この世界に2人ぼっち

江田真芽

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第11話

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 軽トラの後ろに発電機、米俵、簡易調理セット(鍋とかカセットコンロ等)、その他生活に必要なものを諸々バッグに入れて詰め込んだ。
 意気揚々と助手席に乗り込んだ私は、民家にあった女物のTシャツとジーンズ、合成樹脂でできた軽いサンダルという超ラフスタイルだ。元々着ていたオフィスカジュアルファッションは探検するのには不向きだったから新しく拵えさせて貰った。ちなみに蒼くんも黄色いアロハシャツとハーフパンツとサンダルだ。
 民家には夏の眩しい日差しを防ぐサングラスまであった。勿論2人とも装着し、荒廃した世界には似合わないパーリーピーポーの出来上がりである。

「いやー、楽しい!私楽しいよ蒼くん!」

「‥記憶ないのにこんな世界でよく楽しめるよね」

「そういう蒼くんだって、なんだかんだ楽しんでるでしょ?」

 なんとなくそんな気がする。なんか全然この世界に参ってないというか、すごい軽い感じというか‥。

「まぁ正直楽しいけど」

「やっぱり!!」

 イェーイ!と蒼くんにハイタッチを求めると蒼くんは軽トラを発進させながら左手でタッチに応えてくれた。

 秋田から神奈川までの地図はない。ナビもない。道路も所々陥没しているから軽トラで何処まで行けるかわからない。一体何日くらいかかるんだろう。本来なら高速使って1日で辿り着くんだろうけど‥高速乗れるのかな?ETCバーを無理矢理押し開いちゃえば行ける?でもそもそも信号もなんもないから下道も高速道路みたいなもんか、多分。

「俺ね、思うんだよね」

「なにを?」

「秋田にいる理由」

 蒼くんがハンドルに両手と顎を乗せながら言った。全開にしている窓からは生温かい風が入り込んでくる。

「え、理由あるの?」

「‥物事にはね、何事も理由があるんだよリカさん」

「あ、そういうのいらないから」

「‥‥お前食べたがってたんだよ、稲庭うどん」

 い、稲庭うどん!!確かに蒼くんの口から稲庭うどんというフレーズを聞いた途端に、私の脳内は稲庭うどんで埋め尽くされた。右も左も上も下も全て稲庭うどんだ。食べたい。

「‥‥私が稲庭うどん食べたいって願ったからここに飛ばされてきたの?」

 ブロロロロ、と軽トラのエンジン音だけが響く世界。そういえば夏だというのに蝉が鳴いてないな。

「‥いやわかんないけど、そうかもね」

「な、なにそれ‥超能力者じゃん!」

「は?」

「いや、こんな荒廃した世界だっていうのに、願い通り秋田に来たわけでしょ?ミラクルパワー通り越してるよね」

 あぁ‥やっぱり私と蒼くんは選ばれしヒーローなのかもしれない。だからこんな凄技が使えてしまうのかも‥
ーーは!!それなら『神奈川』に行きたいと念じたら瞬間移動するのでは?!
 両手を突き出して謎のハンドパワーポーズを取って念じてみる。だけど残念ながらどこにも飛ばされなかった。何故だ。



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