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二章 宝物捜索 編
8話 思ったより深刻らしい
しおりを挟む『 ッ!! 』
今迄、言葉による暴力を向けて来た主は何人か居たけれど、
それは俺自身が役立たずで、敵に対して力が及ばない場合だったから仕方無いと納得してた
けれど、今回ばかりは理解が出来ない
痛覚を失ってるとは言えど、振った鞭と共に浴びせられる言葉は誰に対して言ってるんだ…
俺か?俺へなのか??
「 誰が召喚してやったと思ってんだ!?テメェは俺の犬だろ!他人に尻尾振ってんじゃねぇよ!媚びを売る雌犬か!? 」
『( は?俺は…聖獣なんだが…? )』
風を切る音と共に、傷付く身体、床や壁に飛び散る血と共にふらつく脚をしっかりと踏ん張って耐えながら、
彼の言葉を理解しようと、思考を止め無いように考えた
「 この駄犬が!テメェの様なプライドもクソもねぇやつを召喚したのが間違いだった 」
『 グッ…!( 疲れてるだろうからって…見張り交代してやろうかなって思っただけじゃん… )』
戦闘が終わった直後、放置してたくせに
俺が何処かに行くの怒るのか?
意味分かんねぇ…
少しは頭が切れて、周りから慕われるキャプテンって格好いいと思っていたけど、
こんなにも理不尽極まりない理由で暴行してくる奴なら、俺は殺してもいいんだけどな…?
『 犬、駄犬…ふざ、けんなよ… 』
「 あ? 」
流れる血は止まり傷を全て癒やし、冷気によって毛が固まって行くのを気にする余裕もなく、落としていた目線を上げ男を睨む
『 人間風情が…聖獣であるこの我に、其れ以上侮辱してみろ。その喉元食い破って、身を氷で穿いてやるぞ 』
「 はっ、やってみろ。テメェみたいな犬っころに俺が殺られるわけないだろう 」
人間…特に契約した主を殺すのは良くないが、駄目だという規則はない
駄目な主なら、もう一度やり直して転生しろと言ってもいいんじゃないか
この新しい魂と、これから何度出会うかは知らないが…
シロから褒められて愛されてる俺の事を、侮辱する事は許さない
鞭を捨て、代わりに腰にぶら下げていた鞘から細い剣を抜いたクララは其れを中途無く向けて来た為に、俺もまた牙を剥く
『 グルル…… 』
「 どっちが立場が上か、教えてやる 」
彼の身体から感じる黒い影を見て闇属性を持ってるんだと察しながら、何方ともなく身体は動いていた
「 キャプテン失礼しまーす…って… 」
『 グアッ!! 』
「 はっ、駄犬が! 」
此処まで契約した主に歯向かったのは、あの人を思い出す
だが…それとこれとはまた別だと思い、
他のクルーが扉を開けたのを気にもせず、俺は…いや、俺達は本気で喧嘩していた
「 キャ、キャプテン……… 」
『 誰が駄犬だ!?俺には立派なフェンリルって名前があんだよ! 』
「 フェンリルゥ~?こんなちっさいフェンリルがいるわけねぇだろ! 」
『 言ったなぁ?クソガキ!!! 』
「 チビ犬に言われたくねぇよ! 」
ギャンギャン文句を言いお互いの攻撃を避けたり受けたり、部屋のテーブルや椅子を破壊してももみくちゃになっていれば、
騒ぎを聞きつけたクルーが次から次へとやって来た
「 おいおい、なんの騒ぎだよ 」
「 キャプテン…深夜になにやってんすか 」
「 あの犬…じゃなくて聖獣も、なにやってんだよ 」
「『 部外者は引っ込んでろ!! 」』
「「 あ、アイアイ…… 」」
二人揃って彼等を睨めばクルーは一歩引いていたが、直ぐにお互いの攻撃を続行し距離を離れた後に、俺は能力を使った
『 氷連爆 』
「 黒魔鏡 」
氷の爆弾を向ければ、彼の目の前には突然と大きな黒の縁に髑髏が所狭しに装飾が施された鏡が現れるなり、
それに吸い込まれるように爆弾は消え、鏡は何事もないように光った
「 返してやる 」
『 ッ…!氷壁! 』
ハッとした時には氷の爆弾は、ドス黒い固まりとなって鏡の中から出て来た為に瞬時に厚みのある氷の壁を作れば、ぶつかって来た
強度が上がって割れなかったが、厚みの半分までは埋め込んだ黒い球に驚くも、
其れよりも壁を超えて横から剣を持ったクララが向かって来る方が恐ろしい
『 全てを氷らせる氷河の力。我に与えよ、この身に宿る魔力を糧に……氷結の牙狼!! 』
「「 !!! 」」
もう少し、人の姿になるのは止めとこうと思っていた
こき使われたく無いってのもあるが、ペットとしての定位置の方が気兼ねないんじゃないかって…
でも、流石に剣を振りまわす人間相手に獣の姿は無茶過ぎるから、
此方も剣を使うしか無くなった…
「 ほぅ?御前…中々綺麗な顔立ちをしてたんだな 」
『 お褒め頂き光栄です。我が主…なんて言うかよ! 』
重なった刃と共に、俺の顔を見て密かに笑ったクララの剣を弾くなり、その腹へと蹴りを入れれば受け身を取った彼は闇属性の武装をし壁を突き破り、甲板へと出た
『 っ…( 人間も武装出来る時代なのか!? )」
「 この俺が褒めてやったんだ。素直に喜ぶべきだろう 」
聖獣や精霊が殆ど存在が確認されてない時代
絶滅寸前の人間が生き残る術に、その能力を開化させた者が現れたのなら、
それは聖獣や精霊と同等の力を持つんじゃないか
『( クララは、人間なのか……? )』
その身体を纏う死神の様なコートの裾は影のように揺れ動き、顔に付けた角の生えた獣の様な骨、剣の形が大鎌へと変わるのを見て、全身の毛が逆立つのを感じた
「 久々に見た…キャプテンの武装。
神の処刑人
…この海の上でキャプテンに敵う者はいないだろうな… 」
『( 神というか、悪魔でしょ!?サタンの方があってると思うけど!!? )』
そりゃ、死神は神の使いとか言うけども!
めちゃめちゃ闇属性なのに、神って付くの何!?
まだ、シロやライフの方が凄くキラキラした神様っぽいからな!!
「 俺を本気にさせたんだ。遊んでやるよ、馬鹿犬が 」
満月の月明かりの下、死神の姿をした我が主は、
その仮面の下で悪魔の様な笑顔を向けてるのだろう…
『( 降参してもいいかな?? )』
この人に、俺必要なくね?
なんであんなモンスターに怪我してたの??
その理由を先に教えてくれますか!?
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