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二章 宝物捜索 編

10話 壊れたらしい

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『 クララ!みーつけた 』

お巫山戯気味に、品を眺めていた彼の目の前に現れるようにひょこっと顔を覗かせれば、驚く素振りを見せることなく、彼は店員へと視線を上げた

「 これを頂けるか 」

「 まいど! 」

『 何見て……。わおっ… 』

スルーされる事には慣れ始めた為に、何を見てるのか気になって彼の手元と置かれてる物に視線を落とせば、そこには本来ならガラスケースにでも入ってそうな程に高価な宝石で作られた、ジュエリーの数々があった

袋に包むことなく、金だけ渡したクララはこちらを向く

「 ほら、アルト。こっち向け 」

『 ん?うん…… 』

なんだろ?と疑問になり、彼の方へと向けば両手を伸ばし、首へと一瞬冷たい感触に肩を揺らせば、彼は満足気に口角を上げる

「 中々似合うじゃないか。流石犬 」

『 チョーカー……。あ、ありがとう… 』

革の紐で作られたレザーチョーカーを付けられ、中央には骸骨があり目には深海のような青い宝石が埋め込まれていた

「 魔晶石だ。魔力を増幅させる効果がある 」

『 へぇ……。増幅させていいのか、疑問だけど… 』

宝石とは違った雰囲気だから、何となく別物とは思ってたけど…

まさか、魔法使い等が能力を上げる為に使う魔晶石とは思わずに、ちょっとだけ驚けばクララは店を立ち去るように歩き出しながら答えた

「 今の御前は、強くなる為に貯蔵出来る魔力を増やす必要がある。聖獣はその貯蔵出来る魔力量が増えれば、身体も自然とそれに合わせて、直ぐに石に頼らなくて済むようになるんだ 」

『 えっとつまり…クララは態々、俺の胃袋を大きくさせたってこと?大丈夫なのかよ、そんな事をして… 』

月日を掛けて魔力の貯蔵量は増えていくと思ったけど、敢えてアイテムによって強制的に増やす事に驚けば、クララの脚は止まり振り返る

「 今の御前は、俺の持ってる魔力量の二割も食えてない。未熟過ぎるんだ。だから其れを八割まで増やしてやる 」

『 なんで…… 』

魔力を食われる量が増えれば、それだけ契約者である主の負荷が大きくなる

只でさえ、手合わせの際に魔法や回復をガンガン使って消耗させてるはずなのに…

クララの言動に疑問を抱けば、彼は真っ直ぐに俺を見詰めてハッキリと告げた

「 俺の元にいる間に、御前を上級にさせてやる為さ。俺の聖獣が使えないなんて、誰にも言わせねぇようにな 」

『 !! 』

分からない…
急にそこまでしてくれる優しさが一体どんな風の吹き回しか分からないが…

もし、俺が…クララと向き合おうとしなければ、
彼は俺を強くするなんて考えもしなかっただろうな

嬉しさを堪えるように、チョーカーに付いてる骸骨に指先を滑らせ、視線を落とす

『 無茶苦茶だな…。中級に上がったばかりの聖獣を、一人の人間が上級にするなんて… 』

「 御前は、本当に何も気づいてないんだな 」

『 え……なにが? 』

クララの言動はいつも滅茶苦茶だと思うから、今回もそれなんだと思っていたが、彼は背を向けて歩き出し、重要な事をサラッと答えた

「 俺は魔族だ 」

『 !! 』

「 死する人間の負の感情から生まれた、魔力そのものだ。人は俺のようなものを…
゙ 魔王 ゙と呼ぶ 」

不思議だった疑問が、溶けた気がした

何故…武装が使えるのか

何故…人間離れした魔力を持ってるのか

何故…人間離れした強靭な肉体を持ってるのか

それは全て、彼が…人間ではなぐ魔族 ゙だからなのか…

「 安心しろ。俺は御前より遥かに強い 」

『 っ……分かった。クララの言葉を信じる。でも、急に魔力が底をついて死んでも知らないからな! 』

「 それはない。魔人が死ぬのは…対魔族用の呪いの込められた武器だけだ。そんなもの、有る場所なんて一部だけに限られてる 」

シロと同等の強さを持つクララが、殺られる武器と聞いたら少しだけ気になるけれど、彼はそれがありそうな場所は言わなかった

言う必要がないのか、それとも知られたくないのかは分からないけど…

俺はそれ以上に聞くことをしなかったんだ

其れからクララは、何を考えてるのか知らないけど、俺に新しい魔剣をプレゼントしたり、ブーツの様な靴を新調してくれた

そんな買い物を終えてから、服屋に戻ってから一着だけ、その場で着替える事にしたんだ

『 じっじゃーん!クララ、どう?似合うか!? 』

腰パンでもないズボンから出てる尻尾を揺らして、モデルのようにポーズを決めれば彼は俺を見ることなく店員と会話する

「 支払いを頼む 」

「 はぁい! 」

『 いや!!感想を!!! 』

もう少し、似合うなーとかいいじゃないか、とか期待したのに…
それが全く無い事に、肩を落として落ち込んだ

『 まぁいいけど…クララだし…… 』

さくっと支払いを終えてから、歩きながら昼飯が食える場所を探す彼の少し後ろをトボトボと歩いて着いていく

「 昼飯、此処でいいか。ほら…情けない姿をしてないでしゃきっとしろ 」

『 あいあい……( まぁでも、この服装も武器も、アクセサリーも…お供え物として神の庭ディヴァインガーデンに持っていけるから…それはかなり嬉しいけどな )』

クララがくれたもの…
それは、他の普通に買って着る服よりも明らかに価値のある物に変わりない

此れからは、俺の固定された格好…つまり、コスチュームになるわけさ

『( フフンッ!シロにカンフー系になった俺を自慢出来る!シロなら格好って言ってくれるはず!! )』

ぬいぐるみによる通話の機能はまだ使ってないけど、その時には話すことをせず
会った時に服装を見て褒めて欲しいなって思った

『 ……クララって、案外食うよな 』

「 そうでもないが 」

『( いや、頼み過ぎじゃね…… )』

シロとの出会いを妄想してたら、いつの間にかレストランのテラス席の上には、ズラっと並ぶ大皿と肉やハンバーガーの数々に若干引いた

いつもはスポンジみたいなパンとスープか蒸かしたジャガイモしか食ってるイメージ無いから、困惑する 

「 いただきます 」

『 もしかしてだけど…。あの船に乗ってる…コックって料理下手? 』

金が無さそうなわけでは無いから、ここに来てまともな料理を見てない事を思い出して聞けば、ハンバーガーを大口で食べたクララは口端についたソースを舌先で舐めて、小さく頷いた

「 そりゃ、海賊だからな 」

『 俺が料理作ってやろうか…。多分…数百年振りだけど、蒸かしたジャガイモ以外は余裕で作れるぜ… 』

「 必要ない。食える時に食っていれば問題ないんだからな 」

『 大アリだろ… 』

ご主人、食い溜めは出来ないと思います…


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