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一章 聖獣への道のり編
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オマケ ~ バトラーの想いらしい ~
フリーレン様が連れて帰ったそこまで大きくもない、犬のような狼
黒っぽい毛並みは光具合で灰色に見え薄汚い中途半端な毛色をしては、その瞳は似合わないほど澄んで青い眼をしていた
『 グルルル…… 』
第一印象、部屋で暴れまわってたのは彼の方なのに、何故か意味なく私の方が唸られた事でとても嫌いになった
こんな奴が新しい同居犬となると考えると今から頭が痛む
心の広く優しいフリーレン様が連れてきた犬、少しは同じ様に性格をしてるかと思えば全く正反対に見えるほど騒がしい
『 わー!!廊下滑る~!!あっ、あっちはなんの部屋だろ? 』
走り回ってはカーペットをもみくしゃにし、部屋を入ったり出たり繰り返しては楽しそうに他の事に興味を向ける
もう少し上品に過ごせなのかと思って居れば急に飽きたかのように眠り続ける
「( ……無防備ですね )」
傍でフリーレン様が本を読んでるから気にしないのか、身体を横たわらせ仰向けにさせ、腕を伸ばさせても起きる様子は無い
肉球は地面をよく走るのか硬くざらついている
「( あ、ダニ…… )」
直接、カーペットで寝てる身体には外から連れてはいったのか
皮膚ではなく毛にくっついてる程度のダニを見掛け、丁度良いと小瓶とピンセットを持ってきてダニを探っていく
「( 山ダニでしょうか。野生動物にくっついてるものだ…… )」
ピンセットで摘まんだダニを、薬の入った小瓶にいれどんなダニか見れば眉間にシワを寄せる
聖獣にしろ、その毛並みは獣のもの
ダニの良い住みかになってると知れば、次にハーブで作ったスプレーを持ってくる
「( 此で少しは寄り付かないでしょうね )」
腹側にスプレーを吹きかけ、身体を動かし背中側もしてから一旦その場に離れて様子を見る
『 ふぁ~、ん?この身体……良い匂いする!ふあっ!?尻尾!美味しそう!! 』
「( ハーブが御好きなんですね )」
余り獣は好まないと思っていたが、彼は好きなようで起き上がりその場で自分の尻尾を追い掛け回し、回転した後にふらつきながら呟く
『 なんで俺、無意識に尻尾追いかけてんだろ……。こわっ、本能…… 』
「( 変な犬だ )」
目について気になったから追いかけたのだろう
其も忘れて目を回す様子は呆れるしかない
「 バトラー、彼は聖獣だから料理は食べないよ? 」
「( あ、そうでした…… )」
此所に来て直ぐにフリーレン様とは別に共に出した犬用の料理、
肉を柔らかく煮込み茹でた野菜や焼いた玉子など乗せたステーキのようなそれを、置いた音でも聞こえたのだろう
彼は料理を食べてる手を一旦止め告げた
そうでした、聖獣だから料理は食べないのだと
少しばかり肩を落とす私は片付けようとすれば、ひょこりとテーブルへと顔を覗かせた
『 なに、俺の?食べていいの? 』
「 あ、はい……勿体ので処分してください。明日からは作りませんので 」
本当は嬉しいのに、きつく言う私の言葉
もっと別の言い方でもあっただろうと自身に呆れ、視線を落とせば彼の獣の尾は気にしてないように左右へと振っていた
『 間違えて作ったなら仕方無い。食べてやる 』
ふっと笑ったフリーレン様の表情を見れば、彼もまた態と告げたのだと分かった
その、左右に振っている尾が何よりの証拠、本当は嬉しいのだと知る
テーブルに置いた皿を持ち、床へと布を敷いたその上へと乗せ直す
『 いただきます!久々に食う~ 』
本当に聖獣なのだろうか、そう不思議に思いながら食べてる様子を見ていた
完食した皿を片付け、彼が部屋から出て庭で遊んでる様子を横目に見ていれば
ソファーに座り本を読んでいた主は一人言の様に告げた
「 聖獣は味覚がないらしい 」
「( 味覚がない……? )」
「 味も分からぬ物を食べて喜んでいたのなら、それはきっと料理を" 作って貰った "ことが嬉しかったのだろう……。可愛い奴だ 」
味覚も無いのに料理を食べて" また処分してやるよ "とそう言い残した彼の意味を理解した
世話焼きの私が作った事が嬉しかったのだろう
其を聞いて滅多に動くことの無い胸は僅かに締め付けられた
紅茶を飲む時も、味覚がないのにその匂いだけを楽しむ様子
自然と世話焼きたくなるのは必然的で、触れてみたいと思ったときには、自分でも抑えがきかなくなっていた
『 ん? 』
窓を見ていたその人の姿を得た、綺麗な横顔と私より僅かに引い背格好をした背中へと腕を伸ばし抱き締める
「 冷えますよ……。あぁ、厚い毛皮があるので平気ですよね 」
言い訳が子供染みて、もう少し上手く言えたら良かったのに
彼は笑みを溢し私の頭に触れ頬へと軽く口付けを落とした
獣としてごく普通の挨拶程度だろう、けれど余り経験の無い私からすれば、十分な程に心は揺さぶられる
『 バトラーが寒いんだろ、いいぜ、俺って暖かいだろ 』
「 そうですね、とても…… 」
暖かいですよ、貴方が来てから私の心は熱くて苦しい程に愛しくて仕方無い
妖精が聖獣に想いを向けるなど、きっと有りはしないのだから今だけこの感情に蓋をして傍にいて、世話を焼くことを許して欲しい
「 あたたかい…… 」
心は言葉よりも冷えていた
帰ってこないなんて事がないよう、どうか約束して下さい
また、この家で騒がしい声と音を聞かせて欲しい
「 ナイト、必ず帰ってきてください 」
『 おん!帰ってくる 』
それが屋敷僕の唯一の願いであり想い
フリーレン様が連れて帰ったそこまで大きくもない、犬のような狼
黒っぽい毛並みは光具合で灰色に見え薄汚い中途半端な毛色をしては、その瞳は似合わないほど澄んで青い眼をしていた
『 グルルル…… 』
第一印象、部屋で暴れまわってたのは彼の方なのに、何故か意味なく私の方が唸られた事でとても嫌いになった
こんな奴が新しい同居犬となると考えると今から頭が痛む
心の広く優しいフリーレン様が連れてきた犬、少しは同じ様に性格をしてるかと思えば全く正反対に見えるほど騒がしい
『 わー!!廊下滑る~!!あっ、あっちはなんの部屋だろ? 』
走り回ってはカーペットをもみくしゃにし、部屋を入ったり出たり繰り返しては楽しそうに他の事に興味を向ける
もう少し上品に過ごせなのかと思って居れば急に飽きたかのように眠り続ける
「( ……無防備ですね )」
傍でフリーレン様が本を読んでるから気にしないのか、身体を横たわらせ仰向けにさせ、腕を伸ばさせても起きる様子は無い
肉球は地面をよく走るのか硬くざらついている
「( あ、ダニ…… )」
直接、カーペットで寝てる身体には外から連れてはいったのか
皮膚ではなく毛にくっついてる程度のダニを見掛け、丁度良いと小瓶とピンセットを持ってきてダニを探っていく
「( 山ダニでしょうか。野生動物にくっついてるものだ…… )」
ピンセットで摘まんだダニを、薬の入った小瓶にいれどんなダニか見れば眉間にシワを寄せる
聖獣にしろ、その毛並みは獣のもの
ダニの良い住みかになってると知れば、次にハーブで作ったスプレーを持ってくる
「( 此で少しは寄り付かないでしょうね )」
腹側にスプレーを吹きかけ、身体を動かし背中側もしてから一旦その場に離れて様子を見る
『 ふぁ~、ん?この身体……良い匂いする!ふあっ!?尻尾!美味しそう!! 』
「( ハーブが御好きなんですね )」
余り獣は好まないと思っていたが、彼は好きなようで起き上がりその場で自分の尻尾を追い掛け回し、回転した後にふらつきながら呟く
『 なんで俺、無意識に尻尾追いかけてんだろ……。こわっ、本能…… 』
「( 変な犬だ )」
目について気になったから追いかけたのだろう
其も忘れて目を回す様子は呆れるしかない
「 バトラー、彼は聖獣だから料理は食べないよ? 」
「( あ、そうでした…… )」
此所に来て直ぐにフリーレン様とは別に共に出した犬用の料理、
肉を柔らかく煮込み茹でた野菜や焼いた玉子など乗せたステーキのようなそれを、置いた音でも聞こえたのだろう
彼は料理を食べてる手を一旦止め告げた
そうでした、聖獣だから料理は食べないのだと
少しばかり肩を落とす私は片付けようとすれば、ひょこりとテーブルへと顔を覗かせた
『 なに、俺の?食べていいの? 』
「 あ、はい……勿体ので処分してください。明日からは作りませんので 」
本当は嬉しいのに、きつく言う私の言葉
もっと別の言い方でもあっただろうと自身に呆れ、視線を落とせば彼の獣の尾は気にしてないように左右へと振っていた
『 間違えて作ったなら仕方無い。食べてやる 』
ふっと笑ったフリーレン様の表情を見れば、彼もまた態と告げたのだと分かった
その、左右に振っている尾が何よりの証拠、本当は嬉しいのだと知る
テーブルに置いた皿を持ち、床へと布を敷いたその上へと乗せ直す
『 いただきます!久々に食う~ 』
本当に聖獣なのだろうか、そう不思議に思いながら食べてる様子を見ていた
完食した皿を片付け、彼が部屋から出て庭で遊んでる様子を横目に見ていれば
ソファーに座り本を読んでいた主は一人言の様に告げた
「 聖獣は味覚がないらしい 」
「( 味覚がない……? )」
「 味も分からぬ物を食べて喜んでいたのなら、それはきっと料理を" 作って貰った "ことが嬉しかったのだろう……。可愛い奴だ 」
味覚も無いのに料理を食べて" また処分してやるよ "とそう言い残した彼の意味を理解した
世話焼きの私が作った事が嬉しかったのだろう
其を聞いて滅多に動くことの無い胸は僅かに締め付けられた
紅茶を飲む時も、味覚がないのにその匂いだけを楽しむ様子
自然と世話焼きたくなるのは必然的で、触れてみたいと思ったときには、自分でも抑えがきかなくなっていた
『 ん? 』
窓を見ていたその人の姿を得た、綺麗な横顔と私より僅かに引い背格好をした背中へと腕を伸ばし抱き締める
「 冷えますよ……。あぁ、厚い毛皮があるので平気ですよね 」
言い訳が子供染みて、もう少し上手く言えたら良かったのに
彼は笑みを溢し私の頭に触れ頬へと軽く口付けを落とした
獣としてごく普通の挨拶程度だろう、けれど余り経験の無い私からすれば、十分な程に心は揺さぶられる
『 バトラーが寒いんだろ、いいぜ、俺って暖かいだろ 』
「 そうですね、とても…… 」
暖かいですよ、貴方が来てから私の心は熱くて苦しい程に愛しくて仕方無い
妖精が聖獣に想いを向けるなど、きっと有りはしないのだから今だけこの感情に蓋をして傍にいて、世話を焼くことを許して欲しい
「 あたたかい…… 」
心は言葉よりも冷えていた
帰ってこないなんて事がないよう、どうか約束して下さい
また、この家で騒がしい声と音を聞かせて欲しい
「 ナイト、必ず帰ってきてください 」
『 おん!帰ってくる 』
それが屋敷僕の唯一の願いであり想い
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