12 / 263
一章 聖獣への道のり編
10
しおりを挟むもっと強引に連行されるのかと思ったが
ノアが抵抗しないのを見て、この焦げ茶色の軍服を着た兵士達は周りを三人で囲っていても
暴力を起こすことは無かった
俺もちゃんとノアに抱っこされてるから
逃げようともがくことはない
今はどうなるか見物と言ったところか
『( へぇ……。城だ…… )』
町を見渡すように、俺の目の前にはデカイ城が現れた
町から橋を落とし、そこを歩いて中に入るのだが
よくある厳しい検査は無い様子
塀の上から此方を見ている見張りが敵か味方かを判断してるように思える
平凡で、貴族とか天皇とか会ったことも無い俺が、こうして城の敷地に入るなんて思わなかった
修学旅行も外国なんて行ったこと無いから、
レンガで造られた城は此が初めてだ
何処か観光気分で辺りを見ていれば、入口の前にあるレンガの地面が円上に剥き出しになった場所で
見覚えのある男女がそこにいた
「 おかあさん!?おとうさん!? 」
「 ノア!! 」
「 許可が出るまで動くな 」
あ、これは不味い状態だなってのは察した
観光気分は一気に消え去り
ノアの両親が拘束され、膝を付き、兵士に剣を向けられてる時点で何か罪を犯した罪人みたいな感じになってる
此れから、ほぼ死刑だろうなってなる裁判でも
起こりそうな雰囲気に身体の毛は逆立つ
「 子供、そこに膝をついて座れ 」
「 その獣はこっちで預かる 」
「 っ、ノワール!! 」
さっきまで手を出さなかった兵士が、ノアの脚を蹴りこかさてまで、膝をつかせた事に腹の中で何かが煮えてくる
子供相手じゃないか、そんな必要あるのかと思うが俺が抵抗すればノアもまた引き取ろうとするだろ
猫掴みのように首根っこを掴まれて身体を浮いてる俺は無抵抗のまま
ノアから視線を外した
裏切った訳じゃない、抵抗しない方がいいと察したんだ
許して欲しいと、自然と丸々尾を腹に巻き、耳をぺたりと後ろへと下げれば
ノワールは目線を落とし、静かに言葉を待った
「 その子供が、この僕が画いた魔方陣を使ったらしいね? 」
兵士が突然と敬礼した事に、視線を声のした方を向ければ
王子と言うからもっとマントを着けたような、如何にも王子!!って感じの男が来るのかと思えば、
栗色の髪はマッシュルームヘアーで、兵士達より少し豪華な装飾品がされた程度の軍服
全身、栗色じゃないかと思うが俺も人の事が言えないぐらいいつも黒色の服着てたし
今も毛並みが黒いからなんとも言えないな
其にしても、顔面が可愛い気のあるのか微妙なのか分からないぐらい、凄く微妙な容姿の事に
俺の中ではモブ王子と呼ぶことにした
「 はっ、間違いなく 」
「 ほぅ、なら。その獣が"召喚獣"ってことなのか 」
「 はっ、恐らくは! 」
単語しか告げないこの兵士に、もう少しまともな言い方が無いのかと視線を向けるも
彼は片手で敬礼したまま動かない
そろそろ宙ぶらりんの俺は体勢がキツいんだが、と内心思う
『( 召喚獣?なんか、どっかで聞いた気がするが…… )』
ふっと、そんな事を考えるより
モブ王子が言った言葉が気にかかる
召喚獣、あぁ……あの自称神様が言ってたやつだ!それに絵本でも見た聖獣やら聞いたやつかと
記憶の中でバラバラだったピースは埋まっていく
「 召喚獣はもっとこう魔物のと似つかない美しさが有るはずだが、その仔犬はその辺にいる銀狼より薄汚いじゃないか。僕は美しいものを想像していた! 」
「 確かに召喚獣とは思えないほど、弱いですね 」
「 魔力も無いように思える…… 」
モブ王子に薄汚いと言われ、兵士達も其々に見ればなんて言い方なんだ
人様を薄汚いとか弱いとか、そりゃ子犬だから仕方ないが俺は召喚獣なわけがない
『 ガウッ!!( いい加減、離せ!! )』
「 いっ! 」
猫掴みされてて疲れたんだよっ!
離せと暴れて出した爪で上手く引っ掻くことが出来たらしく
手から離れたと同時に地面に落ち、急いでノアの元へと駆け寄った
「 ノワール! 」
『( やっぱり此処が安心するな )』
無抵抗も考えたが、やっぱりノアの傍にいる方が安心する
なんせこの身体は獣だからな、飼い主の傍がいいのだろ
俺を触ることは無いにしろ嬉しそうなノアの前に立ってモブ王子を見上げた
「 薄汚い子犬風情がペット気取り?随分と懐ついてるじゃないか! 」
「 お言葉ですが、ジョセフ王子。この子は仔犬です。貴方が探してるものではないと思います! 」
笑うモブ王子に、ノアの母親は恐れながらも言葉を告げた
子供を守る母親は強いと言うが、確かに命知らずの発言だが言いたいことは分かる
俺自身が聖獣には思えないからだ
「 黙れ、その判断は僕がする 」
「 っ……! 」
モブ王子の言葉で、兵士は動き更に剣を向けられた母親は口を閉じ
冷や汗をかきながら俺達の方に視線を落とす
「 聖獣はどんな傷も癒えると聞いたことがある。なら此所で、見ればいいだけだろ? 」
「 ノワールを傷付けないで!! 」
動物虐待で訴えてやる!なんて言えそうじゃない雰囲気に、俺は血の毛が引いた
乱暴に胴体を掴まれ、彼等の前に落とされた俺に向けられたのは
兵士が持つ剣だ
手を伸ばすノアを押さえ付ける兵士と
俺に剣を向け、身体を押さえる兵士のどちらも
顔色は良くない
此処までしなくていいと、言うのは此処にいるモブ王子以外は気付いてるのだろ
でも、それは否定できないんだ
絶対的な立場があるからだ
「 殺せ 」
「 いやぁぁぁああ!!! 」
14
お気に入りに追加
2,195
あなたにおすすめの小説

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる