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一章 聖獣への道のり編

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女の子達は肉体系は真剣じゃないにしろ
男の子達はちゃんばらごっこのように楽しそうに
振って遊んでいるように見える
最初はこんなものでいいのかと、少し離れたところでルイスやら周りの子達を見ていた俺は
ふっと感じた足音に気付き耳を動かす

「 聖獣を見るのは久々だ。御前、名前は? 」

『 まだ名を貰ってないから名乗れない 』

あぁ、やっぱり俺の為に獣人の姿になったんじゃないかって位に、アンドリューは他の生徒に感付かれないよう、辺りを見たまま声をかけてきた
横たわったまま返事をした俺に、彼は檸檬色の瞳を俺へと向けた

「 それで姿が見えないんじゃないか? 」

『 見えない? 』

ん、それと此は別に理由が有るのかと
顔を上げた俺に彼は腰に手を置き、少し考える素振りを見せては言葉を続ける

「 聖獣召喚した時に直ぐに、名を与えるのだが、其を貰ってないなら契約は半分クリアしてる程度だろ。名を貰えばいい 」

『 其をルイスが気付くまで、なにも言うなよ。調べて頑張ってるんだ 』

「 ははっ。言わないさ。君は過保護だな 」

もし名前をつけてなくてルイスから俺が見えないのなら、其を調べ上げてから俺の名を呼べばきっと良いのだろう
その為に、他の誰かの力を借りる気はない
軽く笑ったアンドリューを見てから俺はもう一度、ルイスへと視線を向けた

「 だが、少しは手伝わせてくれ 」

『 なにをだ? 』

余計なことをするなよ!と忠告を入れる前に、アンドリューは生徒の方に歩いていき
手を叩き音を鳴らした

「 はい、そこまで。皆聞いてくれ 」

身体を動かしていた生徒は息を切らして、アンドリューの方へと見れば
彼は爽やかに笑った

「 剣の使い方が慣れたところで、俺と手合わせをしよう。勿論、真剣で斬り付けても怪我する事はないだろ。誰からやろうか? 」

あぁ、よく言う
先輩が後輩へと力の差を教え込むあれな
最近もレベルの差を、なんて言ってた緑色の狼の顔が頭に浮かぶ
彼奴よりは手加減も、この手合わせに意味があるのだろうが
やっぱり俺はそう言うのは好きじゃないと、耳は下がる

誰がやりたい?と生徒を見るも彼等は騎士であるアンドリューを知っている
そして剣に初めて触った子もこの中にはいるだろ
誰がいく?御前行けよ、そんな自分では無い誰かを誘うなかで

考えていたルイスは一歩前へと出た

「 俺が、俺がやるよ! 」

「 ではルイス。手合わせしようか 」

ルイスの性格を知ってたな、この男
自分から来ることを分かってたかの様に、笑みを溢した
爽やかなのに腹黒いアンドリューは敵に回したらきっと、一番厄介な感じに見える

生徒が離れ、二人で向き合うようになれば剣を構えたルイスに彼は獣人の姿から人へと変わった
体格差が無いようにするためか、それとも人間相手に斬り付けられる精神を鍛えるのかはわからないが
人の姿になったところで、ルイスの表情が一瞬歪む

「 制限時間は十五分。それまで休むこと無く切りかかって来い。君の実力、俺に教えてくれ 」

「 はっ、やってやる! 」

「 失敗野郎頑張れよ!! 」

「 直ぐにバテたりすんなよー! 」

応援なのか、してないのかわからないが
生徒の声に気に求めてないルイスは
結構一つの事に集中すると周りの音は聞こえなくなるのだろう
冷や汗を掻いたように、眉を寄せてるも斬り掛かる気はあるよう

その意思に気付き、アンドリューもまた剣を抜いた

「 それじゃ、始め!! 」

合図を出したのは、彼の部下である同じ騎士で
サブ教師としていた
彼は人間らしいがモブだと俺の中で思っておこう

「 はぁぁぁあ!!! 」

「 勢いはいいな! 」

勢い良く斬りかかると言うより突っ込んだルイスに、アンドリューは軽々と避けていく
剣を抜いてるのに必要ない気もする

それだけ彼が圧倒的に強いことは分かる

「 踏み込みが甘いな、もっと力強く 」

「 くっ! 」

剣を振るっては軽々と避けるアンドリューに、ルイスは翻弄されていた
何となくルイスが負けてるのが気に入らない俺は、座っていた体勢から身体を動かし立ち上がる

「 君、聖獣召喚すると魔力が常に食われてるって知ってるか? 」

「 はぁ?なにが 」

「 だから強くならないと、魔力食われて先にバテるぞ 」

「 ガハッ!! 」

『( ルイス!! )』

容赦無く蹴り飛ばしたアンドリューに、ルイスの身体は浮き、地面へと転がった
急いで駆け寄る、俺は起き上がる彼を見上げては爽やかに笑ってるのを睨む

『( やりすぎだろ )』

「( 此のぐらいしないと、ダメだろうに )」

「 はっ……。もっと、強くなります…… 」

蹴飛ばされた事に怒るわけもなく
ルイスは敗けを認めて頭を下げた
丁度時間なのか、騎士は片手を上げる

「 そこまで! 」

時間いっぱいに剣を振るっていたルイスは
呼吸を荒くしてから立ち上がり、剣を鞘に戻しては御辞儀をし、生徒の元に戻る

「 御前すげーな!! 」

「 えっ? 」

「 よくあんなに動けるよ! 」

「 この剣、すげー重いのに!! 」

『( なんだ…仲良くなれたか )』

俺が心配するより子供達は素直で
頑張りを受け入れた子は笑顔を向ける

ルイスもまた、何処か照れたように笑うのを見ては俺の中で少しだけホッとした
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