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第10話 蒼視点
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ピピピっと素早くパネルをタップして設定を行なっていく梨花。その設定を見て焦り続けるノン。仕事帰りでくたびれた状態の俺は英文のパネルなんて見る気も起きず、ネクタイを緩めて横になることにした。
「本家と違って3時間ルールとかもないんだし、死ぬよこんな設定!」
(※3時間ルール:正規のVRWでは、仮装空間から3時間で強制的に現実世界へと帰還することになっている)
「えー、チート能力をランダムで付けるようにしてるから大丈夫!どんな能力かわからないけど」
「いやいや、だめだよ!そもそもね、本家VRWでも、転送の衝撃で一時的に記憶が飛んじゃう症例もあったんだよ!」
「記憶喪失ってこと??」
「そうだよ!医者もいないんだし、無理に思い出そうとしたらパニックになるかもしれないし、本当危険だからさ」
「大丈夫だよ~心配しすぎ。
私たぶん記憶なくしたりしないし‥ちょっと楽しむだけだから」
「危険すぎるって!!あ、ちょっと!!えぇ?!DONE押した?!え?!信じられない!ちょっと梨花!蒼!逃げるよ!!転送されちゃう!」
ノンが大声を上げて部屋から飛び出して行った。俺がのそっと起き上がって「え?」と声を出すのと同時、俺と梨花は電子的な光に包まれ始めた。
「ほんと小心者だなー、ノンは。ね、蒼」
「待って俺も転送されんの?」
聞いてないんですけどといった調子で梨花を睨むと、梨花は幼い頃から変わらない屈託のない笑顔を見せた。
「レッツゴー!日常を忘れよー!」
梨花も俺も、お互いの両親が心底心配するくらい、ぶっ飛んだ子どもだった。小学1年生の頃には「探検だ!」といって2人で唐突に他県まで行ってしまったこともあるし、梨花も俺も忍者を夢見て校舎の2階から飛び降りたこともある。
それに比べてノンは慎重な常識人。ノンの反応が正常なんだろうけど、俺と梨花は特に構えることもなくVRWの世界に飛ばされた。
ーーどうせすぐ現実世界に戻れるんだろ。
そう思っていたから、俺もまぁ楽しんでやるかって気持ちだった。
VRWの世界で目を覚まして、梨花が記憶喪失だと分かったときには内心「なにが記憶なくしたりしないだよ」とツッコミたくなったけど、無理に思い出させようとしたらパニックになるかもとノンが言ってたから、俺は何も言わないことにした。
でも、何故か梨花は俺が恋人かもしれないと勘繰ってくるし、関係性は伝えておくべきだと思った。万が一記憶のない状態の梨花が俺を好きになったりしたら、それこそ色々と問題だと思ったから。
「本家と違って3時間ルールとかもないんだし、死ぬよこんな設定!」
(※3時間ルール:正規のVRWでは、仮装空間から3時間で強制的に現実世界へと帰還することになっている)
「えー、チート能力をランダムで付けるようにしてるから大丈夫!どんな能力かわからないけど」
「いやいや、だめだよ!そもそもね、本家VRWでも、転送の衝撃で一時的に記憶が飛んじゃう症例もあったんだよ!」
「記憶喪失ってこと??」
「そうだよ!医者もいないんだし、無理に思い出そうとしたらパニックになるかもしれないし、本当危険だからさ」
「大丈夫だよ~心配しすぎ。
私たぶん記憶なくしたりしないし‥ちょっと楽しむだけだから」
「危険すぎるって!!あ、ちょっと!!えぇ?!DONE押した?!え?!信じられない!ちょっと梨花!蒼!逃げるよ!!転送されちゃう!」
ノンが大声を上げて部屋から飛び出して行った。俺がのそっと起き上がって「え?」と声を出すのと同時、俺と梨花は電子的な光に包まれ始めた。
「ほんと小心者だなー、ノンは。ね、蒼」
「待って俺も転送されんの?」
聞いてないんですけどといった調子で梨花を睨むと、梨花は幼い頃から変わらない屈託のない笑顔を見せた。
「レッツゴー!日常を忘れよー!」
梨花も俺も、お互いの両親が心底心配するくらい、ぶっ飛んだ子どもだった。小学1年生の頃には「探検だ!」といって2人で唐突に他県まで行ってしまったこともあるし、梨花も俺も忍者を夢見て校舎の2階から飛び降りたこともある。
それに比べてノンは慎重な常識人。ノンの反応が正常なんだろうけど、俺と梨花は特に構えることもなくVRWの世界に飛ばされた。
ーーどうせすぐ現実世界に戻れるんだろ。
そう思っていたから、俺もまぁ楽しんでやるかって気持ちだった。
VRWの世界で目を覚まして、梨花が記憶喪失だと分かったときには内心「なにが記憶なくしたりしないだよ」とツッコミたくなったけど、無理に思い出させようとしたらパニックになるかもとノンが言ってたから、俺は何も言わないことにした。
でも、何故か梨花は俺が恋人かもしれないと勘繰ってくるし、関係性は伝えておくべきだと思った。万が一記憶のない状態の梨花が俺を好きになったりしたら、それこそ色々と問題だと思ったから。
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