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二章 宝物捜索 編

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『 っ……はぁ…… 』

戦い続けて、身が朽ちていくような感覚と共に胸に残る消失感に涙が溢れ、獣の姿のまま地面へと涙を流した

『 っ、ぁあっ……くっ…… 』

今まで見届けたどんな主よりも、辛いと思うのは何故だろうか
俺が此処まで成長する為に、与え続けてくれた魔力の塊が消えたような感覚に、地面へとシミを作る

「 御前の成長速度が速い原因がやっと分かって安心した……。あんなに魔力食らってた奴が主なら、そりゃ一人分以上あるな…… 」

「 兄貴、今…それを言うもんじゃねぇぜ?共食いしてた奴の魔力を貰ってた……あ、いや! 」

「 ……事実だろ。だが、それで御前が望んだように直ぐに強くなれてたならいいじゃねぇか 」

腹に触れやって来たシロは格好を解除するも長い髪や前より大人びた雰囲気は変わること無く、彼は長い髪に触れ、嫌そうに眉を寄せる

「 邪魔だ……羽諸とも、削ぎたい 」

「 止めとけ! 」

地面を擦る程に大きな翼には装飾がされ模様だって消えることがない
黄色かかってはいるものの、比較的に白に近い羽に溜め息を吐いた彼に、涙目で素直に告げる

『 長い髪も似合うし……俺は好きだよ? 』

「 このままでいる 」

「 ちょろいな…… 」

死神の姿をしたファルサラッとツッコンだ後に話を戻した

「 つーか、終わったけど……御前って天界に行くのか? 」

「 嗚呼、どうなんだ?ライフ 」

『 んっ…… 』

流れる涙のまま、顔をあげれば目の前に現れた、ライフは普段より少し落ち込んでるように見えるが、直ぐに柔らかな笑みを浮かべた

「 それは選ぶと良い。天界に行くか、神の庭に戻るか……最高神になった御前に神からの言葉はない 」

「 そう言うものなのか?なら俺は……コイツの傍にいる。最高神だろうが、番だからな 」

『 シロ…… 』

馬鹿みたいに俺が魔法を受けて怪我して、それに怒ってたのに許してくれるのか
嬉しくて、人の姿へと変われば涙と鼻水を擦り付けるように横腹から抱き付けば、彼は呆れたように頭に手を置く

「 御前みたいな奴には、俺が傍にいないと道を外すだろ?泣きたいだけ、泣け……傍にいる 」

『 ふぇ…… 』

「 じゃ、神の庭に戻るとして……。コイツ等の主は誰になるんだ?兄弟にしては扱えないだろ 」

ファルの言葉に、確かにそれは思い顔を擦り付けながらライフへと視線をやれば彼は眉を下げては答えた

「 兄、テールはそのままだが。弟、シエルは育てていた主に過ぎない。だが、もう主には変わりない。このまま死ぬまで側にいると良い  」 

『 側にいていいんだ 』

ライフの直ぐ後ろには、聖獣の姿に戻れたルナールやミューとヌシみたいな姿があった
彼等は其々に此方を向いて、笑顔を向けてから魔法陣の中へと消えていく

俺は、このままシエルの側にいていいんだと分かり、嬉しくなればシロは頬に両手を当てた

「 俺は先に戻る。テールの事は任せたぞ 」

『 うん!任せて! 』

「 後、此れはテールに渡してくれ。短い間だが、聖獣がいた証になる 」

シロは自らの羽の中から一本を引き抜き、それを渡してきた
これをテールに渡せばいいんだ
彼が、プレゼントするぐらいには少なからず記憶に残るような少年だったのだろう

「 それじゃ、別空間を解除するな 」

「 嗚呼、コウガ。またな 」

『 おん!二人は任せてくれ! 』

いつのもの場所で……

そう言い残したシロは魔法陣なんて使うことなく、光のように淡く消えた
少しだけ、立ち去った場所を見ていればライフは告げる

「 そんな寂しそうな顔をするんじゃないぞ。あやつはもう自由の身。それはある意味、神と等しき存在なのだ 」

『 どういうこと? 』

「 まぁ、簡単に言えば法律を変えれるような、すげぇお高い奴って事さ。ブランシュはそれだけの権力を持ち、自由なんだ 」

疑問符を抱いた俺に、ファルはざっと教えてくれたが……
その意味が分からないわけじゃない
少しだけ寂しいんだ

シロが…どんどん、俺が追いつかないような先へと進んでしまうのを実感するから

共に並んで歩くなんて事は、もう出来ないような方になったのだろうな……

『 そっか、俺も帰ろう…。シエル達が待ってる 』 

誤魔化すように笑って彼等から背を向ければ、ファルは少し溜息を吐いて解除の言葉を告げた

目の前が真っ白に染まり、直ぐに薄暗い森が広がってることに終わったのだと思う

「 ルーナ!終わったんだ! 」

『 シエル……そう、終わったんだ。そっちは無事だった? 』

「 無事だけど……あれ、ソレイユは? 」

二人は地上に降りていたらしく、俺を見るなり駆け寄ってきた
けれど、近くにシロ……ソレイユの姿が無いことに首を傾げた

『 ソレイユも無事だけど、他に用事があるからって帰ったよ。テール、これ…ソレイユからのプレゼント 』

俺はテールに羽根を差し出せば、それだけで理解したのか手に取り太陽が昇る空へと翳した

「 そっか、ソレイユは太陽になったんだ。うん、確かに受け取ったよ…ソレイユ 」

光によってキラキラと輝く羽根は、ソレイユの今の姿を現してるように思えた

それから、俺はソレイユの分まで一時も離れる事なく二人の側に居て
ファルは主と共に、また旅へと出掛けた

幾年の月日は流れ

テールは王様へとなり、
シエルは勇者として王様に仕える者として、
その力を王の為、国の為へと使っていた

二人とも美人の妻をもらい、
可愛い子供に恵まれ、俺は守るものが増えた

けれど、家族と呼べる彼等に笑顔を向けても
心では笑ってない事をシエルは気付いていた

「 ルーナ……。ソレイユは、きっと…キミを一人にはしないさ 」

『 ………そうだといいな 』

ベッドに横になるシエルの周りには涙を浮かべる子供達や孫がいる

俺は空いてるスペースに顎を乗せて見ていれば、剣ばかり持って治ることないマメ出来た分厚い手は俺の頭を撫でて、優しく言葉を繋げた

「 やっと会えることを喜ぶんだぞ……。随分と…こっちに引き止めてしまったから…… 」

『 ……シエル達の側にいることは苦では無かった。此処に引き止められてるとも思ってないさ。俺は、シエルとその家族が大好きだから 』

手に頬を擦り寄せ、姿を幼い人型へと変わり、
その手を取り、顔を向き合うように被されば
シエルは、目元に涙を流し笑みを浮かべた

「 そうか……。ありがとう……ルーナ……。そして、我が子と…愛する孫達……オレは、幸せも者だ…… 」

『 我が主、新たに生まれ変わり、巡り会うその時まで、このルーナ。忘れる事なく会える日を楽しみにしています…… 』

額へとそっと口付けを落とせば、
シエルもまだ 会えるといいな ゙と言葉にならない声で呟いた

命の灯火が消えた瞬間、契約が解除された事が合図のように分かり、ベッドから降りれば魔法陣が現れる

『 それじゃ、俺も行く……。俺がいなくとも…この国を…守っていってくれ 』

「 っ……ルーナ…また会える!?会いに来てくれる!? 」

『 俺は本来此方側の獣じゃない、時間の感覚もズレてるから分からない……約束はできないんだ、ごめんな 』

「 そんな…ルーナはずっといてよ! 」

「 よせ、帰してやるんだ。やっと任務が終わったんだから 」

任務とは思ってないんだが……と言おうと思っても泣き付くシエルの孫を引き止めてくれた彼の父親に、
軽く頭を下げてから召喚獣の姿へと変わり、ゆっくりと魔法陣の中へと沈むように入っていく

『 シエルの子孫達。御前達と過ごした日々は忘れない 』

「 やだ、やだ……ルーナ!! 」

俺はどんなに一緒にいたくても、契約者が死ねばこの世から去る必要がある
その場で別の契約者への変える事が出ないんだ

もし、孫に力があるなら……俺を呼べるだろうが……

俺も少し疲れた…ゆっくり休みたいよ

『 っ………シエル……… 』

神の庭に帰ってきた事に実感し、涙を流し、
足取りが重いままソレイユのいる場所へと向かった


けれど、そこには何も無かったんだ……


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