動しており、機体から脱出した乗客たちは、向かってくる消防車の方向へ芝の上を走った。
嘉奈子は体を震わせながら、必死に走った。灯油をばらまいたような鼻を衝くにおいが機外ではより強く感じていたからだ。消防車の近くにたどり着くと脱力のあまりその場にへたり込んだ。茜色のスカートに泥が染み込んでいった。
真奈は乗客が機内に残っていないことを機体前方から後方の点検した後、後方の非常口から機外へと出た。彼女も乗客と同じように消防車のいる方へと走った。
走りながら彼女は、下着とスカートの後ろの部分が湿り、冷たくなっていたのを感じた。避難が終わり、失禁したという現実が彼女に重くのしかかった。
着々と、救難車両が機体を囲み始めた。
真奈の目の前に芝が疎らなマンホール程度の大きさのある泥濘が突如出現した。彼女の右足のパンプスが泥濘の端に入ったときに、地面の上を滑り始めた。
滑った脚は、泥濘の外の芝に引っかかり、とまった。そこでもう片足で転倒しないように粘ることもできたが、濡れたスカートをごまかしたい、現実逃避をしたいという気持ちが彼女の中で芽生えた。
左足のパンプスも泥の上を滑り、そのまま彼女は尻餅をついた。ネイビー色のスカートの後ろの部分が、茶色に染まり、黒いストッキングは泥はねで斑状に汚れた。
この時、消防隊がすでに機体の方向に接近しており、泥濘から立ち上がったところを真奈は救助された。
後に救急車に運ばれる際、マスメディアのカメラが回っていたが、乗客に混じり、彼女だけ毛布くるまれて搬送された。
生暖かい強風がとある離島にあるホテルの掃き出し窓をガタガタと揺らす。南国らしい太陽の光は厚い雲に阻まれているが、空気だけは湿り気があり、生暖かい。
失恋し、リフレッシュ休暇を利用して離島を回る旅をしている嘉奈子は、前日の疲れで、窓を掻き鳴らす音にも起きることなかった。
最大音量に設定したスマホのアラームとナイトパネルのアラームを合わせてようやく目を覚ました。
目覚めて彼女は窓の外を見た。強風がヤシの木を激しくしならせる。
そんな風が吹き荒れているのを見て、彼女はスマートフォンで飛行機の運行案内を見た。
嘉奈子のいる島から、ハブ空港までの便は全便条件付き運行だった。強風のため運航が困難かもしれないとのことだった。
彼女はこの日離島から地域の拠点となるハブ空港へプロペラ機で移動する予定だった。
前日に乗った50人ほどのプロペラ機と同一機種。この天候ではかなり揺れるだろうと彼女は考えた。前日は機内で尿失禁するまで我慢した彼女は依然として下腹部に鈍痛が残っているのを感じた。
彼女は手洗いして風呂場に干したスカートを思いだした。風呂場には、汚してしまったスカートを手洗いして干してある。
手洗いして丁寧に洗ったクリーム色のボックスプリーツスカートだが、そば屋の土埃で汚れたベンチに座った際、汚したおしりの部分が少しだけ黒ずんでいた。
スカート自体は彼女が昨日ドライヤーで乾かした甲斐もあって湿り気はなくなっていた。彼女は一度そのスカートを穿いた。
ただお尻の部分の汚れが気になり、ウエスト部分を握り、スカートの前後を入れ替え、洗面台の鏡で汚れを確認した。クリーム色にやや黒ずんだ汚れは彼女にとってかなり目立つように感じた。
朝食をとるホテルのビュッフェに行く上では汚れたスカートは彼女にとってみっともないように感じた。
彼女はスーツケースから膝丈より少しだけ短い、茜色のAラインスカートを取り出した。ウールとポリエステルの生地でできた高級感のあるスカートだ。
これからの飛行機で向かう次の宿は高級ホテルを予約しており、そこで穿くために持ってきたものだ。海が見えるカフェで映える写真を撮るのも彼女の目的だった。
彼女は髪を整え、化粧を終えるとホテルのビュッフェに向かった。一部、和食もあるものの、ソーセージ、ハンバーグ、主食はパンがメインで洋食を中心とした食材が並ぶ。
彼女は、食事こそは、サラダ、パン等を摂取した。彼女は目を覚ましたいため、コーヒーを飲みたいところであった、搭乗前であり、水分摂取はオレンジジュースをコップ半分程度に留めた。
地域のとあるハブ空港では、嘉奈子のいる離島に向かう便が飛び立った。その便は離島に着陸した後、折り返しで再びハブ空港に向かう。嘉奈子はその折り返しの便に乗る予定だ。
離島周囲は雨や雷、強風のため条件付き運行となっていた。
そんな悪条件な便に乗務する客室乗務員は、玉川真奈。くっきりとした二重と大きな眼、すっと細い鼻で端正な顔立ちをしていた。普段から食生活も節制し、大学卒業から四年ほど経つが、学生時代に近い体形を維持していた。
彼女は東京出身であるが、客室乗務員になりたい一心で、大学とは別に就職のための学校にも通い、全国にある航空会社を受験しまわった苦労人だ。
多くの会社で最終面接にはたどり着く事は多いものの、内定を得ることが出来ず、東京出身ではあるが、最後の最後で内定が決まった地方の航空会社に就職した。
その会社が運航する飛行機はすべてプロペラ機でかつて彼女が夢見た、大型機での勤務ではないが、あこがれた空の仕事に日々充実感をもって仕事していた。
この日は悪天候に備えて、何時もより空港には早めに出勤し、眠気を覚ますためにコーヒーを飲んで備えていた。
彼女の勤務態度の良さに却って一部の上司からは嫉妬されることもあったが、概ね後輩、先輩に関わらず、評価されていた。
彼女の就職した航空会社の制服はひざ丈のネイビー色のタイトスカートとクリーム色をベースにハイビスカスやブーゲンビリア、アラマンダなどの花々が描かれている南国らしいシャツだ。
大手航空会社とは違い、華やかなシャツは彼女の気に入っているポイントでもあった。乗務に際して彼女は長い髪を夜会巻きにまとめていた。
この日、真奈の乗務した飛行機も風で強く揺さぶられる。ハブ空港から嘉奈子のいる離島までは一時間ほどのフライトではあるが、気流が悪いためドリンクサービスも中止されるほどであった。台風の多いこの地域では珍しいことではなかった。
機体が着陸に向けて降下を開始すると、厚い雲に突入し、機体はより強く上下に揺れた。機体が下に揺さぶられると、下腹部がシートベルトで圧迫される。真奈は尿意を感じた。
機体は着陸の最終段階となり、機体の車輪が轟音と共に降りる。
機体が左右に揺さぶられると、乗客によっては声を出すこともあったが、彼女はどんな場合もまっすぐ前を見つめ、微笑みを絶やさなかった。
空港のフェンスの上を期待が通過していくのが窓から見える。空港周囲のサトウキビも滑走路に対して垂直方向に風で揺さぶられていた。激しい横風だ。接地までもう間もなくだが、機体は左右により強く揺さぶられた。
エンジン音が大きくなり、機体は再上昇した。しばらくすると操縦室から強風で着陸をやり直したこと、着陸できない場合は出発地に引き返す旨のアナウンスが入った。
機体は上昇し、再び空港周囲を旋回する。激しい揺れの中、再び滑走路に向けて旋回と降下を繰り返した。
飛行機は滑走路にいつもよりも強い衝撃で着陸した。雨が降るためにブレーキも通常よりも強くかけられるが、そういう状況は離島便では珍しいことではなかった。
機体が空港にたどり着き、乗客を入り口で送った後も、真奈は出発に向けた準備をしなければならない。
すでに機体は到着時刻より30分ほど遅れており、出発まで折り返しの時間を短くして挽回しなければならない。しかし、仕事の質を落とすことは許されない。彼女は忘れ物や不審物があるかを一つ一つの荷物棚や座席ポケットを見て回らないといけない。
真奈はお土産と思われるサブレーが入ったビニール袋が忘れ物として荷物棚にあるのを見つけた。それを地上勤務のスタッフに渡す。離島の空港では大空港と異なり座席のポケットの確認なども彼女一人で行わなければならない。
小型機とはいえ50席ほどの座席がある。到着遅れもあり彼女の休みはほとんどない状態だった。
折り返しの便に乗る予定の嘉奈子もホテルからタクシーで空港に向かっていた。ホテルを出るときには小雨だったが、空港に近づくにつれて、タクシーの窓に大粒の雨がぶつかる。
滑走路近くの道路を嘉奈子が乗ったタクシーが通った時、彼女はプロペラ機よりも少し大きなジェット機でさえも着陸時に大きく揺さぶられているのを見た。翼端からは飛行機雲のような、ベイパーが現れていた。
嘉奈子が空港にたどり着き、出発便一覧が載った電光掲示板を見つめると、全便が条件付き運航との記載がされていた。
彼女がインターネットで見た通り、強風で引き返すか代替空港への着陸する可能性が告知されていた。
チェックイン機で、嘉奈子は、昨日機内で失禁したトラウマから、トイレに最も近い最前列の座席を指定した。
前日のフライトでは、最後尾に座ったせいで降機も最後になり、わずかな差で悲劇が起きた。嘉奈子は飛行機に乗るにあたり、綿密に考えた。
最前部の座席であれば機内に入る順番も最後の方であり、搭乗待合室でもトイレに行く余裕より長くあった。搭乗室に入ると、ほかの便の出発前、悪天候のため、お手洗いは地上で済ませるようにとの旨、何度もアナウンスがあった。
昨日の出来事がトラウマになっていること、悪天候であること、そして腹部の違和感のため嘉奈子は待合室に入ってから搭乗までの一時間、トイレに数回向かった。
待合室から搭乗案内がアナウンスされると、ターミナルを出て雨や強風が吹き荒れる中、傘を差しながら、嘉奈子は歩きながら飛行機に向かう。
横にある本州へ向かうジェット機はターミナルとボーディングブリッジでつながっており、彼女はうらやましく思った。機体へと移動する間、彼女は傘を差したが茜色のスカートを大粒の雨が濡らした。
嘉奈子は機内で着席したが、腹部の違和感が気になり、機体前方のトイレを見つめた。
乗客が乗り終わりかけた時、客室乗務員である真奈は掃除用具を持ってトイレに入ろうとした。
その時、嘉奈子は掃除される前に行かないと申し訳ないと考え、「お手洗いを使いたいです。」と申し出た。
真奈は我慢をしていたが、そういう表情は見せず、微笑んだまま嘉奈子に譲った。嘉奈子がトイレから出ると、間もなくして機体のドアが閉まった。出発準備のため真奈がトイレに行くことはできなくなった。
真奈が出発に向けたアナウンスや非常用施設の使用について案内を行っていく。休み時間がないこともしばしば経験することであり、島の間は短時間のフライトが多いため、こういう出来事はしばしばあることだった。
機体が滑走路へ走行を開始すると、ひとつひとつの荷物棚がしっかりと閉められているか、乗客一人一人がシートベルトを締めているかを彼女は通路を歩きながら確認して回った。
離島からハブ空港へのフライトも気流が悪化しているためドリンクサービスは中止となった。嘉奈子は尿意こそないものの、今度は脱水になるのではないかと不安になった。
真奈は、下腹部の圧迫感、不快感、気流が悪い中でも表情を変えず、脚をそろえてジャンプシートに座り、微笑を浮かべた。
着陸に向けて降下し、飛行機が雲を抜けると、光の差し込む陸地があった。海面のエメラルドグリーンが雲に遮られた中途半端な光でまだらに輝く。
離島とは違い、島中は住宅地や商業施設が立ち並んでいる。そんな間も機体は風で上下に揺さぶられる。嘉奈子は水分摂取を控え頭痛があるのに加え、乗り物酔いになりつつあった。
そんな嘉奈子の前で、プロとして微笑みを浮かべていた真奈だったが額には汗が吹き出していた。手を揃えて制服のスカートに乗せた手が、無意識に股の近くに寄っていく。脚こそ斜めに揃え、整えているものの、彼女の手根は股の上を押していた。
窓の外には、滑走路に向けた誘導灯が一直線に光っていた。機体は滑走路に正対するように急旋回をした。エンジン音がピッチを上げたり下げたりを繰り返している。
空港近くでは雨は降ってないものの強風が吹き荒れて、街の街路樹は激しく揺さぶられていた。真奈はこれまで何度も着陸を経験していたが、その中でもトップクラスに揺れているように感じた。
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嘉奈子はうめき声に反応して屈めた体のまま視線を前方にやった。真奈の椅子から液体が床に向かって垂れていた。真奈は股の部分を瞬時にギュッと握ったがその甲斐もなかった。
むしろ真奈の努力はネイビー色をしたスカートの前部も湿らせてしまった結果に終わった。嘉奈子は見なかったふりをして顔を膝の間に埋めた。
飛行機内の照明は落ち、薄暗くなると同時に飛行機は滑走路横の芝の上を数十メートルスリップし停止した。停止すると、小学校の灯油ストーブの近くに漂うような灯油に近いにおいが、機内に漂った。
真奈は失禁で汚してしまったスカートを隠すことなく立ち上がり避難誘導を始めた。スカートの前の部分は手のひらほどを濡らしただけで済んだが、後ろの部分はドッジボール大に滲んでおり、床についた避難誘導灯だけで照らされた暗闇の中でも、スカートが濡れてしまったのが誰の目にもわかるほどだった。
そんな中でも彼女は、夜会巻きだけは乱れず、髪型は凛としたままだった。左右前方のドアを手速く開け、乗客を誘導する。
真奈はうずくまっていた嘉奈子に声をかけ、ドアの方へ誘導した。すでに消防車が出動しており、機体から脱出した乗客たちは、向かってくる消防車の方向へ芝の上を走った。
嘉奈子は体を震わせながら、必死に走った。灯油をばらまいたような鼻を衝くにおいが機外ではより強く感じていたからだ。消防車の近くにたどり着くと脱力のあまりその場にへたり込んだ。茜色のスカートに泥が染み込んでいった。
真奈は乗客が機内に残っていないことを機体前方から後方の点検した後、後方の非常口から機外へと出た。彼女も乗客と同じように消防車のいる方へと走った。
走りながら彼女は、下着とスカートの後ろの部分が湿り、冷たくなっていたのを感じた。避難が終わり、失禁したという現実が彼女に重くのしかかった。
着々と、救難車両が機体を囲み始めた。
真奈の目の前に芝が疎らなマンホール程度の大きさのある泥濘が突如出現した。彼女の右足のパンプスが泥濘の端に入ったときに、地面の上を滑り始めた。
滑った脚は、泥濘の外の芝に引っかかり、とまった。そこでもう片足で転倒しないように粘ることもできたが、濡れたスカートをごまかしたい、現実逃避をしたいという気持ちが彼女の中で芽生えた。
左足のパンプスも泥の上を滑り、そのまま彼女は尻餅をついた。ネイビー色のスカートの後ろの部分が、茶色に染まり、黒いストッキングは泥はねで斑状に汚れた。
この時、消防隊がすでに機体の方向に接近しており、泥濘から立ち上がったところを真奈は救助された。
後に救急車に運ばれる際、マスメディアのカメラが回っていたが、乗客に混じり、彼女だけ毛布くるまれて搬送された。
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