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122話

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 何もかもが絶望の中で始まった私の物語。

 もがきながらも苦しみながらも、仲間達に助けられて何とか一歩ずつ歩いてきた。
 全てを諦めて堕ちてしまう方が楽だったかもしれない。だけど前を向かせてくれる人たちが側にいてくれたから、何度も何度も涙を流しながらもここまで辿り着けた。


「サマンサ‥元気に暮らすんだぞ」

「はい。お父様もお元気で」

 
 ーーロジェが皇室を継ぐのだから、私は元々王宮を出ていくことが決まっていた。
 寂しさももちろんあるけど、離宮に隔離されるようなお別れでも、“魔女の母”の猛攻から逃げる為のお別れでもない。

 これは、愛のある巣立ち。

 涙は出なかった。すぐに会える距離だし、こんな理想的なお別れは他にないでしょう。

「姉上、いつでも遊びに来てください。レオン、1週間の休暇のあとはすぐにまた会議に参加してもらうからな」

 にこっと眩しい笑顔を見せてくれたロジェに微笑み返す。

「ありがとう、ロジェ」

「殿下、休暇をありがとうございます」

 レオンの言葉にロジェはこくりと頷いた。

 私より幼いのに二児の父親になったロジェ。その為か改変前よりも、どこか大人っぽく落ち着いているように見える。
 

 馬車に乗り込む寸前に私たちに声をかけてきたのはバートン卿だった。
 彼は一緒に過去を旅した仲間。最初の出会いこそ最悪だったけど、すっかり頼りになるいいお兄さんという印象だ。

「どうかお元気で」

「はい。バートン卿も」

 今までは毎日一緒だったから少し寂しくなるけど、会おうと思えば簡単に会える。魔法騎士団長のレオンと騎士団長のバートン卿は言ってしまえば横の繋がりあるわけだし。

 だから、笑顔でさよならだ。





 ーーーー真新しく大きなお屋敷の庭には、天気の良い日には真っ白なシーツが風に靡く。
 
 メイドたちや執事たちはてきぱきと仕事をこなしているが、レオンとサマンサは人がよく、常に至るところで笑顔が溢れている。

 サマンサがピアノを奏でる時は、レオンは決まって近くのソファに腰を掛けてその姿を眺めている。普段から使用人たちが照れてしまうほど、2人の仲はお熱いらしい。



 この屋敷にはフェリシテがしょっちゅう遊びに来るせいか、彼女が寛ぐための部屋もある。

 フェリシテが屋敷に遊びに来るたびに、サマンサはフェリシテに箒の乗り方を指導してもらっていた。箒を乗りこなすのはなかなか難しく、魔女たちの中でもごく僅かしか乗れないのだが、サマンサは少しの時間だけならば乗れるようになったそうだ。


 魔法道具が溢れて便利になった世の中は、人と魔女たちが手を取り合って生活をしている。

 理不尽に命を奪われない世界。


 そんな素晴らしい世界を、最も死に近かった彼女が作りあげたのだ。‥素敵な仲間たちと共に。



 この物語は不幸のどん底にいた少女が、苦しみながらも前を向いて歩み続けた物語。

 きっとこの先も、生きていれば苦難はやってくる。

 だけどサマンサは、愛する人と大切な人たちを想いながら、きっとまた懸命に前に進んでいくのだろう。




ー完ー

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みんなの感想(5件)

はざま
2022.03.18 はざま

初めまして。

めっちゃ面白くて、めっちゃ良いお話でした!

読後感も爽やかで楽しく読めました!
素敵なお話ありがとうございました(*´-`)

江田真芽
2022.03.25 江田真芽

わー、嬉しいです!涙
ありがとうございます!!

解除
あてぃー
2021.08.14 あてぃー
ネタバレ含む
江田真芽
2021.08.14 江田真芽

あてぃーさん、ありがとうございます😊
読んでくださったという反応を頂けると、すごくモチベーションが上がるので本当有難いです🙇‍♀️✨
レオンの真意、気になりますよね‥!初サスペンスなので書いてて楽しいのですが展開に裏切られたと感じる人も多くいるかもなので毎日どきどきしてますw
これからも出来る限り毎日更新頑張りますので引き続き宜しくお願いします🥺✨

解除
あてぃー
2021.08.06 あてぃー

えー?!まさか!!?
びっくりして登場シーン見返してしまいました!
めちゃくちゃ続きが気になる展開で楽しみです!
サマンサちゃんは境遇が悲惨すぎるのでどうか幸せになってほしい…

江田真芽
2021.08.06 江田真芽

びっくりですよね(^^)w
作者もサマンサには幸せになってもらいたいです〜!

解除

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