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第20話
しおりを挟む数分後、私はテントから少し離れた木陰で叫び声を上げた。
「でああああああああ?!?!」
何とも可愛げのない声。腰が抜けてへたりと地面に尻餅をついた私の視線の先には‥
「宇宙人?!?!?!」
なんと宇宙人がいたのだ。
木の上からひょっこりとこちらを覗いている銀色の生物。なんと3体いる。大きさは猿よりもひとまわり大きいくらいだけど‥
やばくない?なんで??
あ、そういう設定にしたの?私‥‥。というか、拠点の近くにいたのね、宇宙人‥。私たちを観察してた、とか??
それにしても‥。宇宙人たちが私に向けて指を向けてるんだけど。もしかしてビームとか出されるやつ‥?
「おい、どうした?‥‥‥うわぁ、まじか」
私の可愛げのない叫び声を聞いて、蒼くんが駆け付けてくれたらしい。そして宇宙人を見るなり全てを察したようだ。
病み上がりにすみません‥。めちゃくちゃな設定にしてすみません‥。
宇宙人は私の足元にビームを放った。アスファルトがジュッと音を立てて煙を上げている。
「「ええぇ~~」」
私と蒼くんの声が被った。
こんなビーム浴びたら絶対死ぬじゃん。物理的に体溶けるじゃん。
でも私だってただ“死ぬ”っていう選択肢しかない設定はしないと思うんだよね‥。何か打開策があるんじゃ‥
「あ、そういやなんか“チート能力”付けたとかなんとか言ってたな」
蒼くんが閃いたようにそう言った。
「え?!本当?!じゃあ私たちリアルヒーローじゃん!‥でもこの間“糸”は出せなかったからなぁ‥」
「うーん、なんの能力持ってるかは分かんないからな。とりあえず‥」
ジジジ‥っとビームが向かってくる。やばい、死ぬ。
「「逃げよう!!」」
私たちは猛ダッシュでその場から逃げ出した。
途中で振り返ってみたけど、どうやら宇宙人たちは追ってはこないみたい。
え、いや、違う。
「蒼くん!!UFOきてる!!空から降りてる!!あの宇宙人たちUFOに乗るつもりなんだっ!!」
「いいから前見て走れ!!」
そこからはもう無我夢中。せっかく築いてきた快適な拠点を全て手放して、どこに向かって走っているのかも分からないまま走り続けた。
もう足が絡まりそうだし、肺が痛い。呼吸が乱れて、苦しい。森の中の茂みに飛び込んで、私たちは乱れに乱れた呼吸を整えた。
「‥‥蒼、くん‥ごめんね‥。私が適当なことしちゃったから、こんなことに巻き込んで‥」
「ははっ」
え?!なんで笑ってるの‥?!
「あ、蒼くん‥‥?」
「いやぁ、スリルだな!」
蒼くんはそう言って少年のような表情を浮かべていた。
あぁ、なんだろう‥。この懐かしい感じ。‥2人ならなんとかなると思えてしまうような、青くさい気持ち。
ここで笑えてしまう蒼くんに、この時心はかなり救われた。
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