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思し召し?
しおりを挟む王子の側近であるロドルフの手記によると、この時の空気感は凄まじいものだったそうだ。体が勝手に動く、という奇怪な現象をあの場にいた26人もの獣人が同時に経験したのだ。ビリビリという空気感は暫く続いたが、次に顔を上げた時にはラナ様はその場から消えていたそうだ。
ちなみにラナ様に近づきたいが為に動物の姿になり近くまで寄ったがラナ様の匂いに酔いしれているうちに足を踏み外して腕を怪我したとのこと‥。
*
「はぁー、死ぬかと思った」
私は修道院に向かう中、水を汲むための桶を川辺に忘れてきたことに気が付きました。だけど戻れるわけがありません。修道服を着ているから私がここの修道女だとはすぐにバレるでしょうけど‥
そもそも私、怒られることしちゃったのかな‥。何が駄目だったんでしょう?傷の手当てが不満だったのかしら‥。
頭を悩ませながら修道院の扉を開けると、そこには王子くんよりももっと大きな獣人さんがいました。
「うわぁ!」
どうして今日はこんなに獣人さんがいるの?!今まで一度も見たことがなかったのに!!
「あら、ラナ!良いところに来ましたね。こちらの方は獣人の国、ユリテシア国の宰相でいらっしゃるドリアス様です」
「‥‥‥は、はじめまして」
「ラナさん!お初にお目にかかる!」
こうしてしっかり順序よく挨拶して貰えれば、食べられる!という危機感はないみたい‥。
「貴女を引き取りにきたそうです。なんでも、王子の番だとかなんとかゴニョゴニョ」
「へ?引き取る‥?」
「ええ。これは神の思し召しです。断ることは許されません」
「え‥‥えええ?!」
王子の側近であるロドルフの手記によると、ラナ様はユリテシアに来てから三日三晩泣いたそうだが、持ち前のポジティブさですぐに笑顔を取り戻したそうだ。王子とは少しずつ距離を縮められたとのこと。王子が番を前にして理性を失わなかった理由は、ラナ様が言霊の使い手だからだそうだ。「待て」と言われると、体が動かなくなるらしい。
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