転生したら召喚獣になったらしい

獅月 クロ

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一章 聖獣への道のり編

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もっと強引に連行されるのかと思ったが
ノアが抵抗しないのを見て、この焦げ茶色の軍服を着た兵士達は周りを三人で囲っていても
暴力を起こすことは無かった 

俺もちゃんとノアに抱っこされてるから
逃げようともがくことはない
今はどうなるか見物と言ったところか

『( へぇ……。城だ…… )』

町を見渡すように、俺の目の前にはデカイ城が現れた
町から橋を落とし、そこを歩いて中に入るのだが
よくある厳しい検査は無い様子
塀の上から此方を見ている見張りが敵か味方かを判断してるように思える

平凡で、貴族とか天皇とか会ったことも無い俺が、こうして城の敷地に入るなんて思わなかった

修学旅行も外国なんて行ったこと無いから、
レンガで造られた城は此が初めてだ

何処か観光気分で辺りを見ていれば、入口の前にあるレンガの地面が円上に剥き出しになった場所で
見覚えのある男女がそこにいた

「 おかあさん!?おとうさん!?  」

「 ノア!! 」

「 許可が出るまで動くな 」

あ、これは不味い状態だなってのは察した

観光気分は一気に消え去り
ノアの両親が拘束され、膝を付き、兵士に剣を向けられてる時点で何か罪を犯した罪人みたいな感じになってる

此れから、ほぼ死刑だろうなってなる裁判でも
起こりそうな雰囲気に身体の毛は逆立つ

「 子供、そこに膝をついて座れ 」

「 その獣はこっちで預かる 」

「 っ、ノワール!! 」

さっきまで手を出さなかった兵士が、ノアの脚を蹴りこかさてまで、膝をつかせた事に腹の中で何かが煮えてくる
子供相手じゃないか、そんな必要あるのかと思うが俺が抵抗すればノアもまた引き取ろうとするだろ

猫掴みのように首根っこを掴まれて身体を浮いてる俺は無抵抗のまま
ノアから視線を外した

裏切った訳じゃない、抵抗しない方がいいと察したんだ
許して欲しいと、自然と丸々尾を腹に巻き、耳をぺたりと後ろへと下げれば
ノワールは目線を落とし、静かに言葉を待った

「 その子供が、この僕が画いた魔方陣を使ったらしいね? 」 
 
兵士が突然と敬礼した事に、視線を声のした方を向ければ
王子と言うからもっとマントを着けたような、如何にも王子!!って感じの男が来るのかと思えば、
栗色の髪はマッシュルームヘアーで、兵士達より少し豪華な装飾品がされた程度の軍服

全身、栗色じゃないかと思うが俺も人の事が言えないぐらいいつも黒色の服着てたし 
今も毛並みが黒いからなんとも言えないな

其にしても、顔面が可愛い気のあるのか微妙なのか分からないぐらい、凄く微妙な容姿の事に  
俺の中ではモブ王子と呼ぶことにした

「 はっ、間違いなく 」

「 ほぅ、なら。その獣が"召喚獣"ってことなのか 」

「 はっ、恐らくは! 」

単語しか告げないこの兵士に、もう少しまともな言い方が無いのかと視線を向けるも
彼は片手で敬礼したまま動かない
そろそろ宙ぶらりんの俺は体勢がキツいんだが、と内心思う

『( 召喚獣?なんか、どっかで聞いた気がするが…… )』

ふっと、そんな事を考えるより
モブ王子が言った言葉が気にかかる

召喚獣、あぁ……あの自称神様が言ってたやつだ!それに絵本でも見た聖獣やら聞いたやつかと
記憶の中でバラバラだったピースは埋まっていく

「 召喚獣はもっとこう魔物のと似つかない美しさが有るはずだが、その仔犬はその辺にいる銀狼より薄汚いじゃないか。僕は美しいものを想像していた! 」

「 確かに召喚獣とは思えないほど、弱いですね 」

「 魔力も無いように思える…… 」

モブ王子に薄汚いと言われ、兵士達も其々に見ればなんて言い方なんだ
人様を薄汚いとか弱いとか、そりゃ子犬だから仕方ないが俺は召喚獣なわけがない

『 ガウッ!!( いい加減、離せ!! )』

「 いっ! 」

猫掴みされてて疲れたんだよっ!
離せと暴れて出した爪で上手く引っ掻くことが出来たらしく
手から離れたと同時に地面に落ち、急いでノアの元へと駆け寄った

「 ノワール! 」

『( やっぱり此処が安心するな )』

無抵抗も考えたが、やっぱりノアの傍にいる方が安心する  
なんせこの身体は獣だからな、飼い主の傍がいいのだろ
俺を触ることは無いにしろ嬉しそうなノアの前に立ってモブ王子を見上げた

「 薄汚い子犬風情がペット気取り?随分と懐ついてるじゃないか! 」

「 お言葉ですが、ジョセフ王子。この子は仔犬です。貴方が探してるものではないと思います! 」

笑うモブ王子に、ノアの母親は恐れながらも言葉を告げた
子供を守る母親は強いと言うが、確かに命知らずの発言だが言いたいことは分かる
俺自身が聖獣には思えないからだ

「 黙れ、その判断は僕がする 」

「 っ……! 」

モブ王子の言葉で、兵士は動き更に剣を向けられた母親は口を閉じ
冷や汗をかきながら俺達の方に視線を落とす

「 聖獣はどんな傷も癒えると聞いたことがある。なら此所で、見ればいいだけだろ? 」

「 ノワールを傷付けないで!! 」

動物虐待で訴えてやる!なんて言えそうじゃない雰囲気に、俺は血の毛が引いた

乱暴に胴体を掴まれ、彼等の前に落とされた俺に向けられたのは
兵士が持つ剣だ

手を伸ばすノアを押さえ付ける兵士と
俺に剣を向け、身体を押さえる兵士のどちらも
顔色は良くない

此処までしなくていいと、言うのは此処にいるモブ王子以外は気付いてるのだろ
でも、それは否定できないんだ

絶対的な立場があるからだ 

「 殺せ 」

「 いやぁぁぁああ!!! 」
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