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一章 聖獣への道のり編
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しおりを挟む「 そう焦んな。この世界。神の庭に時間はねぇ…。寝て起きた時には数年は経過してるもんだ 」
『 そうなのか? 』
「 あぁ、時の神はこの世界に干渉出来ねぇからな 」
なんか聖獣になる前にあの神様が" 性を司る神様とは違う "とか言ってたが、他にも神様がいるのか
なんか、人間として生きてたときには余り気に止めなかったし、おみくじなんてものも信用して無かったが
こう改めてごく普通に言われると、信用するしかない
「 人間の世界には聖獣より遥かに多い神達が、其々にちょこっとずつ力を与えて、遊んでるだけで彼等には彼等の世界がある。命を司る神がこの世界を創ってるようにな 」
なんだろうか、神様達が数人で麻雀をしてるイメージが思い浮かんだのだが
人間の世界ってそんな感じで出来ていたのか
ほんの少しだけ、そんな世界で生きていた自分の苦戦した生き方が馬鹿しく思える
『 まぁ、此処に時間が無いのは分かった。じゃ…今の人間界ってどんな世界なんだ? 』
「 さぁ?召喚された時には基本的に戦争真っ最中だから知らねぇな 」
『( 強いからだな…… )』
人間界がどんな世界になってるのか、これは召喚されてからその時の時代を知るしかないのだなと知った
ブランシュに聞いても、コイツを必要とする勇者が現れた時代なんて限られてるのだろ
だからこそさっさとでかくなったのかと分かる
羨ましい限りだと、陸に上がり身体を乾かしたブランシュを見て思う
『 じゃ、俺は綺麗になったし。ブランシュの傍にいても強くなれないと分かったなら自分の寝床を探すとする、世話になっ…… 』
やっと涎まみれも話も色々聞けて満足したと
軽く御辞儀をしてから背を向けて歩き出そうとすれば
尻尾を掴まれた感覚に身体は硬直し、ロボットのようにカクカクも首を後ろへと向ければ
俺の尻尾を咬むブランシュの姿があった
『 いや、ちょっ…… 』
問答無用でズルズルと彼の方に引き摺られ、地面に爪を立てても無意味で、背中に重みを感じれば
ブランシュは片手で押さえ付け、口角を上げた
「 あの洞窟で寝ることを許可してやる。折角の人間からの成り上がりだ、同居人として仲良くしようぜ? 」
『( ぜってぇいや! )』
なんて怖くて言えるわけもなく
この世界で拘束される事を知り青ざめた
折角ウロウロ出来るチャンスが、全くないのなら
早く召喚してくれ!!と願うばかりだった
『 聖獣は腹が減らないのか? 』
「 あたりめぇだろ? 」
諦めた、直ぐに拘束される事を諦めた
諦めてもう、気になることをなんでも聞いてウザい奴と思われて出ていけ!と言われるのを待つことにした
『 なんか食わないと変な気分だ 』
「 時間が経てば気にならなる。いや、この世界に時間はねぇから気になるか……人間界で百年近く食わなかったら忘れるんだが…… 」
川から移動し、歩き回って色んな場所を見て歩きながら
時より他の聖獣に会うと目で追ってしまう
腹が鳴るような事もなく、空腹な気もしないんだがこの使い道の無い歯は疼く
『 ガジガジしたい気分だ……ガジガジ…… 』
「 おい!木を咬むんじゃねぇ!出せ!ぺっしろ、ぺっ!! 」
目についた木を咬んでいれば、振り返ったブランシュに止められ木を咥え、奪われた
放り投げた木が何処かに落ちれば眉間にシワを寄せ睨む
『 はぁ、俺は狼なのに咬めないって 』
「 人間はどうした 」
『 いやー人間捨てたの自覚してるから、獣ライフを楽しもうかなって 』
「 見た目はちんちくりんの小僧がなんか言ってやがる……って!! 」
ちんちくりんとか小僧と言われて、許せるほど
俺は心が広くない
只でさえ成長出来ない壁にぶち当たってるのに、まだこの丸っこいボディーとお友達になる必要があることに苛々して、ブランシュの後ろ足を咬めば彼は驚き、猫のように軽く跳び跳ねて離れた
「 人様を咬むな!! 」
『 ブランシュがちんちくりんって言うからだろ、俺は大人だった。二十三歳だぞ 』
「 ……… 」
『 なにその、えっ?嘘だろ。みたいな目を向けるの止めてくんないか、メンタルがガラスの心には傷つく 』
低く唸られてももう怖くはない
ブランシュが人を食い殺すような奴ではないと知って、俺はちょっと調子に乗ってるだろ
だがその方が彼には丁度いい位に思えたんだ
今でも舐めまわしてた時には思えない、別の表情が分かる
いや、冷めた目を向けられたら誰でも分かるか
「 わりぃ……百歩譲って十代ぐらいに思えてた…… 」
『 子犬止めたい!! 』
本気で、涙が出るかと思った
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