この世界に2人ぼっち

江田真芽

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第2話

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 私は蒼くんと共に民家を出た。民家の中も調べたけど全然見覚えもないし、恐らく見ず知らずのお宅なんだと思う。(なんでここにいたんだろう‥?)辺りを見渡しても無事な建物はほぼほぼないから、やっぱりこの民家を拠点とすべきね。

「蒼くん、私たちはどんな必殺技が使えるんだろうね」

「‥使えないと思う」

「糸とか出せるかな」

 私はかっこよくポージングしながら手首をスナップさせた。ーー駄目だ、出ない。

 暫く歩いて思うのは、全く人がいないということだった。本当に宇宙人が人々を攫ったのかもしれないわ‥
 半壊したコンビニにはまだ食べられそうなカップ麺やぬるくなったペットボトルも散乱しているけど‥果たして食べられるのかな?

 賞味期限は大体令和3~4年との記載があった。
今確か令和3年だよね。7月だった気がするんだけど合ってるかな。記憶がぶっ飛んでるからズレてたりする‥?

「今って令和3年の7月だったよね?」

「‥そうだな」

「なら当分食料は大丈夫そうね!!
ーーはっ!!!素晴らしいこと思いついちゃった‥!」

「‥なんだよ」

「畑に行こう!!もしかしたら枝豆とかピーマンとか胡瓜とか、旬の野菜があるかもだわ!」

「‥楽しそうだな‥」

 私の目はキラッキラに輝いていたに違いない。
人様の畑の野菜を頂戴してしまうのは野菜泥棒でしかないんだけど、まず人類が私と蒼くんしかいないし、これは人類滅亡の危機だから許してもらえるよね。もし畑の主がいたら謝ってお金を払うってことで。(あれ、私所持金いくらなんだ‥?手ぶらじゃない?)

 ところで、人類滅亡の危機って簡単に言ってしまったけど‥。
少人数しか生き残っていないんだとしたら近い将来、近親交配(遺伝子的に近い関係で子孫を作ってしまうこと)が生じちゃうはず。そうなると遺伝子的に弱くなってしまうのよね、確か‥。それにお医者さんもいない今、怪我したり病気をしちゃったらそれだけで死に直結するピンチだし‥これは困ったわ‥。

「蒼くん、大変よ‥」

「今度はなんだよ。畑に行くってウキウキしてたんじゃないのかよ」

 蒼くんが今日何度目かわからない死んだ魚の目をした。
凄い顔なんだけど、なんだろう‥言い知れぬ安心感を感じるのよね。何故かしら。
 蒼くんはコンビニで見つけたペットボトルのお茶を飲んでいた。ちゃっかりしてるなぁ。まぁかく言う私も勿論手に持ってるんだけど。

「早く他にも人類を見つけないと、私たちだけでは人類を後世に残せないよ‥!」

「はぁ?」

「だから、私たちが子孫を残すとするでしょ?!
でもその子孫たちだけじゃ子孫を残して生きてけないから、他に生き残ってる人たちを見つけ出さないと!!」

ーーーぶはっ、と蒼くんが凄い勢いでお茶を吹き出した。汚いなぁ。

「‥大丈夫?」

「‥‥お前凄いこと言うね。相変わらずすげーわ」

 相変わらず??はて、どういう意味かしら。

「てかさ」

 蒼くんが間髪入れずに言葉を続けた。

「きっとこの地域だけじゃなくて日本とか世界全体とかまで探せば、絶対他にも人間いるだろ。そいつらに人類の未来任せておけば大丈夫だ」

 相変わらず死んだ目をしている蒼くんだけど、確かにその通りだわ‥!地球全土で見たらさすがに私たち以外にも人類はいるはずよね!

 もしかしたら宇宙人に襲われたのは日本列島だけって可能性もあるし!
‥本当に原因が宇宙人なのかは分からないけど。

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