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一章 聖獣への道のり編
09
しおりを挟む晩御飯を食べ、今日は風呂に入るらしく
孤児院の中にある大浴場へとルイスはやって来た
まるで銭湯みたいな造りだった事に
少しだけ俺も風呂が恋しくなり着いていくことにする
「 いてて…… 」
『( 身体中、傷だらけだな )』
蹴り飛ばされた以外の古傷は、きっと魔法の練習やら色々してる時についた物のように見える
先に湯をかけ、身体を洗うルイスを浅い階段のある部分だけ入って浸かる俺は見ていた
頭を洗い、痛がりながらも身体を洗ってから広い湯船へと入ってきたルイスは深く溜め息を吐く
「 騎士ってあんな強いんだな……。俺も早く、強くなりてぇ…… 」
『( 俺も同じだ… )』
早く強くなりたいと、早く成長したいと思うのは俺もまた同じ
ルイスが近衛を目指してるのは、きっと俺がまた強くなろうとしてるのと同じ
子犬だなんて言われたくないことに、俺も有ることを決めた
風呂から上がり、ルイスは部屋に戻り
図書館から借りた本を夜遅くまで見てから眠りについた
その寝顔を見て、俺は月明かりへと視線を向け部屋を出た
「 ふっ、聖獣が夜這いか? 」
『 何いってんだ…… 』
夜這いにしては外にいるのは可笑しいだろ
アンドリューは、あの鎧の姿ではなく
簡単に着れる程度のVネックのシャツにズボンを履き、腰に剣を支えるベルトを着けてる程度
俺の方を向いた彼は爽やかに笑っては、檸檬色の瞳は月のように光る
「 ははっ。子犬かと思ってたが大人の姿なんだな。聖獣の人型は其なりにレベルが高いと聞くが? 」
『 ちょっと借りてるだけだ。俺はまだ弱い 』
「 そうだろうな。魔力が少ない 」
『 ……分かってんなら、分かるだろ 』
ムスッとする俺は、此処で感情的になるのは意味がないと一つ心の中で落ち着く為に息を吐き
向き合った
敢えて言葉を待つアンドリューに、真剣に告げる
『 俺に剣術を教えてくれ。近衛を目指すルイスの足手まといにはなりたくない 』
「 聖獣が剣術を習う?ははっ。そんなの聞いたこと無いな!! 」
面白いと笑ったアンドリューの言葉は分からなくともない
だから、シロは俺に戦い方を教えなかったのだろう
本能的に獣なら戦えると、でもこの身体はいつか使えるようになる
その為に、剣術を覚えていても悪くないと思ったんだ
『 アンドリュー、御前にしか頼めない。此処にいる間だけでもいい 』
「 ははっ。理事長に呼ばれたのはこの為か…… 」
理事長、あの人が呼んだ理由はルイスではなく俺?どれだけ聖獣について知ってるのかは知らないが、折角のチャンスなら流されるままに受け入れよう
「 いいぜ。だが俺の訓練は厳しいぞ。聖獣だからって手加減はしない 」
『 そのぐらいが丁度いい。ルイスより強くなるのが目的だ 』
「 今の御前は、ルイスの足元にも及ばないだろうがな 」
『 追い越してやるさ 』
「 気合いだけは十分だな 」
腰にあった剣を抜いた彼は、片手を其に沿え
魔法を唱えることもなく触れた程度で同じ剣を二本現した
片方を俺へと差し出してくれば、その剣をそっと受け取る
「 ドラゴンの鱗で創った剣だ。ダイヤモンドより硬く、どんな火にも溶けない。コピーだがやる。自分の剣が見付かるまでは十分だろ 」
『 ありがとう…。使わせて貰う 』
俺が握り締めた瞬間に、自らの魔力と重なったのか
剣は光を放ち、全てが氷で凍結するように覆われれば割れた瞬間に蒼く銀色に輝く剣へと変わった
『 わー、すげ…… 』
「 剣が認めたな。属性は氷って感じか 」
『 俺って属性あったのか!? 』
「 あるだろ、聖獣なら。それも知らないとか、御前……本当に聖獣か? 」
属性が無いものと思っていた
強いシロとかは後から得意な属性を手にいれたりしたのかと思ったからこそ
そうやって元々備えてある能力は知るわけ無い
『( 神様のオプションすげ…… )』
感心するように剣を眺めていた俺に、アンドリューは髪を掻き溜め息を付く
「 まぁいいか、彼もまだまだ子供。御前も子供なら丁度いいな……。ほら、夜が明けるまで、実戦で手合わせしてやる 」
『 おう!! 』
剣を振るうことも持つことも初めてな俺
勢いだけあったのは最初だけで、簡単にこの身体は地面へと倒れていた
『 はっ、はぁ……。こんなの、筋肉痛になる…… 』
「 子供のちゃんばらごっこより酷いな 」
地面とか気にする事も無く、俯せで倒れた俺は
頬を当て、汗を流してから荒い呼吸を整えていた
なのにこのアンドリューは息を乱すこと無く困ってる様に見える
『 はぁー……少しは、うまいか? 』
「 全然。全身がふにゃふにゃしてるし、根本的な筋力がない。ルイスを見てるだけじゃなく普段から鍛える必要あるな 」
『 嘘だろ…。俺の、昼寝が……. 』
「( 聖獣ってのんびり屋なのか? )」
明日から昼寝は無しだ、と言われて此処まで落ち込んだのは久々の気がする
走ったりしてるんだが、それじゃ全く意味無いのか
剣の重さになれるより先に、俺の筋肉痛で動けなくなる方が先の気がしてならない
『 もう、魔法覚えるか 』
「 手抜きをしようとするな。言ったろ。根本的な体力が無いと魔法は使えない 」
『 ……先が長そう 』
「 直ぐには強くなれるわけ無いだろ 」
日々の努力が必要だと
脳筋のセリフに心が砕けそうだった
ルイスが亡くなった後に、シロに会って
俺がマッチョボディーに変わったとしても好きになってくれるか不安だな
シロよりマッチョボディーには……ならないな
あの人の鍛えられた身体とシックスパックには勝てそうにないや
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