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二章 宝物捜索 編
03
しおりを挟む『 けど……耳と尻尾、いらねぇ…… 』
成長した事は嬉しいけど、白髪に丸みを帯びた白い耳と三本の尾は、カッチューシャをつけてる野郎共と似てるような感じがしてショックがでかい
鏡の前で落ち込んで両手をついていれば、ベッドから下りたクララはやって来た
「 やっぱり成長したか 」
『 なに……俺より、察してたとか? 』
分かりきってたような言い方に、顔を上げて問えば、彼は俺の横から離れて服を着始める
「 成長痛を感じてたようだったからな。だから、ワンサイズ大きめの服を買わせたんだ 」
『 え…節々痛かったのって…成長痛だったの? 』
筋肉質かと思ってたからこそ驚く
「 急な成長に身体が追いつけなかったんだろう。俺の魔力と魔晶石の効果で、拍車が掛かったんだ。まぁ、安心しろ…聖獣は老けないから、それ以上老けることはないだろうし 」
『 老け……え、俺ってもっとハンサムになるんじゃ!?…もう少し、男らしくなりたいんだが… 』
それこそシロみたいな!と言い掛ければ、早々に着直したクララは、俺の方へと振り返って真顔で告げる
「 無理だろ。御前…ハンサムというより美形だからな 」
『 ……完攻め要素欲しかったァァァァ! 』
「 何言ってんだ 」
俺の理想は、筋肉がよく似合うハンサムな肉体派!って感じの容姿だからこそ、こんな美人系は認められないと改めて鏡を見てから、深い溜め息をつく
『 はぁ……こんな、筋肉に別の顔を取り付けたような見た目より、十八歳前後でいい… 』
「 なろうと思えばなれるんじゃないか。大体、成長しきった後の外見なんて魔力で如何とでもなるだろ 」
『 なに!?そんな簡単に……え… 』
出来る訳ないだろ!と言い掛けてクララの方を向けば、そこには腰程長い髪を靡かせ、胸の大きな色気のある女性が、胸の下で腕を組んでるのを見て硬直した
「 俺が出来るんだ。御前も出来る 」
『 一瞬、その姿で…抱きたいって思ってしまった 』
「 チッ……これだから男は 」
地雷を踏んだせいで、分かりやすく舌打ちをされて一瞬で元の姿に戻ったクララに、申し訳なく思う反面、魔人の彼が出来るならっと思い、座り直してから両手を見た後に鏡へと視線をやる
『 魔力量を調整して…縮まればいいんだな、縮めー。縮めーー… 』
なんか変な呪いでもしてそうな言い方だが、慣れない容姿より、慣れてきた容姿がいいって必死に考えていれば、身体を白い靄が覆った後に、姿が変える事ができた
「 出来たじゃないか。随分と小さくなったが 」
『 あぁぁあ!!微調整難しすぎるだろう!!うぁぁぁあっ!! 』
「( こう見ると…ガキだな )」
五歳児程度まで下がってしまった外見にショックを受けて、子供のように駄々を捏ねてしまった
最高と最低を交互に繰り返した結果…
俺はまだ、姿を変えれる程に魔力のコントロールが上手くないってことに結論がついた
『 ……もう少し、強くなるまで…諦めよう 』
筋肉にアイドルの頭が付いたような見た目で固定されたが、今は子供に戻るよりマシだと思って諦めることにした
「 身長188cm程度か。俺より少しだけ低いな 」
『 クララって何cm? 』
「 193cmだが… 」
『( どこぞの海賊漫画かよ… )』
スタイル良くて身長たけぇなって思ってたけど、改めて数字を聞いて落ち込んだ
『( 俺のMAXは…190cmもないってことだ… )』
この世界で格好いい!と思える理想の身長には届かなかった事にショックで、何も考えられなかった
影に入り落ち込み、クララが朝食を食べ終えて、残りの支払いを終えて宿を出るまで、ブツブツ文句を呟いていたんだ
「 いい加減、開き直れ 」
『 俺ってさ…神様が作る時も格好いい容姿ではなぐ 可愛くない容姿 ゙と連呼されて創られたんだ。その意味がようやく分かった…俺は確かに可愛くもなければハンサムでもない… 』
クララの横を猫背で歩きながら、足元にある小石を軽く一度蹴って、言っても仕方ない事を言えば、彼は溜め息を吐く
「 ハァー。面倒臭い奴だな。御前は美形だ。格好良いって自覚持て 」
彼の言葉に、視線をその横顔へと向けてから片手を左右に振る
『 いやいや、ナイナイ。クララさ、自分の容姿見て言えよ。その顔で言われても説得力無いから 』
「 あ?( …本気で、無自覚なのか? )」
シロやクララみたいな奴から、格好いいとか美形とか言われても何も嬉しくないし、御世辞と分かってるから、寧ろ落ち込む
『 まぁいいけど…。魔力のコントロール出来るようになったり、もう少し若返った顔と体のバランスのいい姿に戻るから 』
「 好きにしろ。俺も…自分が満足する姿になってるから、何も言わない 」
落ち込んでる俺に呆れてしまったクララは、さっさと船のある方向へと歩けば、俺は少しだけ急いで着いていく
「 あ、キャプテン!今帰……隣の誰!!? 」
『 アルトだけど…なに、俺ってそんな老けたわけ?うわ、つら…… 』
「 はぁ!?いや、そうじゃなくて…! 」
ツーブロックの髪型をしたヤーゴが、左の通路から出て来て、一緒に船に戻る事になったのだが、彼の言葉に益々落ち込めば、クララは親指を向けた
「 気にすんな。何を言おうが…落ち込んでやがるから無視をしろ 」
「 あ、あいあい……( 容姿の良さが…無自覚パターンなのか… )」
その後、他のクルーにも似たような反応をされたが、俺はもう…他でもない人物に相談するしかなかった
『 デルぅぅう……俺、全身整形したい…。なんでこんな…容姿なんだろ。聖獣が人間より見た目が劣るとか終わってねぇ!? 』
船に戻った早々に、デルの部屋に訪問してかは早めに帰ってきてた彼に愚痴って、テーブルに顔を埋めて、軽く叩いていれば前の椅子に座ってる彼は苦笑いを浮かべた
「 そんなことは無いと思いますよ。確かに…クラウス様とは違った容姿ですが、貴方には貴方なりの良さがあります 」
『 ……本当に? 』
「 えぇ、とても素敵に成長なさってますよ 」
女神の様に優しく微笑んだデルの表情を見て、相変わらず汚い心が洗浄されるような気持ちになり、寧ろ恥ずかしく思えてきた
『 そ、そうかな…? 』
「 えぇ。それに…私は容姿より、ある事の方が気になってるのですけどね。それを聞いていいのか迷ってます 」
『 あることって? 』
容姿より深刻な事なのだろうかと首を傾げれば、笑みを浮かべていたデルの表情がスッと真剣な面持ちにへと変わった事に内心驚く
「 貴方の中にあった。神力が失われてる事に疑問を抱いてます 」
『 えっ………どういう、こと…だよ 』
予想外の言葉に硬直し、一瞬頭の中が真っ白になれば、デルは視線を外した
「 今の貴方は、聖獣と言うより魔物に近い魔力を感じます。クラウス様が召喚した聖獣なので、いつかそうなる気はしてましたが…随分と早い侵食で…驚きが隠せません 」
『 ちょっと…待って。順を追って説明してくれなきゃ…分からないんだが… 』
主との繋がりを強く持つ事は良い事だと思っていた
だから、魔力の交換も何一つ違和感を抱かなかったのだが…
それによって俺が、聖獣ではなく魔物みたいになってるってどういう……
「 ……アルト。貴方…前にやって来た雷神の神力を(ほぼ)失ってるということです 」
『 ………は? 』
それはつまり……
本来なら、解けないはずの繋がりの魔法すら…
消えかけてるってことなのか…?
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