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二章 宝物捜索 編
04
しおりを挟む改めて三人とも少年の姿
軍服二人に、俺は魔法使いが使うローブの上に羽織るマントとシャツに腰パンの細身のズボン
こうやってみると、護衛してる騎士二人と一緒にいる魔法使いの弟子みたいな謎の感覚はあるが、十分に満足な為に座り直し話をする
『 そう言えば、聖獣召喚の時って……ソレイユは本体じゃなくて小さくなって現れるだろ、なんで? 』
ふっと、話の合間に気になっていた素朴な質問を投げ掛ければ、二人の視線は此方へと向く
「 嗚呼、昔な……。召喚された時に室内だったらしいんだが、本来の姿で出たら家を壊してな、大騒ぎになって止めたんだ 」
『 あ、うん。想像できた 』
「 それに明らかに書物にある雷鳴の巨狼なんて姿だと、一気に噂になるからなぁ…… 」
確かにソレイユは洞窟並みの大きさがあるし、あれだって体高十五メートル位だろうか、本来の大きさとはわからないが……
「 俺は逆に、死神なんて言われてるからなぁ。現れるときはあの人型の死神姿だぜ 」
『 あ、態と見せるのか! 』
「 そそっ、犬の姿は好きじゃねぇから 」
やっぱり犬ってことは気にしてるんだ、それも見せた事が嫌だったみたいに視線を逸らした
『 でも、聖獣の姿を見せてあ!この名前のだー!って分かるもん? 』
「 そりゃ、分かるよな? 」
同意を求めるようにソレイユへと視線をやれば、彼は軽く頷いた
「 嗚呼、数百年に一度、知恵を司る神が勝手に聖獣五十種、みたいな本をバラ撒いてやがるからな 」
『 待って。知恵の神とかいんの!?てか、バラ撒いていいもんなの!? 』
サラッと答えたソレイユに、ファルもまた頷くけど、聞き捨てならない!
性の神、生の神、時の神、なら聞いてたけど知恵の神!?えっ、そんな賢そうな神様が馬鹿みたいに本をバラ捲ってどういう事だよ
「 良いんじゃね?ほら、余りに古い書物は伝説になって、人間ってやらねぇから。良い感じの古さがある本なら試してやろうとするだろ? 」
「 戦後で本の数が減ったりすると、新しい本を世界中に五十冊ぐらいばら撒く 」
確かに伝説過ぎると、へぇー、みたいな特に思いもなく素通りする程度になるって思うのは分からなくもないが
だからって、本をばら蒔くって、それに聖獣は生の神の玩具だし
『 じゃ、俺もいつか聖獣五十種類の中に載るかな? 』
「 ある程度、全体のレベルとか変われば載るだろうなぁ、低ランク、氷属性、魔力レベル2とかで 」
『 うわ、やだ、その生々しい感じ…… 』
それでもちょっとだけ、聖獣としてのランクが上がったことを認めて貰えるなら嬉しいと思ったが、その本を知ってる者に会ったときの幻滅感を想像すれば、載りたくない
「 最高ランクの聖獣ならどんな事をした、なんて事も書かれるから、其をもった人間はうざいもんがある 」
「 分かる、これしてーみたいな 」
二人も経験したこと有るらしく、良い顔はしない
ふるふると軽く首を振って、幻滅される事を想像するのを止める努力をする
『 だから、尚更ソレイユは本来の姿にならないのか 』
「 嗚呼、出来るだけ目立ちたくねぇ 」
「 戦場でもまともに力も発揮しないもんなぁ。手合わせして驚いたぜ 」
確かに手合わせの時に、あんな魔法が使えるならランケと戦ったときも多少手加減してたし、リリアの時もそこまで本気じゃなかった
そして、今回テールが召喚師だとしても本気だとは思わない
「 戦わなくていいなら、出来りゃ静かに暮らしてぇもんだ 」
「 分かる!俺はそれで、此処からでねぇ!! 」
『 いや、出ろよ、引きこもり 』
此処って外の場所と時間が止まってんだろ、其なのに出ないってよっぽどの引きこもりだなって冷たい目を向ければファルはどこか必死さのある様子で答える
「 ルーナちゃん!此処なら好きな主が死ぬことなくずっと見てられるし、態々召喚されたり戦う必要ないだろ?飽きたら、ちょっと出て、人間の時間進めりゃいいんだから 」
「 好きな主なら良いだろうが、嫌いな主なら忘れた頃に此処を出ても、また顔を合わせるなんて苦痛だな。俺はさっさと死んでもらって神の庭に帰って寝てぇ 」
「 御前は主に愛情が無さすぎんだよ! 」
主が好きだからずっと居たい、それは確かに分かるけど此所は時間が流れてるようで流れてない
止まってるからこそ、顔を上げて外に出ればまたゆっくりと動き出したように世界の時計の針は進み始めたように思えるだろう
でも、ソレイユの言うように嫌いならさっさと死んで貰って神の庭に戻りたいのも分かる
切り取った程度の偽りの空を見上げ、今頃シエル達はカボチャを手に笑った瞬間なんだろうなって思う
『 俺はやっぱり……人の時間を感じながら傍に居たいな。だって、此処に引きこもっても誰もいないだろ? 』
「 っ、それは……だから、こうしてたまには人を連れ込んでるんだろ 」
『 へぇ~ 』
案外、寂しがり屋な事に笑みは溢れる
死ぬのが嫌だから時間を止める、暇になれば誰か連れ込むなんて
何処かのフェンリルと似てるなーと視線をやれば、彼は眉間にシワを寄せる
「 干渉されない人間界の空間か……ルーナと一緒なら悪くねぇな 」
『 おっ!それは一理ある 』
「 なら俺と一緒にいりゃいいじゃねぇか、主変わるかとねぇから召喚される必要もねぇし 」
「 いや、俺はルーナと一緒の空間を造ってやるよ 」
そこは一緒に居てやろうぜ、とか言ってやれ
なんかスゲー悲しそうな顔をしたファルが可哀想なんだが
其にしても、主が変わることなくソレイユと一緒にいれる空間か、悪くないけど
それってつまり……人の時間も止まったこの世界に止まるってことだから
とても、引きこもっぽいな
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