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二章 宝物捜索 編
08
しおりを挟むデルの部屋へと戻れば、彼は先にあるものを探った
「 どこでしたっけ…えーと…… 」
『 何を探してるんだ? 』
「 貴方が呟いた、名前で思い出したのですよ… 」
『 え?俺が呟いたって…。フリーレン…? 』
しっかりと聞こえていたんだと思うけど、彼にまつわる物がある事に驚けば、タンスに入った服をひっくり返して、探したデルは見つけたらしく、小箱を取り出す
「 有りました。これです。保護の魔法がかけられてるので…そこまで古くないのですが、見覚えはありますか? 」
『 ん? 』
黒に金の装飾がされた宝箱のような小箱を向けられ、獣の姿では受け取れない為に人型になって向き合うように立ち、そっと両手を向けて受け取る
『 開けていい? 』
「 どうぞ 」
許可を貰えば中央にある金属部分の金具を外し、そっと箱の蓋を開けば驚いた
『 あ……、これ…… 』
中に入っていたのは、赤いリボンだった為に凄く見覚えがあって、そっと触れようとすれば、リボンにかけられていた魔法が発動したのか、紫に光った
『 ふぁっ!!? 』
辺りを一瞬、光が包み込んで驚けば、目の前にいたはずのデルの声色が変わった事に気付く
「 百年…いや、それ以上振りでしょうか 」
『 っ…デル……いや、バトラー…!? 』
声に気付いて顔を上げれば、そこには髪の長さは変わってないものの、髪色がクリームイエロー色の髪にルビーよりも綺麗な赤い瞳を持つ彼に驚いて、一歩下がる
そう、デルの姿がシルキー妖精である、
バトラーに変わったからだ
「 えぇ、お久しぶりですね。…ナイト…いや、今はアルトとお呼びした方が宜しいですね 」
『 うえっ、え……待って、なんで…。シルキー妖精は屋敷から、動けないはずだけど… 』
色んな質問があるけど、一番先にシルキー妖精が移動の多い船の上にいることに驚いて、そっちが真っ先に気になって言えば、彼は緩く笑って指先をリボンへと向けた
「 フリーレン様や貴方がいなくなってから少しして、私は役目が消えて、消失しかけたのです。そんな時に星詠みの魔法使い…シャルル様が戻って来て、私の記憶と能力をこのリボンに移し、姿を人間の子供へと変えたのです 」
『 子供って……魔法使いの、ってこと? 』
魔法使いは長命であることは知ってたけど、まさかバトラーの姿を変える事まで出来るとは知らなかったし、そこまでシャルルが俺達に気にかけてた事が驚きだ
「 えぇ、シャルル様の弟子として過ごしていましたが…大雨が降り始め国を移動し、私は彼の元から離れて、幼い姿でクラウス様のご家族の船に乗り、航海士になったのです 」
『( この部屋が濡れないのって…。やっぱり、バトラーの魔法だったんだ… )』
一度に多くの情報が頭に入って、ちょっとだけ置いて行かれるような感覚だけど、納得するような部分もあるから小さく頷く
「 フルーレン。その言葉が記憶を呼び起こすきっかけとなる魔法…言わば、言葉にしてたので、全て思い出す事が出来ました 」
魔法使いの弟子として生活し、シャルルはきっと船の上にいれば多くの者と出会うからって理由で乗ることを進めたんだと思う
会えるかも分からない、聖獣である俺と出会わせるために……
『 思い出させて良かったのか…凄く悩むな。デルは…航海士だったのに 』
「 宜しいのですよ。私はもうシルキー妖精ではありません。記憶の魔法使い。デル•アンスブラントには代わりありませんから 」
そっと手を伸ばし、俺の頬へと触れてきたバトラー…
いや、デルの言葉に、鼻先が痛くなった
『 っ…フリーレンが力を失った後…俺はもう一度、この世界に呼ばれた時には、あの時の敵は…勇者に、半殺しにされて大切なものは別のところに行ってて…。俺は…何も出来なかった…寧ろ、世界をこんなめちゃくちゃにして… 』
ジョセフの魂をもう二度と…この世に生まれないようにしただけで、俺は何一つ出来てはいなかった
『 バトラーやネロに会いに来るって約束したのに……あの家も…分かんなくて… 』
我慢の限界で、涙が頬に流れ落ちて子供のように泣いてしまえば、デルはそっと頭を抱えるように抱き締めてきた
「 いいですよ。貴方は聖獣…変わり行く国を知らなくとも。それにフリーレン様がいたあの屋敷は、彼の魔法がかけられていたので、地図で場所を把握しても辿り着けませんから…。来ようと、国を心配してくれてたお気持ちだけで、十分…嬉しいですよ 」
『 うぅっ……うあぁっ…… 』
優しい言葉で、気にかかっていた靄が晴れたように救われた
嬉しい、その一言で会いたかったという気持ちが溢れて、よく分からないぐらい泣き付いたけれど、デルは何度も頭を撫でてくれた
ほんの遊び心で彼の髪を赤いリボンで結んだのに、それを気に入ってくれてたのも嬉しかったんだ
聖獣である俺が、もう一度…人間界の住民に会うことは望めない事かと思っていたけど、
精霊であり、長命な魔法使いとなったバトラーだけは会えることが出来た事が嬉しかった
「 少し立派になりましたね、アルト 」
『 ん……!! 』
ここに来て、誰と褒めてはくれなかったからこそ、彼の言葉は嬉しい以外にない
何故、彼の傍が心地よくて…
どこか知ってるような雰囲気があったのか疑問に思ってた事にも気付いた
フリーレンと彼と親しい精霊はよく似てるからこそ、その気配を感じてた
でも妖精では無くなってるから、分からなかったんだ…
「 もうそろそろ、泣きやまないと…キスの一つぐらいしますよ? 」
『 ……して 』
「 おや、愛らしいですね… 」
緩く笑った彼が頬に手を添え、僅かに顔を上げさせれば、薄っすらと目を閉じた後に頬へと触れる程度の口付けが落ちる
『 んん……バト……デル、会いたかった… 』
「 えぇ、私もです… 」
もう一度、お互いに抱き締め合ってから笑みを向け合った
彼の立場は前とは違うけれど、再会できた事にシャルルに礼を伝えたい程だ
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