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第17話
しおりを挟むどうやらこの記憶喪失はこの世界に飛んできたことがきっかけで起こっているみたい。特にパニックにもならなかったのは、この世界がVRWの世界だと知って、しっくりきたからかもしれない。全て納得がいったって感じ。
あとはノンさんが現実世界で私たちを戻そうと頑張ってくれているのを、ここで待ってるしかないね。
元の世界に戻ったら記憶も戻ってくれるのかしら‥?
まぁ兎にも角にも恐らく近いうちに元の世界に戻れるんだろうし、現実世界じゃないからできること、沢山やってみるのも有りだよね!
というわけで、温泉施設とテントを拠点としながら近隣の資源(スーパーや本屋など)を開拓し続けて早3日。100巻近く続く有名漫画を優に読み終えてしまった。蒼くんも漫画を読んだり、小説を読んだりしながら時間を潰していた。
人々も虫もいない世界は、本当に静かだ。
本来なら今頃蝉が鳴き声を上げているんだろうけど、この世界に蝉の声は響かない。‥蛙の合唱は響いてるんだけどね。
蒼くんが言うには私は別に虫が苦手なわけではないらしい。『夏場だから食べ物腐って虫湧かないようにしたんじゃない?』という蒼くんの推測に、私はなるほどー、と心の底から納得した。
それにしても‥
「ぜんぜん帰れないね‥」
「‥俺そろそろまじでラーメン食いたい。
ノン手こずってんのかな」
大きな溜め息吐きながら、団扇を仰ぎ続ける蒼くん。
近くにあった川に両足をつけて、私たちはなんとか暑さに嘆く体を冷やしていた。
「‥‥このまま戻れないとかあるかな」
「‥‥えーー‥ラーメン‥‥」
ーーいま重要なのはラーメンじゃないはず‥。いや、分かるけども、食べたいけども。
「‥‥‥ノンさん?が何とかしてくれる以外に方法ないのかなー‥ほら、本家のVRW楽しんでるセレブ達だって元の世界に問題なく戻ってるんだし」
「んー‥本家は3時間ルールで強制送還されるからなー」
「あーなるほどーー。普通のゲームみたいにゴールとかあればいいのにね」
「ゴールねぇ。VRWの詳細なんて分かんねーからなー。ゴール云々も全然聞いたことねーや」
「情報雑誌にないかな?ゲームとかセレブとか、そっち系統の雑誌に!!VRWの詳細情報!」
「あぁー、そうだな。探してみるかー‥」
そんなこんなで、ゆるーく確信に迫ろうとした私たちだったけど‥VRWに関する記事を見つけられても中々有益な情報を見つけることは出来なかった。
ーー自由に世界を設定して作ることができ、3時間で現実世界に戻る。その他の情報といえば、VRWを予約している著名人の名前や、VRWを経験したセレブ達のコメント、そしてその“3時間”にかかる費用。
私たちが欲しかった情報は見つけることができなかった。
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