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一章 聖獣への道のり編
04
しおりを挟むファルクが話を終えた後に、幾分かの沈黙が流れ
少女もまたゆっくりと言葉を繋いだ
彼女自身がこの国の第一王女だと言うこと、そして父である王の暴走を止めたいと願う強い意思を受け取った
正直、王の娘だと言った瞬間にファルクの表情が曇ったのを見ると、少なからず敵意はあったのだろう
彼の故郷や村を焼き払った父親の娘だ、八つ当たりしたい気持ちも分からなく無いが、
彼女が" 何も知らなかった "とその一言を最後に告げてから、ファルクは外へと出ていった
フィンレーに相談したい気持ちは有るのだが、先に彼が気になり
宿の近くにある木陰の傍で立っている、隣へと近付き顔を見上げるように覗いた
『 ………! 』
鼻先に落ちる滴に気付き、彼の表情を見ては驚きより、締め付けられる胸の苦しさに息が詰まりそうになった
「 何も知らなかった……。其で全て解決すると思ってるって……。多くの犠牲が出てるのに…… 」
震える声は怒りと悲しみを噛み締め
木に片手を当てた彼は、そのまま膝を曲げ座り込み拳を握り締める
「 俺は、何で此処に来たんだろ……。ねぇ、何で……外の世界を知らない少女が止めようとしてるの……。そんなの、無理でしょ… 」
何も知らなかった、其は家族を失った彼にとっては一番心に刺さる言葉だ
知らないのなら何故、今更王を止めようとしてるのか
その理由が謎過ぎる
戦場を見ても無く焼け焦げた大地も、皆全て彼女は何も見てはいない
只、王が次から次へと戦争を吹っ掛けている話だけを聞いたのだろう
現状を見てない彼女には思いが弱く、そして矛盾してる
『 ファルク…… 』
涙を流すその頬へと涙を掬うように舐めれば、片目を閉じた彼は視線を此方へと向け、不器用に笑っては首へと腕を回し抱き締めるなり
首回りの飾り毛へと顔を埋めた
「 ありがとう……。俺、決めたよ 」
『 そうか……。御前が決めたならどんなことでも、俺は最後まで傍にいる 』
「 ん、リリアと共に王を止めるよ…… 」
例え味方になるのなら、敵側の者でも関係無い
少なからず" 味方 "が多ければ其だけで十分だ
上級精霊を宿した、王に勝てるだけの戦力を集めるにはまずやることがある
『 だが時間がない……。キツいかも知れないが、役に立つ位の魔法を覚えたい 』
「 俺達の魔法だね! 」
『 あぁ、リンクを上手くすれば魔力の消費も抑えられる…… 』
永く眠っていたところで、この時間が早い世界はいつの間にか夜が訪れる
月明かりが見え初め、空を覆っていた雲は晴れて行き
人には冷たい程の冷気は辺りを包み込む
「 ロルフ…? 」
『 その為に、手っ取り早く深く繋がりたい 』
「 ッ……ンゥ! 」
白い吐息を吐き、白銀の髪は揺れ
人の肉体を得れば彼は目を見開き驚く様子を見せる
抵抗されるのは分かっている為に、少しばかり強引に頬に触れ耳へと指で触れ支えては唇を重ねる
犬歯の覗く唇を開き、彼の閉じる唇へと舌を滑り入れ、探るように口付ければ
逃げるように動く舌を見つけ絡ませて甘く擦り合わせれば、コートを掴む手に力が入るのが分かる
「 んっ、はぁっ、ぁ、ンンッ 」
僅かな隙間から甘い息を吐くファルクに
やり方を考えては自身の持つ魔力を注ぎ入れ、
そして彼の魔力と共に交換するように時間を掛けズレがあったフィンレーから貰った魔力すら自分達のものへと変わる
「 はぁっ……身体が……焼けるように、熱い…… 」
『 俺は氷の属性を持つ……その属性を知ればどんな大気も人肌も熱く感じるんだ 』
唇を離し、舌舐め擦りをすれば背中へと腕を回しキツく抱き締める
俺の肩へと顎を乗せ、掴んでいた手を程いたファルクはゆっくりと背中側の服を掴み息を荒くする
「 ロルフは、こんな暑がりなんだ……? 」
『 ん、俺自身はそうでもない。慣れたのかも知れんが…… 』
「 そっか、また一つ君を知れた 」
聖霊召喚をしたばかりは、互いに共有してない
だからこそ、手っ取り早く魔力を交ざり合わせた方が早い
それはとても人間に対する身体の変化があり負担になるから嫌なのだが、
ファルクの様子を見ると何とか耐えてくれたようで安心する
『 これで、ファルクも氷魔法が使えるようになるだろ…。頑張ってくれ 』
「 ん、分かった 」
ルイスが教えてくれた事であり、氷魔法も最初はあの人が俺に冷気のやり方を学ばせてくれた
今度は、魔法について無知なファルクへと教えるのが俺の役目だ
髪へと頬を擦り寄せる俺に、ファルクは小さな声で呟いた
「 あの、ロルフ…… 」
『 なんだ? 』
「 キスされて、抱き締められてたら理性が揺らぐからさ……。もういいなら、離れて貰っていいか? 」
『 !!あ、すまない。もう大丈夫だ 』
俺は触れてるだけで嬉しかったから満足してたのだが、鼻につく雄の匂いとファルクの表情を見れば腰に来るものを感じ視線を外した
「 ふっ、大人の姿でも可愛いじゃん 」
『 !!そうかっ? 』
軽く笑ったファルクは俺の頭に手を置き、くしゃりと撫で回せばその手へと寄っていた
まだ王は動く様子はない為に、今の内なら身体を休ませて魔力の回復へと専念した
宿にある部屋に戻れば、顔の赤いリリアと平然と装っているフィンレーが居たことに俺達と同じ事をしたのだろうな
「 ロルフ、話がある 」
『 へっ? 』
「 ま、待って!今置いていかれると不味いんだけど…… 」
リリアの様子を見てか、ファルクもまた硬直した後に、フィンレーに手を引かれ部屋を出ようとしたら、彼に止められた
なにかを察した、フィンレーは態とらしく俺の腰を引き抱き寄せては髪へと口付けを落とす
「 こっちはこっちで楽しむ。小僧は" 箱入り娘 "に殺されないようにな 」
「 なっ!?ちょっ、フィンレーくん!どういうこと!? 」
「 優しくしてやれよ、初なんだから 」
フィンレーの言葉に分かりやすく顔を真っ赤に染めた人間二人の様子を見れば
彼は鼻で笑ってから俺を外に連れていく
なんと言うか、あの箱入り娘、大丈夫かと心配になった
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