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一章 聖獣への道のり編

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「 失礼しました 」

話を終えたルイスは先に、帰らせたように理事長室を出ていった
俺は後を追い掛ける気でいたのだが、この理事長は何か話したいようで、彼の腕から逃れることは出来なかった

この触られてオエッて吐きそうになる感覚は、
聖獣が主以外に触れることを嫌うって事になるのだろか
神様とか、シロには平気だが人間相手だとこんなにも全身から拒絶反応が出るなんて……
イケメン理事長なのにちょっと勿体無いって思ったじゃないか

そう考えてる内に女教師は先にこの場から出させ、俺は彼の使う机の上にそっと置かれ、彼もまた椅子に座り互いに向き合うようになる  

「 二人っきりですね、聖獣。 」

「 アタシもいるわ! 」

「 フラム、君もちゃんと入ってますよ 」

「 ならいいわ! 」

それなら三人っきりなんて言うと思うが
その言葉はちょっと可笑しいな
やっぱり彼等のペアを一と数えた分かりやすい

『 ガウッ?( 話があるのか? )』

「 えぇ、話がしたくて 」

えっ、言葉が通じた!?と驚けば
フラムと呼ばれた炎の妖精は自慢気に胸を張った
どうやら彼女が何かしらの力を貸したのだろう

普通なら俺の言葉は獣の鳴き声に聞こえるはずだが、この理事長には分かるようだ

「 私はこの孤児院の理事長を勤めている、シリウス・カータと申します。シリウスと御呼び下さい 」

『( シリウス、な……まだ俺はルイスから名を貰ってないから名乗れないぞ )』

「 それはそれは、では今は聖獣と御呼びします 」

学校ではなく孤児院か
広いから学校と思ったが、ついでに勉強やら色々教えてる感じか
まぁ、話を聞けば分かるかと軽く頷けば彼は空色の青い瞳を向け話してくれた

「 今、この時代は精霊に頼る生活をしています。仕事をするにも全て自然を形得た妖精の力を借りて。此所の孤児院は捨て子を引き取り、一般の子と同じく学校制度をつくり卒業をして就職して貰ってます 」

ノアを初めて見たあの国より、随分と発展してるのだと思う
それと変わって、精霊へと乗り換えた人間達が技術の発展をする為に力を借りてるのも

「 昔は聖獣を召喚出来た者が優れているとされてましたが、今は聖獣が必要ないのです 」

『( 必要ない? )』

「 えぇ、争いのない時代だからです 」

ノアが居た時代が恐らく、戦後の後、四人の勇者が戦った後に残った火花によって人々が力を求めて聖獣召喚をしてた時
あの時は確かにミューやらルナールとか一度に召喚されてたのを俺は見ていた

きっと聖獣がこの人間界に来れるまでの最大数迄は召喚してただろう

だが、俺を召喚出来るものが現れないまま
時代は代わり、ルイスが生きるこの時代になったと……

「 現在は他国との技術発展を競ってるとき。魔法も造り出すものばかり。ですが、矢張いつの時代も争いは途絶えることがない…… 」

『( 今は、何と争ってるんだ? )』 

まぁ、何となく想像は出来るが
敢えて聞けば彼は眉を下げては立ち上がり窓際の方へと見れば、俺は近付く

俺の身体を抱き抱えては、窓から外を眺めるように見せてくれた
広がる町は、ノアのいた街より建物が高くなってるが、その分、壊れてるのが目立つ

「 人間同士の領土争いの時代です。孤児が多いのもまた、そのせいなのです 」

領土争い、いかにも人間がしそうな事だと思った
だから精霊召喚が卒業課題になってるのも身を守る為の何かが必要だったのだろう

「 ルイスは優秀な子です。真面目で、とても正義感が強い。彼の将来の夢は近衛になることです 」

『( 近衛…… )』

「 だからこそ、誰よりも強い精霊を求めていた。本来、聖獣は人を傷付けないと聞きました。ですがどうか、ルイスを守ってくれませんか? 」

悪い理事長だなんて疑ったのを謝りたいぐらいだ
彼は、ルイスの事を……いや、この孤児院にいる子達の将来を考えていたのだ

そして聖獣が人を傷付けることを本能的に嫌っていても、近衛を目指してるルイスに力を貸して欲しいと言ってきた

『( 俺はルイスに頼まれたら力を貸すだけ。でもな、期待しないでくれ )』

「 何故ですか? 」

『( なんせ俺は生まれたての聖獣。魔法も知らないし魔力もないからなっ! )』

腕から飛び降りて床へと降り立っち
自慢気に告げれば、彼はキョトンとした後に小さく吹き出して笑った

「 フフッ。では、未熟なルイスと共に成長したらいいですよ。この孤児には優秀な教育係がいるので後で連絡を入れます 」

『( そうだな、強くなれるならそれでいい。それじゃルイスの元に戻る )』

「 えぇ、引き止めてしまって申し訳ありませんでした。またモフらせて下さいね 」

『 ガウッ!( 気が向いたらな! )』

この世界が今、どんな歴史になったのか少し知れただけで十分だ
それにルイスが近衛を目指すなら、俺は強くなるサポートが出来ればいい

前回のように聖獣を拾ったから、なんて理由で殺されるような感じでは無いのだから安心感はある

ルイスが大人になるまで、俺もまた強くなる方法を探すとするかな

「 フラム、聖獣を召喚した者が現れた事を陛下に連絡を…… 」

「 はぁーい! 」

「 ……弱かろうが、関係無いのでね 」




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