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二章 宝物捜索 編
06
しおりを挟むランケを捜索しても見付からなくて
夜は危険だから諦めようって事になり
満天の星空の下で、休息を兼ねて休むことにした
持ってきていた寝袋を広げて、眠る兄弟の横にはドラゴンであるシー・グリーンが眠っている
こんな森の中で落ち着けるのは可笑しいけど、森でデカい魔物に会う恐怖に比べたら、ずっといい
それだけドラゴンの存在が大きいんだなって思いながら、岩へと凭れ夜空を見上げる俺は満喫していた
「 眠れないのか? 」
『 ん?まぁ……ちょっとだけ……。星が綺麗だから 』
獣の姿で横たわっていたソレイユは片目を開いてから、首を持ち上げのっそりと起きればそのまま人の姿へと変わり、横に腰を下ろし座る
「 確かに綺麗だな……。御前の氷の結晶みたいだ 」
『 氷とは違う綺麗さがある。あれは、実際は全部隕石なのに…… 』
「 そう言うものに人は引かれるのだろ。手には届かないものに 」
片手を上げて星を掴むような動作をした彼の横顔を見てから、片手を腹下へと当て肩へと凭れる
届かないものを欲して、願って、得られないことに落ち込むのもまた人間
動物なら、さっさと切り捨てて、次の繁殖の準備をするだろうけど
俺達には切り捨てても、得ることは出来ない……
こんなゆっくりな生活で、いつ玉を取り戻せるか分からないからこそ不安で仕方無い
『 手に届くものがいい……。家族も……物も……。触れないものは、綺麗だと思うけど嫌い…… 』
「 形有るものが全てじゃ無いが、御前には手に触れて実感できるものがいいんだろうな 」
手の甲へと、片手を置いたソレイユの言葉に眉を下げ自分の我儘に呆れる
そんな顔をさせたく無いのに、触れる物を求める俺には、きっと彼の考えは分からない
『 星は確かに綺麗だよ……でも、触れることが…… 』
手を伸ばそうとした片手は握られ、彼は何かに気付いたらしく俺の後頭部を支えた瞬間に地面へと押し倒した
「 っ……!! 」
『 いっ……っ…… 』
驚いた瞬間に地面へと背中が辺り、右の頬に感じる痛みは自分がヤられたのではなく、ソレイユの頬に傷が付いたのだと知る
「 起きろ!!敵だ! 」
「 んっ? 」
「 なぁに? 」
俺から離れて、声を上げ兄弟を起こしたソレイユから感じる魔力に戦闘体勢に入ったのだと分ければ、彼は雷鎧を身に付け腰に差す剣に触れる
『 ソレイユ!敵って……? 』
「 魔力をガンガン使ってたから、魔力を求めて来るとは思ってたが……夜なんて、御前らしくないな…… 」
敵の方へと視線を向けるソレイユに、兄弟もまた異変に気付き起き上がり、シー・グリーンは二人を守るように前へと移動する
俺だけが、誰なのか分からず暗闇をじっと見詰めれば森を引き摺ってきたような音が徐々に近付き、そして枯れていく事に目を見開く
「 綺麗……?なにが…綺麗なのか言ってよ……ボクに教えて……うつくしくないんだ、なにもかも……美しくない…… 」
その声に聞き覚えがあるが"二種類"が混じった声のトーンに、足元からぞわっと鳥肌が立ち毛が逆立つのが分かる
氷鎧を身に付け、戦闘体勢になる俺は剣へも片手を当て近づく影を見れば
虎のような大きな茶色の前足は地面を踏み、上半身を見れば息が止まった
『 っ……ジョセフ……? 』
「 凄く久々にその、名を聞いたよ……ジョセフ……そう、ジョセフ……ボクは、ジョセフなんだよ……ノワール 」
『 !!! 』
虎の前足と胴体を持ち、上半身は若い青年の姿をしたジョセフであり枯葉を付けたような茶色の髪に、頬やら手足に魚のような鱗があり、下半身から後ろは狼の脚があり、尻尾は孔雀の様に枯れ葉や蔓を引き摺っていた
身の毛がよだつ外見に吐き気さえ感じ、口元に手を当て息を詰める
「 ジョセフ?あの錬金術師か?なら、合成したのはランケ……成り下がりの聖獣か 」
「 ははっ、美しくないよねぇ……君のせいだよ、ノワール……どのぐらい合成したか覚えてないよ……ねぇ、ノワール……ボクは……うつくしい? 」
ソレイユの言葉に聞く耳すらもたず、ジョセフとランケが重なったキマイラの言葉に眉は寄り言葉に詰まった
到底、美しいとは言えない枯れ葉のような姿
若いのは見た目の外見だけであり、衰えてるように肋骨は露になり、背骨までくっきりと見える
筋肉や脂肪のない、痩せ細った身体に似合わないほどがっしりとした獣の胴体は別にくっ付けた感がある
そんな、姿の……どこが……美しいと言えるのか……
『 醜い…… 』
「 成り下がりの聖獣を含んだ時点で醜い死に損ないだ。俺の番を泣かせ、子を奪った恨み……はらさせて貰うぞ 」
「 醜い?誰が、誰がこんなことにしたと思ってるの!!?御前だ、御前が全部悪い!!黙れ、雷程度しか操れない、子犬風情が!! 」
この距離でやっと、成り下がったランケの母体に、幾つもの聖獣と人の魔力が感じられそして彼等の悲鳴や苦しむ声が頭へと直接響くように聞こえてくる
助けてほしい、痛い、苦しい……その言葉に耳を塞がりたくなり手の平を握り締め告げる
「 ほざけ、継ぎ接ぎの人形が!!雷吼!! 」
「 邪魔だ!樹海喰! 」
魔法を発動してぶつけ合った彼等の風圧で吹き飛びそうになりならがも堪えては、ソレイユに任せて主達を優先する
『 シー・グリーン!二人を遠くまで頼む 』
軽く頷いたドラゴンの背中へと二人が乗り、離れればそれを見た後にソレイユは笑みを溢した
「 魔力解放……雷神の鎧 」
ピアスが消えた瞬間に、落雷は降り注ぎ
剣は大きなハンマーへと変わり、片手で担いだ彼の身体には見た事の無い鎧がある
これが、雷神であるトールの鎧を得た聖獣の力なんて……
「 邪神の鎧……ロキ 」
けれど、只の人間でありながら元々魔力のあった錬金術師が聖獣と合成すれば、どうなるかは想像がつく
それはきっと……最高ランクであるソレイユと匹敵する強さだろう
俺が、手を出せるか分からない境域だと察することが出来る
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