5 / 22
第4話
しおりを挟む拠点の民家へと戻ると蒼くんは早速発電機のエンジンをかけて、冷蔵庫のコンセントを挿した。彼にとって一番重要なポイントはそこなんだろう。
それから蒼くんは2リットルのペットボトルの水を持ってお風呂場に行った。シャワーの水が出ないのは中々に不便だよなぁ‥。
蒼くんが戻ってくると、交代で私もお風呂に入ることにした。お風呂場には化粧落としや洗顔フォーム、脱衣所には化粧水や乳液なんかもあって助かった。この民家にはきっと若い女性も暮らしていたに違いない。
蒼くんは民家の二階のタンスにあったジャージに着替え、私は部屋着っぽいTシャツワンピースを見つけてそれを着た。‥一体ここの住人はどこに消えちゃったんだろう。
それにしても‥生活用水の確保はこれからの課題だわ‥。お風呂にお洗濯‥でももしショッピングセンターを見つけられたら、私と蒼くんだけだったら下着や服なんかは一生使い捨てできちゃうんじゃないかしら。‥さすがに一生は無理かな?
私は民家のキッチンを借りて、夕飯作りを始めた。冷蔵庫には何故か何も入っていなかったけど、常温保存可能な調味料や乾物なんかはキッチンカウンターの引き出しや棚に入っていた。
知らない誰かの家のキッチンや調味料を使って料理するだなんて、なんだかちょっと気持ち悪いけど致し方ないよね。
胡瓜は塩昆布で和えて、枝豆はカセットコンロで鍋に火をかけて塩茹で。はぁー、美味しそう‥。ピーマンは少量の油で炒めておかか醤油で和えることにした。引き出しの中に未開封の桜海老もあったから少々トッピング。あとはトマトは水洗いして、そのまま食べることにした。とうもろこしも何本か収穫してきたけど、これは明日の朝に茹でて食べようかな。
簡単な料理しか作ってないけど、身近な夏野菜おつまみメニューの完成だ。ちなみに“水”をあまり使わなくていいように、陶器のお皿じゃなくてコンビニで拾ってきた紙皿を使うことにした。
「うまそー‥居酒屋メニュー最高‥」
ランタンや懐中電灯なんかを家の中から探し出してくれていた蒼くんが、テーブルに並んだおつまみたちを見て幸せそうに目を細めた。
まだ室内も明るいけど、日が沈んでしまったら恐らく真っ暗だ。発電機はあるけど夜中の間ずっと付けたままだと煩いから、ガソリンランタンがふたつもあったのは幸いだった。
「足りなかったら即席麺とかカップ麺とかもあるし、お野菜もまだまだあるから何か作るからね」
「ありがとー、すげー助かりマス」
今日1日でわかったこと。
この世界にはやっぱり今のところ私たちしかいないし、宇宙人も見当たらないし、必殺技も出せない。そして、蒼くんは意外に素直ってことだ。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪
naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。
「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」
そして、目的地まで運ばれて着いてみると………
「はて?修道院がありませんわ?」
why!?
えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって?
どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!!
※ジャンルをファンタジーに変更しました。


五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる