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一章 聖獣への道のり編
08
しおりを挟む少し広い、廃墟の中
其処に布を敷き、包帯を巻き横たわるハンターウルフの姿があった
ルイスを襲ったハンターウルフとは違って、小さくて毛並みの色もまた、光を失っている
これが俺の知るハンターウルフなのか、そう疑問に思うぐらいに毛色が金色なだけで狼に見える
金狼の横には、片足を立て座り、その頭を撫でる頭の姿がある
俺はゆっくりと近付きその様子を見れば、彼女は深く呼吸を繰り返す金狼へと悲し気な視線を向ける
「 御前が、こうして横たわってるのを久々に見る 」
確かに金狼は強く、俺も苦戦した
だが本来の彼等を知ってる俺にとっては、シロとじゃれ合うより造作もなかった
殺すことは無く手加減したが、包帯の血痕を見ればこの金狼には怪我が酷かったのだろう
狼の毛は、多少の牙を通すことはなく、皮膚も分厚く筋肉に覆われてるのだが
この金狼はそれが少なかった
こんなものなのかと疑問になる俺に、彼女は視線を入り口へと向けた
「 頭、ファルク……はどうしますか? 」
何処かファルクに似た、面影のある赤髪の青年は、大きな銀狼を引き連れやって来た
彼の言葉に、彼女は視線を落とし、金狼へと向ければ
男は、その前へと座った
銀狼もまた金狼を心配するように、匂いを嗅ぎ、顔を舐めていれば金狼はそれに反応し目を覚ました
その面影は柔らかい女性っぽい感じだが、レナって名前からして雌なんだろう
尾を揺らす様子を見て元気そうなことに安堵する俺は、彼等の話しに耳を向ける
「 この盗賊団で魔法は厳禁だ…… 」
「 彼奴はウルフがいないことをずっと気にしていた。狼を扱えない者はまともに狩も出来ない 」
「 出来ないなら残ればいい。だがファルクは何度飛び出して、仲間が怪我をしたと思ってるんだ!忘れたとは言わせ無いぞ!! 」
彼女の言葉に、青年は奥歯を噛み締め僅かに後ろへと下がればその頭を下げた
地面に当てる程に土下座すれば言葉を続ける
「 それでも……この盗賊団に置いてやって下さい!!俺の唯一の弟なんです! 」
「 そんなもんは知っている。……だから考えているんだろ 」
『( あー、なるほど。ファルクと似てるのはそう言うことか )』
雰囲気が似ていた事に、納得し彼が必死に頼み込んできた理由もまたファルクの為だろ
家族がいないと言ってたが、唯一残った兄弟はいるのか
ルイスの娘がその後に、どうなったか分からないが
兄弟とか家族とか、この身体になって余り深くは考えたことも無いのが事実
ルイスもまた、兄弟の話をしなかった
シロに" 父親みたい "と言ったが父親がどうなのか俺には分からないじゃないか
「 では、怒らないのか!? 」
「 怒るに決まってるだろ!! 」
「 あ、やっぱりか…… 」
父親、兄、俺には無縁だなと見ていれば
頭は拳を握り締め、その身体には見えないのにメラメラと炎が燃えてるように見えた
「 私のルナを傷付けたあの聖獣、許すわけがない!!謝れ、謝りに来るまで許せん!! 」
「 聖獣は召喚師以外は言うことを聞かないと言うからな…… 」
『( まさにその通り )』
よくご存知じゃないか
コクコクと頷く俺は言うことを聞く気はなかった
彼等は話を終え
青年が立ち去ると同時に、俺もまた彼の後を追った
「 聖獣、其処にいるのだろ? 」
『 !!分かるのか? 』
テントから離れ、廃墟を歩いていれば青年は立ち止まり言葉を掛けた
俺は自分の姿が見えてるのか疑問になったが、透明化は完璧なもの
なのに何故だと疑問になり、姿を見せれば彼は振り返り笑みを溢す
「 弟に魔力があるなら、兄の俺も多少合っても可笑しくはないだろ? 」
『 あぁ、そう言うことか……質の似てる魔力なら尚更、見えても可笑しくないな 』
彼等は兄弟だから、可笑しくは無い話しだと分ければ
彼は近くに腰を下ろし横に銀狼を座らせては俺の方へと視線を向ける
こうやって見ればファルクを成長させたように見えるな
「 俺は、リカルド。ファルクの兄であり、皆の兄だ。そして、相棒のロボだ 」
「 ガウッ( 宜しくな、新入り )」
『 宜しく……歓迎されてはないが 』
「 そうな。否定はしない 」
ファルクをもう少し落ち着きが有るなら、彼のような雰囲気だろうな
そう思いながらゆっくりと近付けば、彼は手を伸ばし頬へと触れた
温かさに目を細めれば、その手は頭を撫でてくる
人は嫌いだし触られるのはオエッと吐き気がするのだが、良く似た魔力だから平気そうだ
この手は、シロのような優しさがある
「 御前は人が好きなウルフのようだな 」
『 ん?何故だ 』
「 野生のシルバーウルフは此所に居る奴等より狂暴だからさ 」
野生、と言うことはやっぱりコイツ等とは違うのだろう
目線を彼に向ければ、リカルドはロボへと触れその理由を話してくれた
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