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一章 聖獣への道のり編

5話 任務は命懸けらしい

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主になって二人目のルイス

彼は孤児院を首席で卒業した
苦戦していた数学も俺の教え甲斐があってかは知らないが、テスト当日には気にならなかったそう

そして、彼はシリウスの理事長からのコネかは知らないが
卒業と同時に王族に仕える近衛隊へと所属した
其までに近衛希望者トーナメントがあったのだが、それもまた一位で通過してる

" 弱くても、関係無い。強くなるんだからさ "

なんて、相変わらず胡散臭い顔で爽やかに笑った表情は忘れない
きっと王の元でコキ使わせる気満々なんだろう

理事長のコネがあったにしろ、無かったにしろ
今では近衛になっるのが当たり前のほどにルイスは力をつけていた

因みに、その理事長は最後まで気持ち悪いぐらいとても好い人だった
どう言うことだよ……胡散臭い顔のまま悪人っぽくなってくれれば俺は噛み付けたのに……

「 この度に新しく近衛隊に所属した若い者よ。今までの訓練は甘いものだと思え。王の為にその命を捧げよ 」

「「 はっ!! 」」

運命は時に残酷で辛いものだと思った

ノアは王子に命令された兵士によって殺されたのに
その魂は、自ら命令される兵士へとなったのだから
もし罪の無い子供を命令の為に、ルイスが殺すことになるのなら
俺はきっと、近衛にしたことを後悔するだろう

「 選抜トーナメントで優勝したの聞いたぜ!おめでとう!! 」

「 ありがとうございます 」

普通の犬ほどには成長した俺は、酒場に来たルイスの足元で横たわり
教師ではなく上司となった騎士隊長であるアンドリューとルイスの声を聞いていた

彼が近衛になったら是非、一番最初に御祝いしたいのだと言ってたからこそ
こうして会うのは分からなくともないが、ルイスまだ十七歳
酒を進めたら怒ってやろうと思っていた

「 嬉しいなー。自分の教え子が近衛に来るなんて。誇らしいぜ! 」

「 そうですか?これもアンドリューさんがずっと鍛練を付き合ってくれたおかげです 」

「 ははっ!此れからは俺ぐらい強いやつにバシバシ鍛えられるから頑張れよ! 」

「 はいっ!! 」 

上司と部下、いい関係じゃ無いかって思いながら俺は少しだけ休もうと思って目を閉じる
寝ることで魔力の消費を押さえてるのはルイスと契約してから知った
それもあり、何もないときは起きてるよりずっと良いだろうと眠ることにしてる

「 んじゃ、景気よく呑め!! 」

「 えっ、俺はまだ未成年ですし 」

この世界では十八歳から大人と認められ酒を呑めるようになるらしいが、ルイスは十七歳になったばかり
後、一年はあるダメだと飛び起きた俺はアンドリューの服へと噛み付いた

「 いっ!リアン!!何すんだ!? 」

『 グルルル……( ダメに決まってんだろ。部下に酒を進めるなんてダメな上司だな! )』

「 御前、過保護なの増したよな…… 」

唸った俺に言葉は通じる、アンドリューは眉を寄せ
ジトッと見詰めてきてからわざとらしく深く溜め息を吐いた

「 分かった分かった。過保護なリアンに免じて、酒は呑むな。好きなだけ食え。奢ってやる 」

「 えーと、ありがとうございます? 」

其れならいいと、頷いた俺に
アンドリューは店員を呼び、ルイスが食べたいものを食べれるだけ注文した
彼が奢るって言ってたのだが、食べるより酒を飲んでるのを見れば、只呑みたくてルイスを誘ったようにも見える

「 ひっく…… 」

「 ちょっ、アンドリューさん…… 」

『 ルイス起こさなくていい。もう連れて帰る 』

「 リアン…… 」

月が出れば人の姿になるのは変わること無く
ルイスが起こそうとするのを止めさせれば、
アンドリューの財布を抜き取り、店員に金を払ってから彼の腕を掴む

「 ありがとう、運んでくれるか? 」

『 あぁ、御前以外を背中に乗せるのは気に入らないが…… 』

自らの肩へと乗せそのままアンドリューをおんぶすれば、嫌気がするような感覚を堪えてから酒場を出た

「 結局、俺が近衛になるの止めなかったな。聖獣は争いを嫌うと聞いたんだが? 」 

『 夢は止めたくはない。俺は御前の傍にいるだけだ 』

夢は否定はしない、だからこそ聖獣として隣に居ることに意味があると思ってる

「 そうか。なら御前に幻滅されないようしないとな 」

『 幻滅しない自信はあるがな? 』

顔を向けた俺に、ルイスは少し目を丸くしてから視線をアンドリューに向けて誤魔化すように笑った

「 ところで、この人の部屋ってどこだ? 」 

『 馬小屋にでも落としとけばいいだろ 』

「 そっか、そうだな! 」

本当にいいのかはわからないが、部屋を知ってないから知らない
酒場から城にある、羽毛馬の馬小屋迄運んだだけ有り難いと思って欲しい
なんせ、主以外の者を背中に乗せるのがこんなにも気に入らないなんて思わなかったからだ

この後、ちゃんと馬小屋に放置した

『 酒くせぇ…… 』

「 ごめんな?運ばせた 」

『 別にいい…くはない、ちょっと水浴びしてくる。先に寝ててくれ 』

ルイスに与えられた近衛兵の個室の部屋に戻ってきたのだが
身体から匂う、アンドリューの体臭と酒の匂いに鼻が曲がりそうだと思い
もう一度、部屋を出ようとすれば扉を閉められた

『 ん? 』 

目の前に立つ、ルイスに傾げれば彼は目線を反らした後に、何を思ったのか俺の身体へと抱き着いてきた

『 ルイス?なんだ、甘えか? 』

スキンシップなど自分から撫でることしかしなかったルイスに、少し嬉しくなり髪に手を当て
尾を揺らしていれば、彼は胸元に頭を擦り当ててから、俺の方を見上げた

「 ……俺の匂いつければいいんじゃね? 」

『 ……ん? 』

待てよ、何かが可笑しいぞ
臭くなるからと引き離す前に、俺の身体の血の気は引いていた

ルイスくん、君……いつからそっち系に目覚めました??


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