この世界に2人ぼっち

江田真芽

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第6話

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 私も蒼くんも良いペースでビールを飲み続けて、随分と酔っ払ったところで今日を終えることにした。歯ブラシもコンビニで調達してたのでそれを使用する。
 布団は一階のリビングに敷くことにした。勿論並べて敷いてはいないけど、こんな世の中だし宇宙人が来るかもしれないし、怖いからすぐ近くに敷いた。ちなみに蒼くんは「え?同じ部屋で寝んの?」とちょっと嫌そうだった。

 飲んでる間もこの世界の有り様についてとか、この状況は夢なんじゃないかとか、そんなことばかり話した。蒼くんは然程興味もなさそうに相槌してるだけだったけど。
 布団に入った今も、これは夢なんじゃないかと本気で思う。明日目覚めたら記憶を取り戻して、沢山の人がいる世界に戻っているんじゃないのかなって。
 そう思ってしまうほど、この世界はまるで現実味がない。


 ーーまぁ朝を迎えたら相変わらず2人ぼっちの世界だったんだけど。
 今日はもっと色々な所に探検に行こう!蒼くんに軽トラで行けるところまで連れてってもらおうっと。
 そもそもこの土地はどこなのかしら。あ、民家の入り口に住所書いてないかな?

 蒼くんはまだ起きてなかった。スーッと小さな寝息を立てて気持ち良さそうに寝てる。もう既に気温は上がってきてるのに、よく寝続けられるなぁ‥

 眠る蒼くんを横目に、私は玄関の外に出た。辺りを見渡すと郵便受けがあって、そこには湯沢市から始まる住所が書かれていた。湯沢市‥って秋田よね?私って秋田に住んでいたの?

 部屋に戻ると蒼くんが上半身を起こして目を擦っていた。蒼くんの天パ気味の黒い髪が、寝癖でさらに無重力状態になっている。

「おはよう」

「‥おはよ‥‥」

「蒼くんってどこに住んでたの?」

「‥え?俺?神奈川‥」

「そうなの?ここ秋田らしいんだけど。
なんでここにいるんだろう‥?」

「‥‥‥さぁ?」

 蒼くんはまた然程も興味なさそうに欠伸をしながらそう答えた。
 ‥蒼くんは記憶があるんでしょ?起きたら世界がこんな有り様になってて、おまけに神奈川に住んでたのに秋田に飛ばされてるんでしょ‥?

「あ、蒼くん‥。
どうしてそんなに冷静なの?」

「え?」

「ご両親とか友だちとか、恋人とか、職場とか‥
何にも気にならないの?記憶あるなら尚更パニックになりそうだけど」

 私がそう言うと、蒼くんはノソノソと起き上がってペットボトルのお茶を飲み出した。

「‥‥別に、気にならない」

「えぇ?!普通神奈川に行きたくなるんじゃないの?!
みんなの無事確かめたくなるよね?!」

 私は記憶がなくて自分の大切な人も思い出せないから、確かめようがないの。でも蒼くんは違うよね‥?

「‥‥リカが目覚めるまで結構時間あったんだよ。その間に色々考えたっつーか、まぁ、そんな感じ」

 蒼くんはやっぱり興味無さそうにそんなことを言った。
でも、私がもし記憶があったなら‥絶対にこんな短時間の間に納得して冷静になれたりしないと思う。

 蒼くん、よっぽど淡白なのかな‥?

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