144 / 263
二章 宝物捜索 編
03
しおりを挟む目を合わせれば喧嘩をする、そんなタイプの兄弟かと思っていたのだが案外仲は良いようで
二人で一冊の召喚書を広げては、此所はこうだ、とかあれはこうした方がいい等の話を始めた
勉強熱心なのはいい事だと頷いているが俺達は暇な為に、シロと言う本名を隠したまま" ソレイユ "と新たな名が付いた彼は、凭れるよう横たわり
その重さに耐える気もなく、同じく横になれば
パートナーと早々に告げた為に、隠す気は無い様子で、顔をこちらに向け頬やら耳をしきりと舐めてくる
よっぽど同じ場所に召喚されたのが嬉しいのか、視線の端に見える尾は冷たい大理石の床を叩くように振っている
確かに俺も嬉しいが、舐められることに耳は下がり、気分は思ってる以上に盛り上がってない
どちらかと言えば下がってる事に、彼等に聞こえない獣の声で話す
『 なぁ、ソレイユ……俺だけだろうか 』
「 んー、なんだ? 」
口先やら頬を舐めていた彼は止め、呟いた言葉に傾げてはじっと金色の目は此方を見詰める
『 今までの主は、魂が廻り合い同じ人と言う感覚はあったのだが、今回の主には其がない。全くの別人なんだ 』
感覚を間違えてるだけなのか、それともフリーレンの魂はあのまま砕け散って廻ることが無くなったのか、どちらにせよ不安な気持ちがあり
視線を兄弟へと向ければ、ソレイユは彼等を見た後にふっと鼻で笑った
「 御前は初めてだったな 」
『 なにがだ? 』
「 " 似た魔力 "なら魂は違えど召喚は出来る。特に俺と魔力が交じり合ってる御前と俺に似た魔力……つまり血肉が同じ兄弟なのだろ 」
『 俺達を呼ぶ条件が血肉と魔力が同じ兄弟になってるってこと? 』
「 あぁ……御前の中に俺でいっぱいだからなぁ~? 」
自棄に甘々で嬉しそうな原因はそう言うことか!!
兄弟が呼んだことで、俺とソレイユの魔力が交じり合って、血肉と共に同じ魔力を持つ兄弟だからこそ、属性は違えど同時召喚が可能になった
もし片方の召喚でも、次に呼べる奴は二つの魔力が交じっても強い召喚師になると言うことか
確かに俺達も魔力が自動的に貰えるような契りを交わしてる
神の庭 では時が止まってるから、どれだけ交ざりあったかは分からないが
人間界で考えるなら其なりの年を得て、扱える者が現れた事になる
『 えっ、じゃ……もう前の主の魂とは会えないのか? 』
「 人間が転生する程に必要な月日が流れれば、会えるだろ。考えも見ろ、御前が帰ってきてから今回、呼ばれるまでは早くなかったか? 」
『 あ!確かに、いつもより早かった気がする 』
「 その感覚は間違いじゃねぇよ 」
フリーレンがまた転生して、次の肉体を得ては
俺を呼べるまでのほんの箸休め程度だと、思えばいいのか
時間はないにしろ、身体に刻まれた" 感覚 "は其なりに麻痺してないことに何処か安心していれば、ソレイユは腹を出し仰向けになる
「 分かったなら、人間界をまた楽しめばいい 」
『 そうだな……。でも……あの錬金術師とは会うか分かんないんだよな 』
探したいが、それは主から離れる事になる
ライフがそれはダメだと言ってたことが胸に引っ掛かって
人間界に早々に来たのに身動きが取れないことに、不満に思い
腹を見せてる彼の上へと被さり、顔へと頭を当て擦り寄せていれば、同じ様にしては優しく答えた
「 そうだな、待て、としか言えない。今は心と身体を休めろ 」
『 ……分かった、そうする 』
焦ったところで仕方ない、身体を動かし上から退けば、人の足音と共にソレイユは起き上がり姿を消し、其を見て俺もまた消える
「「 あれ、二匹は…… 」」
「 テール様!シエル様、こんなところにいたんですか!? 」
「 うげ、セバスチャン…… 」
「 不味い、バレた…… 」
大きな扉をバンっと開き、やって来たのは執事姿をした、獣感が六十%位の鳥の獣人
ワシの様な見た目で髪飾りが付いた格好に羽は腕へとなっていて、手の先は鋭く尖った爪を持ち、脚はワシのようにしっかりとしてるが裸足に見える
服は胴体の部分にタキシードを着てる程度で、残りは鳥のまま
『( ちょっと美味そう )』
「( 焼き鳥になりそうだ )」
きっとソレイユと同じことを思ったに違いない
「( 今、殺気が? )」
キョロキョロと見渡す顔はワシに見えるがマヌケ面
かっこよさは見た目程度だが、兄弟は好きではない相手なのだろ本を持ったテールは走り出した
「 逃げろ!! 」
「 勉強なんてオレ達で出来るし! 」
「 ちょっ、待ちなさい!!午後からは文字書きの勉強ですよ!! 」
セバスチャンと呼ばれた獣人が走る姿は、何処か白亜紀に生きていた様な、飛べない鳥が走ってるときと似てる
僅かに手を前に出し、翼を畳んで追い掛ける姿はまさに小さい小動物を狙う始祖鳥だった
何となくシルキー妖精だったバトラーがどれだけ、かっこ良かったか改めて思う
1
お気に入りに追加
2,197
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる